第71話 学院祭パニック12
夜になると冷えるような風に驚く。
秋も中頃。
秋の日の山の端とほくなるままに、麓の松のかげぞすくなき……とは申せども遠い太陽も今は沈んで。
ミズキは夜の散歩に出掛けた。
温まった体を冷ますため。
ことさら風邪を引く気は無いも、熱気にあてられたの意味で彼女らのアプローチは少年に有益だ。
学院街は夜もお祭り騒ぎ。
大人たちは酒を飲んで笑い合う。
ミズキは未成年なので関知しない。
「良い星空ですね」
ギフトが言った。
本来一人でのつもりだったのだが、
「ギフトも!」
と挙手された。
セロリは寮部屋でお茶を作っている。
どちらかの択一ならばセロリの方に好感は持てるも、そんな批評をくわえてもお互いに虚しくなるだけだろう。
声の大きな奴が勝つは、人間社会なら何処でも通じるらしい。
「何だかな」
とは思うが邪険にも出来ず。
してもいいのだが周りに迷惑がかかるため自重。
「星な」
たしかに晴れ渡った夜空に数えきれない星々。
誰が?
何の目的で?
世界は神が創った。
これは魔術で証明されている。
昼の太陽。
夜の太陰。
月だけでは寂しかったのか?
瞬くような数多の星。
ソレを見やりながらギフトと二人歩く。
「いいのかなぁ」
と思ったところで、
「…………」
ピタリとミズキの足が止まった。
「?」
ギフトが怪訝な顔をする。
「どうかしましたか?」
すっ惚けた表情に取り繕いが存在しないことを把握し、そこから利益換算で恩義をぼったくっていいものかまで考えが及ぶ。
「杞憂なら良いんだが」
そうでないから問題なのだ。
立ちこめる殺気は重圧を覚える。
「刺客か」
ミズキの結論。
正解だ。
「…………」
スッとギフトを背に回す。
「動くなよ」
忠告。
後の待機。
「さて」
思案するような言葉。
「どっちに用だ?」
虚空に問いかける。
現われたのは三人の暗殺者。
「…………」「…………」「…………」
仮面を付けている辺り顔を晒せない事情があるのだろう。
手にはナイフ。
濡れているのは毒か。
黒のバックル付きのスーツ。
そこには暗器が備えられていた。
「会話をする気は?」
「…………」
無いらしい。
「さて」
どうしたものか。
ガシガシと頭を掻く。
反神教か?
正常主義者か?
あるいは怨恨か?
テロリストか?
どれでも納得できそうな出で立ちだった。
典型的な悪役。
「噛ませだな」
ミズキは不敵だった。
敵はある程度作っているが。
「…………」
しばし睨み合う。
結界。
探知。
ミズキが狙いならまだ良い。
がギフトが狙いなら多少ややこしいことになる。
フォローは出来るが、
「面倒事は勘弁だ」
は不敬罪ながら真摯な意見だ。
「…………」
暗殺者三人がスッとナイフを構える。
『臨戦態勢』
ではない。
意識の誘導だ。
狙撃された弓矢を掴んで止める。
毒が塗布してあった。
狙われたのはミズキ。
であれば最悪ギフトは関係ないだろう。
早計かもしれないし、護衛のミズキを殺してから交渉するのかもしれないが、なんにせよこっちを狙ったなら話は出来る。
その一点だけで安堵できるミズキ。
もっとも優しいではなく事なかれ主義なだけだが。




