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第23話 へっぽこなりし治癒魔術04


「そこで、だ」


「断る」


 ガードの言葉を遮って、否定で塗りつぶす。


「まだ何も言ってはいない」


 ガードは不満げだ。


「他者を取り締まれるほど出来の良い人間じゃないんでね」


 皮肉る彼に、


「ミズキはガードになるべきだ」


 ガードは諦めなかった。


「なにゆえ?」


「魔術師の無力化に最も向いている人材だからだ」


 高度な風属性のゼネラライズ魔術……『術式拡散システムディフュージョン』のことを言っているのであろうことは、彼とて察せられた。


「逆効果だろ」


 無論、素直に頷くほど、可愛い性格はしていない。


「何故だ?」


 心底わからないとガード。


「あのなぁ……」


 茶を飲んで、眉間に皺を作る。


 カノンの方は、飄々としていた。


「俺の異名は知ってるだろ?」


「へっぽこ」


「さいだ」


 今更へっぽこ呼ばわりされても、殊更ミズキは意識することはない。


 むしろ安堵さえ覚えるほどだ。


「そのへっぽこがガード? ジョークだろ?」


 皮肉めいたミズキの言に、


「しかし君のアンチマジックの特性は、ガードにこそ相応しかろう?」


 説得を続けるガード。


「恨まれるのには慣れてないんだ」


 まっこと平然と、自然体で欺瞞を口にする。


 こういうことにかけて、ミズキの右に出る者はそういない。


「ましてへっぽこに取り締まられることになる魔術師の気持ちを考えろよ。納得できるわけないだろう?」


 正論だ。


 同時に無用の心配でもある。


「大丈夫だ」


 ガードは言った。


「そのような幼稚な反論に聞く耳をガードは持っていない」


「組織単位で話すな」


 茶を飲む。


「俺個人が、正当であれ違法であれ、恨まれる可能性を考えろ」


 ほ、と吐息をついた。


 湯呑を置く。


「ガードにはならんと?」


「さっきからそう言っている」


「ふぅむ」


 ガードは、顎に手を置いて考え込む。


 ミズキは、


「知ったこっちゃない」


 と茶を飲む。


 カノンは、


「何だかなぁ」


 表情で、そんな論評をしていた。


「ではせめてガードの訓練に付き合わないか?」


 妥協案を示したガードに、


「面倒くさい」


 けんもほろろ。


「別途報酬も出そう」


「…………」


 沈黙する。


「ちなみにいくらだ?」


「――――」


 ガードの示した金額は、学生には魅力的なものだった。


「訓練に付き合うだけなら、逆恨みの買いようもないだろう?」


「それは……そうだが……」


 損得に揺れるミズキの判断。


「だいたい訓練って何をするんだ?」


「実戦形式の肉弾戦だな」


「魔術は使わないのか?」


「使わない」


「実戦形式なのにか?」


「ガードの神髄は、魔術を使わず魔術師を取り締まることにあるからだ」


「……納得」


 彼は嘆息する。


「で、どうだろう?」


「金が貰えるならバイトくらいはしてもいいが」


「うむ。では契約は成立だ」


 ガードは、重々しく頷いた。


「なんだかなぁ……」


 彼自身は、状況に流されていることを自覚していた。


「まぁいいか」


 疑問をねじ伏せる。


 カノンは、


「甘露甘露」


 茶を飲んでいた。


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