17話 奴隷を買ってからが本番
忘れている方もいらっしゃると思うので、改めてこの世界の通貨の価値を書いておきますね。
鉄貨=100ヘル=100円
銅貨=1,000ヘル=1,000円
銀貨=10,000ヘル=10,000円
金貨=100,000ヘル=100,000円
白金貨=1,000,000ヘル=1,000,000円
通貨は大陸共通です。
〈主従魔法〉...主従関係を結ぶ魔法。部下、専属、奴隷、使役の四種類がある。
部下...仕事における簡単な上下関係を結ぶ。お互いの了承があった上で、信頼値30以上だと結ぶことができる。上司には部下への命令権や強制力はない。
専属...一定期間の絶対的な上下関係を結ぶ。主に国の専属騎士や貴族のメイド・執事に使われる。お互いの了承があった上で、信頼値70以上だと結ぶことができる。結ぶ時に交わした契約には逆らえないが、それ以外には主に部下への命令権や強制力はない。
奴隷...無期限の絶対的な上下関係を結ぶ。信頼値によらず、強制的に結ぶことができる。奴隷には背中に奴隷紋が浮かび上がる。主は奴隷への命令権、強制力があり、主の命令に逆らおうとすると奴隷紋に激痛が走る。
使役...人間と魔物の間の上下関係を結ぶ。信頼値70以上だと結ぶことができる。主には従魔への命令権や強制力はない。
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「奴隷を買いたい」
B級冒険者になって武器を買った日から数日が経ったある日の朝。
いつも通り遅めの時間に起きてご飯を食べた後、
部屋に戻って寛いでいるリクに俺は言った。
「...単刀直入に言ってくれてわかりやすいけど、理由を訊いてもいい?」
理由は単純。
「仲間が欲しいだろ? 邪神を倒すという最終目標がある以上、オーガキングが染色体程度に見えるくらいの大物と戦うこともあると思う。そんな中、二人だけで冒険するのは心許ないでしょ?」
「染色体...?」
リクは俺の超絶わかりやすい喩えがうまく理解できないようだ。
仲間が欲しいというのは本音だが、「やっぱり異世界来たんだから奴隷買わないと始まらないよね!」という理由(?)も一割くらい...いや二割...五...八割くらいある。
異世界転移系のラノベだと、多くの主人公は序盤に奴隷を買っている。その内獣耳少女の割合が多い理由はわからないが。俺は獣耳にあまり魅力を感じない。
とにかくだ、お決まりというかテンプレというか(どっちも意味同じなんですけどね)、そういうのに乗っかって俺も奴隷が欲しい。異世界生活は奴隷を買ってからが本番と言っても過言ではないのだ。
俺はリクに了承してもらえるよう言葉を続ける。
「それにだ。異能には適正があるって話したろ? まだ日の目を見てない異能が六つもある。新しくできた仲間に異能を渡せば無駄がないし戦力にもなる。どうだ?」
死者を操ることができる〈ハデス〉や、火を操ることができる〈ヘパイストス〉など、使わないでとっておくには勿体ない異能はいくつもある。
相手の闘争心を煽る〈アレス〉はどこで使うのか全くわからないが。
「確かに...。でも日本人として奴隷を買うということに躊躇いがあるな...」
「奴隷っていうと戦争の捨て駒にしたり...性奴隷にしたり、みたいな悪いイメージがあるけど、この世界では、主人には奴隷の衣食住を確保する義務があったりと奴隷には優しいみたいだよ?」
罪を犯して奴隷になった場合は性奴隷とかになることが多いらしいけど、奴隷にも最低限の生活は保証されているようだ。
まぁ俺が奴隷を買ったなら、世間が奴隷をどう扱っていようと酷い扱いはしないから関係ないっちゃ関係ないんだけど。
「わかった。仲間を増やす手段として奴隷を選んだだけだもんね」
「まぁそういうことになるかな。早速今から奴隷商に行こうと思ってるんだけど、来るよな?」
「もちろん」
純粋なリクを前に少し心が痛くなる。いや仲間が欲しいっていう理由もちゃんとあるからね? 勘違いすんなよ?
と、とにかく。リクにも了承をもらったし、れっつらごー!
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「欲しい奴隷の条件や予算などを教えて頂ければそれに合った商品をお持ちします。性別や年齢などですね」
奴隷商に来ると、予想に反し小綺麗なお姉さんが接客をしてくれる。
それは「奴隷商」という一つのジャンルが確率されていて、後ろめたい商売ではないということを物語っていた。
「性別、年齢に関わらず冒険者としてある程度戦えそうな者を紹介してほしい」
「畏まりました。少々お待ちください」
エンシー曰く、奴隷は十万ヘルから高くても百万ヘルほどしかしないらしい。人の命の値段としては安い気がするが、そこは異世界。日本と比べ命の価値は低いということだろう。
鑑定が使えるから、選んでもらった者の中から良さそうなのを選ぼうか。
損傷の激しい奴隷を買って、めちゃくちゃ強い回復魔法をかけたら実は美少女で俺に惚れちゃった!?
みたいな展開は期待していない。〈ヘルメス〉があるから欠損を治すくらい出来ると思うが、ハーレム系鈍感主人公みたいなことはしたくないからな。
しばらくすると、店員のお姉さんが十人ほどの奴隷を連れてきた。思ったより綺麗な格好をしていて、十分にご飯も与えているのかやつれている様子もない。
中には12歳くらいに見える子もいるが、このお姉さんは俺が出した「戦えそうな」という条件を聞いていたのだろうか。
端から鑑定していこう。
皆スキルも割と充実していて、年齢も十代後半から二十代前半の者が多い。お姉さんは「戦えそうな」という条件をちゃんと聞いてくれていたようだ。疑ってごめん。
やはり男の方がステータス的に強いな。やはり男の奴隷を買うべきか?
いやしかし、男三人のパーティとは少しばかり悲しいものがある。ハーレムとまでは行かなくともせめて紅の一点くらいは欲しいものだ。
そんな事を考えつつ鑑定していると、先ほど注目した12歳くらいの女の子の番になった。
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ネリー 15歳 女
種族 ドワーフ
職業 奴隷
レベル10
〈スキル〉
身体強化2 斧術3 鍛冶1 物理攻撃耐性2
─魔法─
無魔法1 火魔法2
─ユニーク─
力
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〈力〉...発動すると攻撃力・防御力を任意の倍率に高めることができる。発動した後、 発動していた時間×高めた倍率 分の時間猛烈な怠さに襲われ、動くこともままならない状態になる。
......強い。え、強くね?
年齢は15歳と、俺より一つ下なだけで思っていたより高い。これはドワーフの特徴である「背が低い」ことで幼く見えていたのだろう。
ドワーフといえば背の低い髭を生やしたおっちゃんなイメージがあるが、このネリーって子は肩までの茶髪に華奢な身体でおっちゃんとは程遠い。平たくいうと美少女だった。
華奢と言ってもそこら辺の冒険者より防御力は高いだろうが。これも種族特性だろうか。
早速俺のドワーフのイメージをぶっ壊してくれたネリーちゃんだが、〈斧術〉に〈鍛冶〉、〈火魔法〉と斧を携え鍛冶が得意な地球人のドワーフのイメージに沿ったところもある。
そして注目すべきはユニークスキル、〈力〉だろう。
任意の倍率に高めるというのは、攻撃力2倍、防御力3倍、と自由に上げることができるということだと思う。いや、攻撃力と防御力は同じ倍率じゃないといけないのかな?
例えば攻撃力・防御力を3倍に上げ、その状態を一時間保ったとする。するとスキルを解いたあと三時間は動けなくなると、こんな具合だろう。
動けなくなるという欠点を考慮しても、十分すぎるほど強力なスキルだ。
ネリーのスキルに驚いていると、俺と同じく奴隷を鑑定して回っていたリクがネリーを鑑定して驚きの声を上げる。
「わっ、凄い!」
他の奴隷も中々強かったが、見た目の印象も相まってネリーは一際強く見えるのだ。
俺は驚くリクに相づちを打つ。
「凄いよな。特に最後のユニークスキル」
「〈力〉なんて如何にも強そうなスキルだよね。それで、この子にするの?」
ネリーは自分の前で囁き合っている俺たちに不思議な目を向けるも、その中に期待の色が混じっていることがわかる。
自分に注目してくれている、買ってくれるかもと期待しているのかもしれない。
読者諸君もとっくにわかっていると思うが、勿論買おうと思っている。
鑑定結果も載せてここまでスキルの紹介やドワーフの話をしておいて別の奴隷を買いますなんて言えば、それこそ炎上ものだ。あ、炎上するほど読者いな(ry
さて、作者の心を抉るのはこのくらいにして。
ネリーを連れて店員のお姉さんのところへ行く。
「この子を買いたい」
「え、もう決まったんですか? もう少し奴隷一人ひとりと会話なさってもいいんですよ?」
普通は名前も何も知らない奴隷をいきなり買おうとは思わないよな。でもこのスキル欄を見てしまったのでこの子以外の選択肢はなくなっている。
ちょっと話して性格などを知って買うのでもいいが、別に買ってからでもいいだろう。
「それにしても、この子を選びましたか...」
この子を選んだことが意外だったのか、なぜか驚いた様子のお姉さん。
スキルも充実してるし、戦闘において活躍してくれそうなので俺が言った条件に十分沿っているのだが...。
「この子はドワーフ族ということで、素の力が強いので一応並ばせたのですが、まだ幼いですし戦えるかどうかわかりませんよ?」
「え、ステータスは見てないのか?」
「見ませんよ一々。ステータスボードは高価なんです、奴隷のために買うものではありません」
なるほど。確かにそうかもしれない。こんな将来有望な奴隷が都合よく残っているものかと少し疑問に残っていたのだが、ステータスを見ていないのであれば「少し力が強い」程度の認識で売れ残っていたというのにも納得できる。
とにかく、最初に来た奴隷商でネリーを見付けられたのは運がいいな。流石「幸運値500万」は伊達じゃない。
「どうして彼女をお選びになったのかはわかりませんが、こちら側としても売れ残りの奴隷が売れるのはありがたいことなので良かったです」
「かわいいのに売れ残りってのは残念だな」
「性奴隷としてなら高く売れたのでしょうが、生憎と犯罪奴隷ではないので」
このお姉さん、綺麗な顔してえぐいことを言うな。
確かに需要はあるだろうけど...。
「そ、そうだな。それで、奴隷を買うのは初めてなんだが、手続きみたいなものはあるのか?」
「えぇと、どちら様が奴隷の主人になられるのでしょうか」
そういえば俺とリク、どっちが主人になるというのは特に決めていなかった。
「僕はいいよ。ネリー...ちゃんも僕よりコーキがご主人様になる方が心強いだろうし」
「そうか? ならそうさせてもらうわ」
「決まったようですね。ではこの子に手を触れてください。服越しでも構いませんので」
言われた通りに俺はネリーの肩に手を置く。
お姉さんは俺がネリーに触れたのを確認すると、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
「〈奴隷〉」
お姉さんがそう呟くと、俺達は淡い光に包まれる。〈主従魔法〉の内、奴隷の主従関係を結ぶ魔法だろう。
「これで奴隷の主人がお客様に移りました。代金は20万ヘルになります」
20万...。エンシーから聞いた相場からすると少し安めか。
俺はアイテムボックスから20万ヘルを出してお姉さんに渡す。
「丁度頂きます。ありがとうございました」
人を買ったというのに割とスムーズに終わってしまった。
日本との文化や価値観の違いに今更ながら驚かされる。少しずつ慣れていかなくては。
店を出る。歩きながら自己紹介みたいなものをしようとネリーに向く。
店では一言も話していなかったが、無口なタイプなのだろうか。
《客の前では受け答え以外に口を発さないよう命令されていたようです。売り込みなどをしないようにでしょうか》
なるほど。奴隷が口々に売り込みをしていたら収拾がつかない。そう命令するのは当たり前か。
「さて、無事君を買ったことだし、自己紹介をしたいと思う」
第一印象を良くするために、似合わない笑顔を作りネリーに話しかける。
隣でリクが気味悪がっているが、気にしないでおこう。
「俺はコーキ。16歳だから君の一コ上かな。B級冒険者をやっていて、君にはパーティメンバーとして一緒に戦って欲しいと思ってる。宜しくな、ネリー」
「僕はリク。僕16歳でコーキと一緒に冒険者をしてる。奴隷とか関係なく友達として接してくれたら嬉しい...かな?」
俺に続いてリクも挨拶をする。人付き合いが苦手そうだと思っていたが、心配は無用なようだ。
「私はネリーと言います! ドワーフ族で力が強いので、ご主人様のお役に立てるよう頑張ります! リク様もよろしくお願いします!」
ネリーは緊張気味に、元気良くそう言う。
ご主人様と呼ばれるのは悪い気分じゃないな。
「リク様...。リクって呼び捨ては無理でも、せめてリクさんくらいに負からないかな?」
リクは様付けで呼ばれるのがむず痒いのか、ネリーにそう頼む。
ネリーはご主人様の友達に呼び捨てやさん付けというのに少し違和感があるようだったが、リクが何度も頼むためさん付けで留めるようにしたらしい。
と、ネリーがなにかを言いそうにしているのに気付く。
「訊きたいこととか言いたいことがあるなら遠慮なく言っていいからな?」
そう促すと、ネリーは遠慮がちに口を開く。
「えっと...私も店員も年齢とか名前を言っていないのに、どうして私がネリーって名前で15歳だってわかったんだろうと思ったので...」
確かに。そういえばあのお姉さん名前言ってなかったっけ。
「そうだな...。詳しい話は屋敷に戻ってからするけど、今は俺達には特別な力があるってことだけ言っておくよ」
ネリーには異能とかの事は話そうと思ってる。だって奴隷だから命令すれば漏らすことはないだろうし。
あ、あともう一つ理由あったわ。
《ネリー→コーキ 忠誠値70》
この子何故か俺のことめっちゃ信頼してんのよ。
今、1話ごとの文字数の平均が4500字程度なのですが、この字数では少し多い、もっと長くして欲しいなどのご意見を頂きたいと思っています。
是非、感想欄でご意見をお願いいたします。
あ、それ以外でも感想を頂けると嬉しいです。じゃんじゃんどしどしばんばんお願いしますm(_ _)m




