タイムアウト
辛い時、苦しい時。
期限を区切ってしまう事が無いだろうか?
夕方には。夜には。朝には。明日には。
先の見えない作業に追われた時には強く感じる。
感じない?
デス・ゲーム開始から一週間が過ぎた。
世は全て事もなし。
なし、なし、なし、なし、なし、なし、なし、なし、なしなしなしなしなしなし!!!!!!!!!!
特に根拠もないが、皆が期待していた。
「一週間もすれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何が?何が?何が?
もう言わないであげて!!!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――なにも変わらない。
いやいやいやいや。
まだだ。
まだ、一週間は、過ぎてない。
なぜ一週間?
なぜ一ヶ月じゃない?
なぜ一年じゃない?
なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?
そこツッコまない!!イジメかっこわるい!
朝はそう思っていた。
イジメをカッコ良く思いだした訳じゃない。
「まだ、一週間は、過ぎてない」のほう。
昼には
「まだ零時じゃないから一週間過ぎてない」
と思い直した。
「ゲームとリアルは昼夜が逆だ」
というもっともな指摘をスルー。
そして、やがて、気がつく。
なにひとつかわってない―――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――救われてない、と。
同じ時期の攻略組プレイヤーなら、こういうだろう。
それがどうしたの?
何一つ新たな問題は生じていない。
『救われてない』は『救われない』ではない。
『変化なし』は『悪化した』ではない。
だが、しばしば両者は混同される。
人の意識は正体不明をもっとも恐れる。
訳が分からない『希望』より、明確な『絶望』に飛びつく。
飛びついたくせに、それに人は耐えられない。
明確な指針も、よりどころとなる組織も、支えとなる活動も――――――――――――――――――――――――何もない育成圏プレイヤーには、耐えられない。
「最優先課題は、私たちを育成圏から隔離すること」
とはギルド『GG』のD。
予測する。
問題の発生を。
見通しも計画も指導もない状況で、プレイヤーが耐える無為な時間。
無為とは拷問に等しい。
リミットは近い。
誰かが限界を越えて口火を切る。
誰かがつられる。
評議会の連中が抑える。
抑圧は弾圧に変わる。
暴力は連鎖する。
舞台は安全圏『はじまりの街』。
死なないからこそ、加速する。
勢いがついて街から噴き出す。
一気に大量死。
かろうじて在り続けた規範が崩れ、ギルドが分裂し、個々のプレイヤーが取り残される。
それは育成圏全域に伝播する。
情報として、難民として。
育成圏で生き残るのは教都あたりか。
あそこを主導するのはギルド『聖球寺』のギルドマスター、というより教祖の聖。
自他の生死に頓着しない仏教原理主義者の彼女が主導し、集まっているギルドが世界中の伝統宗教系。
どれもこれも、リアルの宗教法人を基盤にしており、ゲーム内の精神的混乱に影響を受けにくい。
だからこそ、ギルド『GG』の非攻略組新参者訓練拠点を教都にしたのだ。
あそこなら、『はじまりの街』はおろか育成圏全体で再び暴動が始まっても、支えられる。
ギルド『GG』は、Dを含めた全メンバーは、他人に感心がない。
他人がどんな最期を遂げようと。
他人が生きる為にどんな条件があろうと。
自分たちに一時的せよ他人を助けることができようと。
繰り返すが、興味がない。
ニートの悪巧みが無ければ、周囲との関係を最小化して、ギルドホームに閉じこもる予定だったくらいだ。
だから、育成圏が崩壊すれば、それをプレイヤーごと閉じ込める。
ためらいはない。
戦力をさくのは惜しいが、長くはかかるまい。
育成圏のプレイヤーは2万程。
半月もあれば支障がない数になる。
だから、最善をつくす。
転移ゲートは攻略圏/育成圏それぞれ圏内のゲート間でしか移動できない。
攻略圏内のゲートからは同じ攻略圏内のゲートへ。
育成圏もまた同じ。
ゲームが正常に運営されていれば、攻略の進展に伴って変更されていたのかもしれない。
それは今後の課題、今はいい。
仮に越圏ゲートと呼ぼう。
それがある街を抑えれば攻略圏/育成圏を隔離出来る。
育成圏と攻略圏を跨げるゲートは三カ所。
みな『はじまりの街』から五つ目の街にあるゲート。
南北はそれぞれ方面の攻略組精鋭が、西方はギルド『GG』が制圧封鎖する。
作戦はもう出来ている。
安全圏ですら通用する戦闘マニュアルをもつ攻略組。
初心者崩れには阻止できない。
だが、事前占領はコストが高い。
かえって育成圏混乱のトリガーになり、矛先が向きかねない。
始末に余計なリソースをさきたくない。
作戦開始は暴動発生に合わせなくては。
ただ、一週間のリミットから数日はずれる可能性があり、予測だけで作戦を開始するわけにはいかない。
だからこそのC。
この時期に『はじまりの街』にいる最強級プレイヤー。
運営拠点調査に貴重な戦力を、最強クラスのハイレベルプレイヤーをさいた理由。
運営情報の確実な確保と同時に、隔離作戦開始のタイミングを測るのもCの役割。
――――――――――――――――――――――――――――電子音―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
その相手から呼び出し。
Dは作戦開始のメッセージを立ち上げ、送信にそなえ、予定戦力の待機状態を確認し、フリーズした。
『ちっす』
とC。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにしてんの」
映像つきメッセージ。
常と変わらぬ茶髪セミロングにビジュアルオンリーな忍者装束ってか、ニンジャ?NINJA?なCの笑い顔。
めずらしく、マジ笑い。
いや、普段も笑ってますけどアレは??????????
Cの両手は焼きそば、綿あめ、たこ焼き、載りきらない?
『だーいじょうぶっす!』
腕にオッ○イ!こんな使い方が!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まるでお祭りを冷やかしているようだ。
『お祭りっす』
「なにしてんのよ!!!!!!!!!!」
ようだじゃなくて、ガチだった件。
『いやー、育成圏の皆さん、爆発したっすよ?ある意味』
「じょうきょーしらせー!!!!!!!!!!」




