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コミュニケーション・オンライン~コミュ力最強!仮説~  作者: C


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せっぱ

ささやき声。

わたしは凍りつく。

ずっとずっと、わたしが無くなるまで。



フミノ。

あなたは悪くないですよ。

彼らは、わたしの友人です。

彼らは、あなたの他人です。

彼らを死地に招いたのは、わたしです。

彼らを見殺しにしたのも、わたしです。


ね?

フミノは関係無いじゃないですか。

胸を張ってください。


「自分は、悪くない」


それが最初の一歩です。

大丈夫。

すぐにできなくても。

おまかせあれ。

わたしは仲間を見捨てたりしませんよ。

かならず独り立ち出来るようにします。

ねえ、フミノ。



その囁き。

わたしの時間は止まったまま。






今日も今日とて日がかわ・・・らない。

デス・ゲーム開始から5日目の早朝。

相変わらず。

教都の街並み。

すっかりと昇った太陽は実に美しい。

本当にココはゲーム世界かってぐらいである。

相変わらず。



「あれ仏教なのか?」

「間違ってはいません。教義上は」

ファンダメンタリストとでもいうべき聖の『仏法』に賛同する宗派が日本にあるとは思えないが。


セイとニート。

聖とアーネの問答視聴中。

他ネコカフェの面々はゲート手前で止まっていた。


「おでんにキャラメル~♪」

いや、トモは立ち売り中。売り子は他にも集まっており、ギャラリーが買っている。


まだいたネコカフェ。転送ゲートまで一足飛びに届く場所の少し手前。


なぜ、立ち止まっているのか?

セイがヨシとしなかったからである。


聖にバイバイした直後。

なんなくアーネをいなす(いじる)のを見て、安心していた。

面白そうだけとしかたないか・・・とゲートに向かった、のだが。


「だって!」


敵は最大ギルド『黄金の夜明け』。

知らぬもの無き最大手。


「あたしが逃げていいわけねー!!!!」


『黄金の夜明け』が狙っているのはネコカフェだ。


「わ、わたし」だけが狙われていますから皆さんは無関係です。

「「「黙れ」」」


フミノの意見は自動却下。


仕切り直し。

セイが脚を止めた時、ニートは言った。

「三歩前へ」

「なんでだ!」

と食い下がるセイ。

「賢くなりましたね。チッ」

頭をなでなで。

「舌打ちしたろ!!」

セイが納得するはずがない。


「なぜ逃げないんです」

「あいつらが死ぬからだ!」


遅かれ早かれ、戦いになる。

最大ギルド『黄金の夜明け』。

一歩も退かない、っていうか、発想の次元が違う聖が率いる『聖球寺』。

『聖球寺』が拠点を構える教都の面々も巻き込まれる。


「デス・ゲーム中に、PC同士が戦うと思いますか?」

実感が湧かないとはいえ、殺人の危険性がある中で本当に殺るだろうか?

「おっさんが言ったろ」

とぼける、ように見えるニート。


「デス・ゲームは現実と同じだ」

「あー、確かに」


なら、殺人も戦争も当たり前だ。


ネコカフェの問題で聖、聖のギルド『聖球寺』、はては教都が火の粉を被る。

「殺されるなら、ついてないことですね」


ネコカフェの代わりに殺される。

「それで?」


別に我々ネコカフェのせいじゃない。

追いかけて来た『黄金の夜明け』が悪い。

脅迫してきた『黄金の夜明け』が悪い。

従わない相手を殺す『黄金の夜明け』がなにもかも悪い。


「我々の手は北極圏に千年前に降り落ちた新雪の結晶より穢れなく真っ白です」

そんなに綺麗か?千年前。


ともあれ。


ニートの言い分はセイもわかっている。

わかっていいのか疑問はあるが。


「いーわりぃ責めがあるないなんか関係ない」

義務?仁義?ケジメ?いや、セイは言葉がキライだ。


「だから?」

食い下がられたまま、後ずさるニート。


「あたしは残る」


断言。

聖の事はよく知らない。『聖球寺』なんか初耳だ。教都なんか通り道でしかない。


「この騒ぎで殺し殺されるなら」


今初めて縁をもった『黄金の夜明け』に憎いも怖いもない。名前だけの敵だ。


「あたしが先頭だ」


ギャラリーがどよめいた。なんか、セイの言ってることが、よくわからない。だが、どよめいた。

「カッコいーよ!セイちゃん!」

トモはバンザーイ。


「わ、」わたしを突き出せば誰も死なないで済みます!

「「「黙れ」」」

却下。

フミノは涙目。


「なるほど」

ニート理解。

え?解るの?

ニートは見上げた。街の周辺はいつも晴れ。イベント以外は。

ネコの瞼が開いた。


「死ぬには良い日和ですかね」

「ダメだろ!」


セイのツッコミ。

胡乱な目つきのニート。

ネコの肉球から延びる爪。


「ヤツらの良いようにされてたまるか!」

みな(含むギャラリー)がダメ出ししたセイを見た。


「おっさん死ぬとみんな死ぬ」


「だね!」

トモが頷いた。

「行き倒れだね!」

微妙な胸を張るトモ。


「負けはヤダ!逃げんのはもっとヤダ!」

駄々っ子かと。

「ですか」

ニートは肩をすくめた。

「つまり」


みんなで戦えばネコカフェも聖たちも『黄金の夜明け』に皆殺し。

フミノを奪われて負け。


聖たちだけ置いていくと『黄金の夜明け』に皆殺し。

ネコカフェが逃げたから負け。


セイが残れば逃げたことにならない。

(まあ、セイは死ぬけど)

ニートがフミノと居れば『黄金の夜明け』はフミノを捕まえられない。

逃げないしフミノは守れるし、ネコカフェの勝ち。

(まあ、セイは死ぬけど)


「そー!!!!!」


ドヤ顔のセイ。


あるいは、

『どちらにしても巻き込んだ教都の人たちは死ぬんですが』

などと些事が気になる人もいるだろう。


フミノとか。


「ふがっひゃ」

何か言いかけている、『自分を差し出せば他のみんなが助かる』と多分、何度目かに言いたいのであろうフミノ。

縛られて塞がれてどうにもこうにも。

いや、こっそり、そーっと、ネコカフェ一同を置いてアーネたち追手のほうに行こうとしたから。


「おっさんたちが逃げればザマーミロだ!」

ドヤ顔。

スフィアのスキルには『捕縛:亀甲縛り』がある。

それはともかく。


「おー」

しきりに感心するトモ。


「逃げずに勝つ!」

ドヤ顔のセイ。


「ここでお別れですね」


水盃を配布するトモは、ニート達に手をふる。


「おまーも逃げんだよ!」

「ですよ?」

セイに怒鳴られ、手をふってニート達にパスするトモ。


「ちょーちょーまちまちぃ」

「ほらほら!まてって!」


指差すトモ。


「急いでんだよ」

「生き急いだらアカンって」


セイは棍を握りしめニートを見た。


「じゃあな、おっさん」

ゲートまでは一息。ダッシュ一発の距離。


「まてって「言ってるよ?」」


ゲートに背を向けたセイが振り返った。


「だからトモは・・・だれ?」

「ひどいよ!セイちゃん!」

セイはトモをヘッドロックしながら見上げた。


そばに立つ長身。


魔法使いローブのような、それはガラベーヤというのだが、砂漠に合う感じで、足元まで覆っている。

頭にも布をまいているがダーバンとはちがう?腰を絞り込み、刀をさしている。


半月刀だ。


「ありがち」

とセイは思った。


「言ってる言ってる」

浅黒い肌。彫りが深く、表情に作為がない。

表情の読み方を教えたのはニート。


「ワシな、ナスチオンってモン」

突然話に割って入った長身が手のひらを上げた。


胡乱な目つき×2。

好奇+バンザーイ×1。

無視×2。

「無視すなよ!!!!」

ツッコミ×1。


「誰だ?」

セイが訊く。ニートに。

「キミらスルースキル高すぎ!」


ニートはまっすぐに見つめる。セイを。

「朝の待ち合わせ相手です」


ホガッヒャ!!!!!


「弱い」

それだけ。

あえて大振りの回し膝蹴りが延髄決まり真下に落ちたナスチオン。


「ヒドー!!!!!!」

即復活。HPこそ減らないが、衝撃で涙目。


「すっぽかしゃあがって!!!!」

「来たろ!今!」

断固抗議。


「どんだけ遅れてんだ!場所ちげーし!」

吠えつくセイ。


「約束は朝だろ朝!まだ朝!」

ナスチオン胸を張る。場所には触れない。

セイがニートに視線。

「一時間過ぎてますが」

「嘘!まだ40分くらいだろ!」

セイの額に青筋。


「遅刻自覚してんじゃねーか!!!!!」

ニートがセイの肩を叩いた。

「こーいう文化もあります」


時間の概念が非常におおらかな文化、というのはある。個人差はあるが。


「ところでなんか用ですか?」

話の流れを気にしないトモ。


「えらいぶっそーな話だからよ」

見かけて近づいたら聴こえた。

とのこと。


「皆は?」

肩をすくめたナスチオン。

「メンツは半分しか残ってねー」


ナスチオンのギルドメンバー残数。


「法学者も導師も?」

「ゲストの先生はいるけどな。残ってるのは日本人だけ・・・あ、これ自顔だけど帰化済みだせ。住民票もあるし」


ペルシア系日本人の説明は怪訝そうなフミノ向け。

縄を解こうとはしないが。というか、フミノも慣れてきた?


「あっちは?」

「13人だな。ねらったのかとよ」

笑う。

「しかも、よりによってニワカくせーヤツばっか」


ニートは頷きながらナスチオンからケバブを受け取りセイ、フミノに渡しネコの口に放り込む。

フミノはボールギャグを外してほしいかもしれない。

外して欲しくない、むしろつけていたかったらドン引きである。

「ワイは喜ぶで?」

例外はある。


「あ」

トモの視線。聖の方向。アーネはおびえたように後ずさる。

アーネの背後でさらにおびえていた『黄金の夜明け』メンバーが、包囲が解かれて逃げだした。


「うーん」

あたし、要らないか?セイが考えこむ。

「珍しく」

「うっせー!」

襟を締め上げつつ、ニートの耳元に囁く。


「勝てるのか?坊主ら・・・・・・違うか」

聖本人が勝てないと言ってる?

「やっぱ行く」

セイが、フル装備に切り替えた。


「あのアーネを串刺しにして門外に放り出し首を跳ねてビジュアルショットを拡散するんですね」

「それだ!」

「こわ!この娘らこわ!!」


トモのアイデアに頷くセイ。怯えるナスチオンはまったく正常です。


ならニートは?

「まあ、いいですけど」


「ダメでしょう!!!!!」


ニートは微妙な表情。今日はダメ出しが多い日だな、と。


「ダメ出し日和?」


そのまんまである。


「ところにより巫女さんが降るでしょう」

トモがオタマを持っているのはマイク代わりか。


「また増えてる」

うんざりしたような巫女装束の少女。

ギャラリーを飛び越えてきたのだが。

例によって衣装はフィクションっぽい改変バージョン。肩の辺りがむき出しだし胸元もそれなりで袴というよりミニスカートではないのかと小一時間。


「お久しぶりです」

胸に手を当て一礼するニート。

「新メンバーのフミノです」


指さされたフミノはイヤイヤと言いたげにかぶりをふる。人前に出たいかっこではない。


「・・・変わった装備ね」

亀甲縛りにギャグボールは巫女装束と同じように公式アイテムです。


「こちらは天徒アマトさん」

ニートは巫女を紹介。

「ギルド『社』のマスター」


仏教系ギルド『聖球寺』の盟友で神道系ギルド『社』。

ギルドマスターの聖と天徒はリアルでも親友だ。

「スフィアでは神仏習合というわけです」


ほーっとセイ、トモ。意味はわかっていない。


「おれは?ちゃんと紹介してないよね!」

いまさらナスチオン。


「遅刻魔」

「すっぽかし」

ちょー!っと身悶えるナスチオン。


「付け加えるなら、イスラム系ね」

と天徒。


ほぁ?

セイ、トモが見た。

アラビア半島のベトウィンを思い浮かべよう。

それがナスチオンである。

「イラストいらずのナスチオン」

「なにその二つ名!!」


「ベタ」

「いいの!こういうのは誤解の余地がない方がいいの!」


ニートが頷いた。


「ステロタイプに徹すれば看板より有効ですから」

ナスチオンがスーツ姿なら、それと気がつかずにタブーに触れる人がいるかもしれない。

触れたほうも触れられた方も不快で不幸だ。

砂漠装束に宗教色を感じるのは偏見だが、それを利用して立場を明示すれば、タブーに触れるのは攻撃と即断し反撃出来る。


「全力で殴れますから」

「いやいやいや」

天徒が止めた。

「教都ならまだしも他の街で常識を期待しちゃだめよ」


特定エリア限定の常識とは、これ如何に。


「ターミナルに布教関係者はリアルですね」

教都は各種宗教、しかもリアル系、のPLが拠点にしていた。

「あん・・・ニートさんが、勧めたんでしょう」


だから聖が本拠を定めた。

だから天徒がやって来て街に宗教色がついた。

だからイスラム系ギルドが続いた。

だからキリスト教系ギルドが張り合った。

だからほかの宗派も続いた。


「後は芋づる式」

「芋ゆーな」


かくして、アップデートで調子にのった運営により教都は改変。

中世欧州の街並みにモスクやキリスト教教会に牧師館、拝火教の祭壇他各種ミニ神殿が乱立してしまったのである。


「それより」

天徒。

「よけーな事しないでくれる」


ナスチオンの話題終了。


「子供に特攻させる必要ないから」

「おんなじくらいだろ!!」


中学生と高校生。

似てるか違うか。


「まあ同じ選挙権前ですから似たようなもの」

「「ちがう」わよ!」


本人たちには大問題。


フォロー(?)のニートは愛想笑い。

ナスチオンはしゃがみこんで『の』を書いている。


「とにかく!」

「先ずは聖の手並みに任せましょう」

後半を引き取ったニートはメッセージウィンドウを閉じて肩をすくめた。

「「呼び捨て?」」

そこか。

「我々は先を急ぎますので」

あ、終わりました?っという感じである。


ちなみに、ネコはニートの上で寝てました?




聖vsアーネ。

全然VSな感じはしないが、続いていた。

ネコカフェがもめている間も。

新キャラが増えている間も。


アーネは蒼白だ。仲間が逃げたことにも気が付いていない。


「為すべきことをなす?って言ったわね」

聖が嬉しそうに頷く。

「あんたは誰をかばっているか、わかってない!」


「聞かされておりましたか?」


聖は小首を傾げた。


ニートはフミノを担ぎゲートに向かう。

ゆっくり。

ゆっくり。

訳がわからないセイとトモをくわえたネコが続く。


「運営!まて!!!!!!」


ニートはゲート前。左右を見回して『ウンエイ』を探した。

ネコも真似る。


「そいつだよ!その女!」


ニートが驚いて見る。釣られた皆の視線が集まる。


「え!あたし?」

天徒。


「フザケンナ!あんたが担いでる女よ!!!!」

アーネの声は静まり返った街に響く。

「このデスゲームを始めた運営よ!その女は!」


アーネが指さす皆の視線。



フミノ。

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