≪第十九話≫ No.21-Ⅱ
≪第十九話≫ No.21-Ⅱ
「我らも御挨拶致そう。私はこの稲島家の当主・小太郎俊高と申しまする。御見知りおき下され。」「身共は筆頭家老の佐野高兼と申す者、良しなに。・・・」「私は、侍大将の真島良高と申しまする。宜しく御願い致しまする。」と3人は丁寧に挨拶をした。
「固い挨拶はこの位にして、忌憚なく触れ合おうぞ。長い縁となろうからな。」と源芯が場を和らげた後に、「俊高殿、今後どの様な手立てをお考えか。聞かせて貰おうぞ。」と更に続けた。
「玄斉殿と燕の法師殿には、この真島良高が指導している錬成隊を御指導頂ければと願っておりまする。」「錬成隊・・・・?」と燕の法師が首を傾けた。
「錬成隊とは、正規軍に入る前の予備軍で、御屋形様が、考案せれたのでござる。年は15才~25才の健やかな若者であれば、身分や素状に捕われる事無く用いて、常に200人程が訓練を行っておりまする。」と真島良高が説明した。
「ほう~それは楽しみでござるな。」と玄斉が頷く。
「実は源芯殿。岩室に続き、中之口と味方も我が稲島領と成りまする。」と俊高が源芯に伝えた。「ほう~。笹川と柿島が領土を献上致すのか?」と源芯が顔を崩して喜んだ。
「はい、三条の斎藤家が白根を取り入れ、全盛期の勢力に戻りましたし、黒江勝重なる強力な配下を手に入れたのですから、笹川常満と柿島信政が、稲島家と一つと成って対抗したいと願って参りました。」
「おゝ、そうか。これでこの稲島家も、新津・秋葉家に並ぶ勢力となったのう。」と源芯が頷いた。
「更に、中之口、味方、岩室の予備軍を併せれば、裕に400人の錬成隊と成りましょう。」と家老の高兼も続いた。「うぬ、それは上々。」と源芯が更に顔を綻ばせた。
「問題は、あの騎馬軍団に対抗する我が騎馬隊の編成で有りまする。」と俊高が懸念したが、「粋謙、どうじゃ。お主の考えを述べてみよ。」と源芯に問われたので、彼の癖なのであろう、細眼をしば着かせながら忌憚なく答えた。
「・・・・源芯殿、騎馬隊を創る前に、先ず良き馬を揃えなければなるまい。」「うぬ、先ず馬だな。・・・」「うぬ、信州の駒も良いが、越後は平野が広い故、我が相馬の早掛け馬の方が良かろうよ。」「そうじゃな。ならば俊高殿、相馬馬をどの位願うか?」
「・・・勘定方にも確認致すが、先ずは100頭は、揃えたい!!その後、更に100頭を追加して参ろうと存ずる。」
粋謙は「騎馬が揃えば、次に乗馬の訓練が必要となり申す。」と少し目を伏せながら、話す。
「あの黒い騎馬軍団とまともに戦えるまで、どの位懸りまするか?」と高兼が不安そうに問うた。「恐らく、3年は必要かと。・・・」「3年では、勝敗が付いて仕舞う!!」と俊高が語気を強めた。「どの位で、成せるとお考えか。」「出来れば、1年以内で、・・・」「1年・・・・うぬ~ん、難しいのう・・・」と粋謙は厳しい表情を隠さなかった。
良高が「あの~、黒江軍団は昨年の春より、召し抱えられて僅か半年で栃尾・五十嵐軍を破ったとか。いくら達人でも、軍団を築き上げるには時がいりましょう!?・・・に」と首を傾げた。
「あの男には、5人の黒槍衆という強兵がおって、恐ろしい程の鍛錬を掛けると云う噂でござる。」と粋謙は無表情に話した。「僅か1年であれ程の強軍にしたのか!?・・・」俊高は天を仰いだ。
「今、動かせる騎馬隊はどの位か?」と源芯が俊高に問うた。「先日の戦で30騎を失いましたので、草日部軍をも入れて、180騎程でしょう。騎馬隊は笹川常満と草日部の永島公英の両名に指揮させ申す。」
「粋謙、先ずはその両名に会って、俊高殿の願いをどの様に行うか、確かめる事だな。どうじゃ?」「源芯殿からの推挙なので、会ってみるが、黒江軍団に対抗するのは、わしだけでは難しい事よ。駒の扱いは誰にも負けぬが騎馬武者となれば別な話しよ。」「粋謙、お主、誰か存じおるであろう!」源芯の言葉に粋謙は暫し沈黙した。