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≪第十八話≫       No.20-Ⅱ

≪第十八話≫               No.20-Ⅱ

 源芯も宮司の言葉に共鳴して「不思議な(えに)しでそなたが生れた事も、何か測り知れない天の摂理であろう。此度の戦で心が沈んだであろうが、この試練も乗り越えて更に大きな器を創らねばならぬのであろうよ。お主には生まれながらの天命が備わっていると云う事じゃ。」

「しかし、それが重荷でも有りまするが・・・・」次第に解かれて行く己が宿命に、若き俊高は苦悶(くもん)する事を隠せなかった。

 「わしも、父・俊兼と戦の仕様や国の政事(まつりごと)に意を異にして国を出て、修行の余生を送ったが弟・俊秋の願いの背後にこの様な顛末(てんまつ)があろうとは、人知では測り知れぬものでな。・・・・これは、三宝の一つで有る『真清水の玉水』を納めているこの八幡神社・奥殿の秘密の入口の錠前(じょうまえ)である。」と云いながら、千春から貰った小袋を開けた。

中から金メッキされた銅の鍵が出て来た。古い物で所々にメッキが禿げている。俊高は、ここの橋本宮司(ぐうじ)が同席した理由がはっきり理解出来た。

 「他の秘宝も直ぐに手に入るのでござるか?」と源芯に聞くと「いや、これからが謎解きの始まりじゃ。・・・今までの当主も、この巻物とこの金の鍵だけは見たが、三宝の一つでさえ、見た者はおらぬ。

巻物の伝承通り、定められた者以外が(よこしま)な思いでそれを求めれば、大きな災いが降りかかると教えられてきた。故に巻物とこの鍵は歴代・当家の筆頭家老が預かり、奥殿の秘密の入口はこの八幡神社の代々の宮司のみしか知らぬ様に、護られてきたのだ。俊高殿。」

 「本当にそれらの秘宝を手に入れれば、天下を治められるのでしょうか?」と俊高は素直に聞いた。「それは、わしにも判らぬ。・・・が何か天の導きがあるであろう。そして、まだ見ぬ、『天の巻』には、更に稲島家の家系の秘密が書かれていて、そちらの方が遥かに大きな支えになると聞いている。わしがこの日の本の国を巡り歩いているのも、その手掛かりを探しているのだ。」

「玉水を取り出せば、何かわかるのでしょうか?」と黙って聞いていた千春が問うた。

「いえ、玉水の用い方は『地の巻』の暗号を解かねば成りませぬ。」と宮司が説明した。

 「今宵は時も過ぎ、此処までに致そう。後は、わしと宮司で出来るだけ、謎を解いておくのでその時が来れば、御知らせ致そうぞ。俊高殿。・・・おゝそうであった。もう一つ別の件で御話ししたき事がござるので、すまぬが明日の夕刻にここに来て頂けぬか?」

「どの様な事柄でしょうか?」「頼まれていた山賀流総武術伝授の事と、斎藤家に対抗すべき騎馬軍団の事であるが・・・・」

「はい、それは願ってもない事、必ず参りましょう。」と返事をして、夜も更けた闇夜の道を俊高と千春は、其々の館に帰って行った。

 翌朝、登城して1日政務を行った後、俊高は家老の佐野高兼と侍大将の真島良高を連れて約束の刻限に八幡神社の宮司屋敷に(おもむ)いた。奥の間では、源芯だけでなく、先日の長者原山で危機を助けてくれた修験者二人と、もう一人見知らぬ人物が座っていた。今日は俊高が上座に座り、双方は向い合って顔を合わせた。 

 源芯が口を開いた。「俊高殿、紹介致す。この三人は何れもわしの修験者仲間であるが、特に心技体優れた者達でござる。其々、挨拶してくれ。」と余程仲の良い間柄と見えて、少しぶっきら棒に(しゃべ)った。

「身共は播州姫路の出身で本名は大久保是(これ)(ゆき)と申し、法名(ほうみょう)は、吉野坊(よしのぼう)(げん)(さい)と名乗っており申す。先日、長者原山にて、お目見え致した。」

「この玄斉は、棒術に秀でておるが、元は摂津(せっつ)・細川家の長槍隊を指揮していた武士であった。」と源芯が付けたした。

「わしは、飛騨高山の生れ、法名は(えん)の法師と申す。琉球で空手を学んで来まいた。元は百姓で、名は忘れた。はっはっはは~」とぞんざいに話した。

「次は、初めて顔を見るであろうが、陸奥(むつ)・相馬より来て貰った馬の達人でもある。」「月山(がっさん)で修行致した(すい)(けん)と申す。お見知りおきを下され・・・・」少し陰鬱(いんうつ)な雰囲気を持つ男であったが、俊高は一番関心がある人物であった。

    


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