≪第十七話≫ No.19-Ⅱ
≪第十七話≫ No.19-Ⅱ
源芯は広げた巻物の巻頭を見せながら、「この巻物は『地の巻』と云い、もう一巻『天の巻』と呼ばれる物が有る。しかし、天の巻はまだ何処にあるのか判っておらぬ。・・・・この地の巻には、我が稲島家に代々伝わる三宝の秘宝が記されていて、それを歴代の当主は護ってきたのだ。
今宵、そなたにこれを見せるのは、時が来たのであり、更にこの天来の三宝を以って天下に示さねば成らぬ時世となった。未だ全文は複雑な隠語や暗号文になっておる為、解読されてはおらぬが、この巻物の冒頭に次の如く記されている。
『天下乱れ、悪しき者暴虐に満ちる時、我が血筋の選ばれし者来たらば、この巻物を解き三宝を集めて、天下の正道を正せよ。我が三宝、私利私欲にて用いる事あたわず
三宝即ち 一つは黎明の兜・是天の知恵と誉成り、一つは紅の剣・是天の権威と裁き成り、一つは真清水の玉水・是天の潔めと情愛成り、三宝併せたる者 天下の仕置き司る 真の王者となるべし』とある。
我が稲島家に於いて、今がその時である。俊高殿が『我が血筋の選ばれし者』となったからだ。」
そこにいた八幡神社の橋本左内宮司も佐野千春も、源芯の熱の籠った強い波動の言霊を聞き、大きな心霊的渦を感じていたので、思わず俊高の面を見詰めた。その俊高は半眼のまま無表情で聞いていたが、顔を上げて静かに語り出した。
「源芯殿、実は昨年の亀城決戦の折、ここ八幡神社の秋葉本陣を奇襲した際、児玉監物の戦術に嵌り、敵に囲まれてしまったが、百日に及ぶ籠城と山嵐のせいで、熱風が吹き、心身共に疲れ果てて、合戦の最中に倒れ申した。幸い傍にいた柿島信政が助けてくれ、本殿に運ばれて暫し瞑想致した。
その後、天に向け「我ら、この戦、私情に非ず、天命なり!天よ!!我に味方せよ!!」
と叫ぶと、不思議にも風が止み、灰色の雲の隙間から、一筋の眩い光がスーと射して、我が身を包んだのです。
その後、丁度16才の折、御山(長者原山)で雷の如く霊動して、天啓を受けたと同じく体が動かず、此度は、東の空より、天の軍勢を率いて来られた、白衣の衣袴を着た御方が現れました。それは、ほんの一瞬の出来事で有ったでしょう。
その御方が《我が子孫よ、我はジンムなり。天の命を享けて、汝に力を託せん。》とおっしゃり、《我、汝の始祖であり、大倭・太初のすめら尊なり。2000年余綴りしこの国民を、汝、この乱世より、救い出さん。》
更に私がその様な事がこの身に出来るのでしょうか?と問うと、《汝のみで行う事に非ず。我が国造りの古に学ぶべし! また我が血筋を正せよ!!》と云われたので、(先ずは、今この試練を越えさせて下さい!神武天皇)と念ずると、
《汝にこの天の秘宝を授けん!!冠は天の誉と知恵、剣は悪を滅ぼす、正義の裁きじゃ!!我ら、行く末までも汝らを守る。迷わず、行け!!》と云う声と共に我が頭に黄金の冠が置かれ、右手に白銀の剣が握られていたのでした。」ここまで、話すと俊高は言葉を置いた。
聞いていた3人は、俊高があの激戦を制した背景に、天の摩訶不思議な助勢があった事を実感していた。
「俊景様、あっ、いや源芯様、御屋形様は正しく、天が選ばれし御方でござりまする。稲島家の秘宝を受けるのは、俊高様以外にはござりませぬ!!」と少し声が上ずりながら、宮司の橋本左内は声を高めた。




