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前科 交通事故の死神   作者: エントラル
第4章 死神の共鳴
49/54

39 群殺

カラスと死神って結構マッチするわよね?by 白庄 天海

言わないで。黒巫女を名乗っているくせに。by 荒杉 理性

俺は完全に空気だな……。by 坂追 竜治

「やけに不気味な空だわ……」


理性は情報屋の扉から外に出て、夕暮れのオレンジ色に染まった空を見上げながら呟いた。何故なら近くの建物の屋根にカラスが複数止まっているからだ。情報屋の中でも見かけたし、今だってこんなに沢山……。


私はそんなに死神に近くなっているの?


一度交通事故で死んでしまっているので思わずそう思ってしまう。不幸の象徴だとされるカラス……。ますます死神らしくなってしまっている。有雪から死神だからと言われて鵜呑みにはしたくないけど……あの力は……。


「もうっ!!こんな自分のことで落ち込んでいても先には進めないわ!!」


そこで理性はその暗い空気を打ち消そうと小さい頃、にお婆ちゃんから夕方によく聴かされた昔の歌を口ずさみながら、歩いて帰ろうとした。


カァ!!


その前に近くの建物の屋根から一羽のカラスが鳴き、歌が遮られる。しかし、理性は何とも思わずスルーする。不機嫌そうな鳴き声などとうに聞きなれていた。今回はたまたま鳴いた。ただそれだけだ。


しかし……。


カァ!! カァ!! カァ!!


その一羽が鳴いたのを皮切りに連鎖して他のカラスも鳴き始める。時間が経てば収まると考えてはいた。が、泣き止む気配がない。それどころか逆に増えている。一体何が……。


「見ぃつけたぁ……」


その背筋の凍るような声に理性がとっさに振り返ると、屋根から飛び立った鴉三羽がこちらに向かって突っ込んできた。その鴉の眼は灼眼。情報屋の地下で見た鴉だ。しかしまだ肉薄していなかったので、彼女は突っ込んでくるであろう場所から離れることだけで回避しようとする。


鳥は簡単には曲がれない。それに相手は生き物だ。そう甘く考えて武器を出さずに構えていた。しかし相手はそんな彼女の予想を簡単に打ち砕く。


「なっ……!!」


目の前の鴉がいきなり炎上し、炎の刃となって無理矢理に軌道を曲げこちらに向かってきたのだ。一瞬だけ思考が停止してしまうが、横っ飛びで寸前を何とか攻撃をかわす。炎の刃は自分のいた場所に突き刺さり、裏通りの空き家の壁を破壊し窓ガラスを粉々に粉砕した。


「くっ……」


理性はかわしたせいで地面に叩きつけられたが、すぐに立ち上がる。次に目を閉じて急いで強く刻印に武器が出るように念じた。もうこれを使うしかない。誰なのか分からないけど、危険なことには変わりない。


そして刻印から黒い霧を出して、中からピストルと大鎌の二つを同時に取り出し身構える。両方を扱うのは無理があるが、武器自体を能力で軽くして何とか補えるだろう。


最も幸いなのは、この場所にラウネンがいなかったことだろう。恐らく、相手は情報屋を出た傍から襲ってきたから情報屋を狙った刺客だろう。若しくは……考えないでおこう。もしそうならそれこそラウネンを守らないと。出来れば前者であった欲しい。


キィィィン。


そんなときに突如、耳鳴りがして警戒心が削がれる。音は自分の手に握られた二つの武器から、震えるように響いてきた。立て続けに起こる不可解な現象に、理性は理解が追い付かず唇を噛む。次から次へと……何が起こっているのよ。


不機嫌気味に見上げると、鴉はそれだけに留まらず、上空に何十羽も飛んでいてこちらを襲撃する気配をちらつかせながら、輪を描いている。だが上空を見た瞬間に再び新手の鴉が襲いかかってきた。今度は4羽。数が増えている。


理性は銃を構えて引き金を引く。この世界では似合わない銃声が響き渡り、銃弾は一羽に命中して地面に叩き落とした。だが残りは仲間の死に動じることなく、そのままこちらに迫る。そしてさっきと同じように全身を炎上させた。


理性は鴉の攻撃に恐れを抱いた。銃で打って死んでも消えないのなら、向こうは一つの生き物なのだろう。なら何故攻撃に躊躇いがないの?


「はぁぁぁ――――!!」


しかし、現実は答えを出すのを待ってはくれない。理性は自衛の為に残った鴉に向けて大鎌を振るった。振るうタイミングなど予測はできないが、一羽でも仕留められることを信じて。それはほぼ闇雲だった。


だがまたしても予想外のことが起こった。物理的には曲がれない筈の炎の刃と化したカラスが、突如あり得ない鋭角な軌道を描いて自分の攻撃を躱したのだ。その結果大鎌は空しく空を切ることとなり、理性の防衛線は突破された。


彼女は軽量化能力を使って素早く大鎌を引き戻そうとしたが、大きく振りかぶってしまったことが災いして致命的な隙が出来てしまい、刃はそこを狙うように攻撃してきた。


「ぐあっ……が……」


刃は全て彼女の体に命中した。一つ目は右膝に、二つ目は銃を握っていた右手に、三つ目は左側の腰に、最後は頬を掠めた。直後に怪我による痛みが理性を襲い、手から拳銃を落とした。また立つことが出来なくなり右膝を庇うように膝をつき、大鎌を持った左手で腰の傷を押さえる。すぐにじわじわと傷口から出血し、青い無地の上着と茶色いズボンを赤く染めていった。頬からも血の筋が一筋肌を伝ってポタポタと地面に落ちる。


そんな……。


理性は有雪を倒したことによって自分は他の死神と同等に渡り合えると考え、自信を持っていた。道具さえ使えていればラウネン達を守れると。しかし実際の結果はこれだ。一撃で重傷を負ってしまい、死神かどうか云々より前に魔法っぽいあの攻撃にさえ対処できていない。それに……。


手加減された……。


荒い息遣いで上空のカラスの群れを睨み付けながら理性は思った。あれだけ攻撃の軌道を曲げることが出来て、なおかつ自分の攻撃を易々と躱せるのなら首を落とすことも、手足を切断することだってできた筈だ。なのに……何故?助けられたのはいいが、その意図が分からない。


「なんだ……。ただの雑魚神だったのかな?新米」


背後から落胆したような女性の声。険しい表情で振り返るとそこには黒いローブで全身を覆い隠した女がいた。フードで顔は隠していない為、その姿をはっきりと視界に捉えることが出来る。


背丈は自分と変わらず、顔から推測して年齢も殆ど大差ない容姿だった。髪は黒長髪ストレート。しかし腰以上に長い髪なのか、風に揺られると若干ホラーな形になっている。目は何故かカラス同様、血のように赤く吸血鬼を連想させた。


そして彼女の右手には黒く光る杖が握られていた。杖は一メートル程と長く、見た目で魔法使いの杖なのだろうと予測がつく。また、先端に付けられたカラスを象った飾りと彼女の肩に止まっているカラス、その背後に集中して控えている大群を目の当たりにすれば、こいつが襲撃した犯人であることは一目瞭然だった。


「くっ……」


理性はここで倒されまいと痛む身体に鞭を打ち、大鎌を杖代わりに立ち上がって敵と向かい合う。さっきから響いてくる耳鳴りが一段と強くなって聞こえた。よく聞き分けると自分の武器だけでなく、向こうの杖からも音が出ていて共鳴している。


「もうそれで限界?消殺を倒したくらいだから期待して待っていたけど、挨拶でこの様なんて……呆れたわ」


向こうは挑発するようにこちらに話し掛けてくる。その言葉に呼応するかのように肩の上にいるカラスが一声鳴いた。続いて背後のカラスも不気味な程に同じタイミングで一斉に鳴く。その馬鹿にするような声に腹が立った。


でも、それより……。彼女の言う“消殺”を倒したという言葉。読み方さえ違わなければ有雪仁志が名乗った“消える”死神のことを指している?だけど何故、彼女がそれを知っているの?


しかし咄嗟にかぶりを振る。いや、そんなことはさっきから分かっていたこと。情報屋を狙った魔法使いの襲撃とか楽観的に考えていたけど、実際はこっちだったのね……。つまり、目の前で自分を見下ろしているこの女が……。


「死神……!!」


理性は絞るような声で彼女に正体を言い放つ。なるべく気付かないように行動していたつもりだったけど、もう感づかれるなんて……。やはりあの覗きカラスのせいね。絶対に。あの時速やかに始末しておけば……。


「ご明察。でもこれ、答えるまでもないわよね?さっきまで私の諜報員が貴方の傍で監視してたんだから」


相手は薄く笑い、肩に止まらせていたカラスを杖の持っている右腕の上に移すと、空いた左手で撫で回す。その振る舞いからしてかなりの余裕を持っているようだった。それに対して自分は怪我で身動きが取れない。完全に舐められている。


「一体何が目的なの?古河原こがわら 御嵩みたけ


理性は情報屋から得た情報を元に彼女の名前を使い、尋ねた。でもこの答えはとっくに予想はついている。自分を殺して所有する死神道具を奪うこと。しかし、今彼女はそれが簡単に出来る状態なのに、敢えて私にトドメを刺していない。何故ここまで長々しく敵と会話するのか不自然だった。


「あら、私の名前をご存じだったの。まぁここには堂々と入ってきたから、情報屋の資料に載って当然かしらね。あと付け加えると、私の通り名は“群殺”だから宜しく」


有雪が消える死神=消殺なら、彼女の特性は群を成して殺す群殺。それがあのカラスの大群ということね。私はどんな通り名なのか知らないけど。


「因みに私も貴方の名前を知っているわ、荒杉 理性」


「……!!どうして私の名前を……?」


理性は自分のフルネームを知っていることに驚く。ラウネンとスクレーン、あと亡きソルーク以外には明かしていないし、情報屋の資料にはまだ載っていなかった筈……。どうしてこいつは知っているのか。


「それよりもこちらの目的を言うのが先でしょ?荒杉さん。早まらないでね」


その口調が妙に白庄の古語トークに似ていて更に怒りを助長させるが、ここは堪える。まだ話に乗ってくれるということは、それ程急いではいないのだから……。


「目的は一つ目、貴方の命」


「そんなのは分かってるわ。なら二つ目は?」


「ラウネン=ジルアロン」


「……!!」


彼女の口から出たのは他でもない、今自分が最も守りたい少年の名前だった。自分のせいで村は壊滅し、家族を死なせてしまった。だから唯一の行き場所である、シャロボスまで無事に送ると死んだソルークと自身に誓った大切な存在。


「彼に何をするつもりなの?」


理性の中から余裕が消えた。最も関わって欲しくない彼をどうするのか。彼の身に起こることを想像し、心の中で焦った。彼だけは関わって欲しくない。絶対に……。


「実に単純明快な話よ。彼を始末するだけ」


「なっ……!!」


彼女の言葉に理性は凍り付く。始末。つまり殺すというのだ。背筋が恐怖のあまり、冷たくなっていく。しかし同時にそれを聞いたとき、地獄の業火の如くこれまで一度も抱かなかった規模の怒りが全身を駆け巡った。


「だってさぁ……私達死神同士の戦いにあの子は必要ないでしょ?あんなお荷物、貴方が始末出来ないなら、私が代わりに処分してあげるわ。その方が戦い易いよ。それに私としてはぶっちゃけ邪魔」


本心剥き出しの容赦ない言葉に反論の声さえ止まる。ラウネンのことを物のように扱うなんて……。お荷物、始末、処分。そんなことを躊躇いもなく平気で口にする古河原に、理性は自分の中で何かがプツンと切れるような音を聞いた。


「そんなこと……」


理性は肩を震わせた。同時に握る大鎌の刃もカタカタ震える。彼女はそれを手に上段に構え、相手に向かって刃を向けて小声で言う。もはや痛みなど忘れていた。彼だけは守る。絶対に死なせない。また彼をそんな風に言う彼女を許さない。


「ん?何か言ったかしら?Repeat after m……」


「そんなこと……させて……たまるか!!」


理性は咆哮し、残る力を全て込めて古河原に向かって走り出して行った。怒りを込めた全力の一撃。また彼女を葬る裁きの鎌。その姿は正に魂を刈る死神そのものだった。


直後“群殺”の死神、古河原 御嵩によるカラスの炎上した刃が作り出す弾幕が理性を襲った。


意見、感想がありましたら投稿お願いします。


今回から一言コメントにも出て来るので宜しく♪by 古河原 御嵩

なんか怪しいキャラが増えたな。by 多代崎 翔

俺の出番……。by 坂追 竜治

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