43 不思議な女の子とカマード博士
海底の神殿。
まさか連日来ることになるとは思わなかったな……。
「早速、ブルーを探そうか。まずはセオリー通りに受付に聞こうかな」
そういう常識はあるんだ。
思わずそう思った。なんか、この人、突拍子もない動きをするから構えてしまう。
神殿の入り口にいる受付の人に聞くと、ブルーは朝から来ているという。
「ブルーさん、相変わらずお忙しそうで。急いで神子の椅子の部屋へ行きましたよ」
受付の人がにこやかに話してくれた。
「神子の椅子って……」
「おや、アオバ君。知ってるのかね」
「うん、昨日、スーイに案内してもらったばっかりだよ」
「そうか、説明する手間が省けたよ」
神子の椅子の部屋は、文字通り、神子が座る椅子があるところだ。
今、神子は不在なので、当然のだれもいない静かな部屋だった。
昨日もスーイとおれしか人はいなくて……いや、モノクロの女の子……ちょうど、リュウセイくらいの……もしかしたら、幽霊かもしれないやつ……。
そんなことを思い出しながら、神子の椅子の部屋へやってきた。
「おや、誰もいないな……」
「ブルーのやつ、もうどこかに行ったのかな」
「ふむ。……少し、調べることがあるから、待っていてくれ」
カマード博士は吊り下がった旗をかいくぐり、神子の椅子のそばへ行く。
おれは念のため部屋の隅々まで見て回ろうと端の方へ歩いた。
体育館くらいの広い空間だ。結構広いからブルーがうずくまってる可能性もあるかも。
……いや、ないか?
そんなことを考えながらウロウロしていると、ふいにシャツを引っ張られる感触。
「え?」
振り向くと、昨日会ったモノクロの女の子が立っていた。
「!!!」
「シーッ!」
女の子が人差し指を口の前に持っていく。
「静かに!」
「き、君、いたの?」
「もちろん、いたわ。……あのね、おにいさんには言わなくちゃって。あのね、西の塔にね、行くんだよ」
いつの間にか近づいてきた女の子が腕にしがみつかれた。小さな手はーー子供特有の温かさがあった。
「西の塔に?」
「うん。おにいさんが行くの」
「おれが?」
「うん。ブルーも待ってるよ」
ーーブルーが?
ど、どういうことだ……この子、おれたちがブルーを探していることを知ってるのか。
それにしたって……そうだ、この子。どこの子だろう。神殿に住んでる? 今日もいるなんて……。カマード博士に言わなくちゃ。
「ちょっと待ってね」
未だにおれの腕にしがみつく女の子にそう言って、神子の椅子の方にいるカマード博士に声をかける。
「おーい、博士! ちょっとこっちにきてくれない?」
フッと腕が軽くなる。
「約束だよ」
今までしがみつかれていた腕を見ると、そこにはもう誰もいなかった。
『西の塔塔にね、行くんだよ』
モノクロの女の子が言った言葉だ。
おれの話を聞いたカマード博士は赤い目をまん丸にした。
「アオバ君……」
博士の口が横に広がる。満面の笑みだ。
「キミ、面白いねえ!」
急に腰に手を回された。
「うわっ」
ビビるおれに構いもせず、顔を近づけてくる。じっと目をのぞき込まれる。
え、なにこれ!? おれ、なんかした!?
「うーーーーーん」
長々と呟き、パッとカマード博士がおれから身を離した。
「なんなんだ……」
変な汗が背中を伝う。
この人、やっぱりよくわかんない。
くるりとカマード博士がこちらを向いた。
「西の塔へ向かおうか!」
「ブ、ブルーのことは?」
「もちろん追うさ。でもブルーは神殿にはいないようだからね」
「……さっき話した女の子のこと、カマード博士は信じるんだ?」
「もちろんさ。ここで会ったんだろう?」
「うん。で、でも、すぐに消えて……ゆ、幽霊だったのかな。もしくは、おれの幻聴の可能性も捨てきれなくて」
「あはははははは!」
カマード博士が大笑いする。
「な、なに?」
「いや、幽霊でもキミの幻聴でもないよ。ここで会えたのなら、神子の意志だ。そして、それにはブルーも深く関わっている」
「よく分かんないけど、信じてくれるんだな」
カマード博士は長身の身体を折り、おれの顔をじっと見た。
「やっばり、キミ、似てるよ」
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