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入婿白狼と吸血花嫁  作者: 雉豆 さら


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第四話 朝日の中の雷獣

「ぅ゛……ん」


朝日から逃れようとして寝返りをうつ。休日の朝のこの優雅な時間が堪らない……。


「っ!!」


昨日までの一人暮らしとは違う、明らかに広いベッドに一気に意識が覚醒する。

そうだ。結婚したんだ。


「リズ様?」


リズ様が見当たらない。

多分、先に起きている。

慌ててベッドから起き上がり、着替えようとしたが手を止める。

何を着るのが正解なんだ……?

普段休みの日はカジュアルな格好をしているが、果たして公爵家でもそれは通用するのか?


「おはようございます」


部屋の扉が開き、リズ様が入って来た。仕事の時のかっちり首元まで締めた黒いケープと僅かに甘さの残る紫のワンピースでは無い、首元が大きく開いた黒地に黒フリルの無地のワンピース。唯一仕事着と同じ、首元のリボンにあしらわれた赤い魔法石は、炎の属性魔法を使う証だ。


「おはよ、リズ様」


取り敢えずカジュアルになり過ぎない程度に、と引越しで持ってきた荷物から黒のスラックスと薄い水色のポロシャツを取り出す。


「私は朝食を準備して参りますが、ブラン様はいかがなさいますか?」


窓際に置かれた影時計は9(かげ)を僅かに過ぎて9と半々影(はんはんかげ)ほど。


「9半々か……俺も食べようかな」

「ご希望はございますか?」

「苦手なものは特に無いが……そうだなぁ、パンと肉があれば良いかな」

「承知いたしました。用意して参りますね」


リズ様が軽く頭を下げ、部屋を出て行く。

……ちょっと待て。


「リズ様が作んのか!?」

「あ、はい」


今まさにドアを閉めようとしていたリズ様が何事も無さげに返事をする。


「メイドとか……」

「今日は陽日(ようのひ)なので、皆様お休みです」


陽日にこのお屋敷に居るのはクレアドール父娘と俺だけってことか。


「じゃあ公爵様も料理されるのか?」

「ええ、うちは家族2人しか居ませんでしたしそもそもメイドの人数が少ないんです。平日もメイドと一緒に料理したりしますよ」


随分家庭的な公爵家があったもんだ。


「俺も魔王軍に入ってからは一人暮らしだったし、多少は料理出来る。リズ様だけに作らせるのも悪ぃし、着替えるからちょっと待っててくれるか」

「いえ、お気になさらず。私、用意してきますからどうぞごゆっくりなさっててください」


リズ様が食い下がる。

何だか、昨日俺の毛並みを撫でていたのは誰だったんだと思うほどよそよそしい態度だ。目すら合わない。


「リズ様?まだ疲れが残ってるのか……?」

「いえ」


冷たい答え。


「じゃあなんで……」


ぐぅう、と俺の腹が文句を言って言葉を遮った。


「取り敢えず、今日は一緒に作ろう。お互いの事知るためにも」

「……はい」


急ぎポロシャツに袖を通し、髪を手櫛で簡単に整える。雷属性の黄色い魔法石の付いたフィンガーレスグローブを机の上から回収し、リズ様の後について部屋を出た。

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