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第十二話

 神誤の顔が一挙に赤くなったのは間接を極められている苦しさや西孤に身体を弄られている恥ずかしさだけからきているわけではなかった。


「な、何言っているんだよ!昔ならいざ知らず、俺は10歳を過ぎてから西孤姉ェの裸は見た事なんかねえぞ!」

「アハハハ、笑わせるよ。私が白寿切を身体に塗る為に裸になっていたのを毎晩除いていたのは誰なんだい?」


 知っていたのか。驚き、そして更なる恥ずかしさに打ちのめされた。それから後ろめたさと惨めさに追い討ちをかけられた。忘れもしない、10歳の秋の夜。小便をしに外へ出たところ、月明かりに照らされた西狐が全裸で白寿切を塗っていた。蒼い月光に輝く西孤の肉体は声を掛けることはおろか、近付く事もできない美しさであった。


 そして神誤の中で今まで西孤に抱いていた何かが破壊された。


 この人、この女には今までのような接し方はしてはいけないんだ、よくわからないけどこのままではいけないんだ、その場を去らなければならない、そうでないととんでもないことが起きてしまう、でも足が動いてくれない、視線が肉体から離れてくれない、なんだろう、この何かがあがってくるような感じは?隣村のあのムスメに抱いた気持ちとも違う、なんだ、これは?なんなんだ?


 何かが炸裂した。腰から砕けるようにしゃがみこむ神誤。人生初めての射精。


 小便をすることも忘れ、その場から逃げ出した神誤。西孤は神誤が自分のすぐ近くにいたことを知っていた。そしてあえて知らぬ振りをした。自分でもどうしたらいいのか、わからなかったからだ。


 それから毎晩、西孤との「情事」が始まるようになった。西孤は知らぬ素振りを続けた。今考えてみるとちょっとしたイタズラ心だったのかもしれない。二人だけの秘密を共有するということに何か嬉しさを感じていたのかもしれない。


 しかしある日を境に神誤が二人だけの「密会」に現れなくなった。そして数日後、他の年長の忍び達が神誤が「男」になったという話をしていたのを偶然聞いた。理由などわからなかったが何故か寂しさがこみ上げてきた。


「毎日来てくれていたのに、突然姿を現さなくなったから女でも覚えたのかなあってさあ」


皮肉たっぷりに西孤が続ける。


「私もねえ、結構楽しみだったんだよ、お前に覗かれるのが。お前に覗かれているって思っただけで何気に濡れちゃったりしてね。アハハハ、とんでもない淫売の才能が昔からあったのかもね」

「やめろ、そんな言い方するなあ!」

「あれ?さっきから偉そうなことばかり言っているけどさあ、身体は正直だよね。なんかすごい事になっちゃっているし」


 神誤の「男」がジーンズの中ではちきれんばかりに自己主張をしている。違う、違うんだ、理性の抵抗、本能と肉欲の誘惑、逃げる、逃げるんだ、逃げなきゃダメだ!意識とは裏腹に西孤の指、腰、胸、顎までが神誤の身体を嬲る。


 西孤の指が神誤の内腿をまさぐる。なんという焦らし、なんという快楽、「男」に触れずしてここまでの快感を与える事のできるこの女、自分の師匠以上であり、友以上であり、姉以上であり、そして母以上の存在であるということまでもどうでもよくなってしまう。耳たぶをかまれたと思いきや、舌がうなじを下から上に這い上がっていく。その動きは「淫」の字を書くが如く。人間というのは肉体の歓びにこうにまでも弱いものか。


 両足を胴体にロックしたまま西孤が身体を捻る。動きに逆らうことが出来ぬ神誤は自然と回転し、身動きが出来ないままに仰向けになる。西孤はそのまま馬乗りになったままだ。両手の自由どころか両足の自由も利かぬ状態だ。西孤の両膝は神誤の胴回りを確実に固定、自由になっている右手で神誤の「男」をジーンズの上から誑かす。


「うふふふ、立派なんじゃない、なかなか」


 チロっと下唇を舌で舐め、そのまま身体を神誤にあずける。背中にあった時あれほど密着がイヤだった二つの乳房の事よりも「男」を刺激し続ける西孤の右手をどうにかしたくてしょうがない。顎のラインに沿って下から上へ舌を滑らす。唇を犯そうとした時、神誤が顔を背け、「征服」されることを拒む。


 そんなにいやかい、私に抱かれるのが。もうどうにとでもなるがいいよ。西孤が投げやりになる。


神 誤のジーンズのジッパーに手をかけた。考える必要もない、躊躇することなく一気に下げる。張り裂けんばかりの「男」が姿を現す。西孤の下半身は既にいつのまにか何も纏っていない。西孤の茂みには「女」から流れ出た蜜のしずくが絡み付く。それはあたかも「女」がこぼした涙のようであった。密着した身体を下の方にずらし、「男」の形を腹部で確認する。あとは「女」と一緒にずぶ濡れのダンスを躍らせるだけでいい。お前の「男」を私の「女」に。


「うわああああっ!!!」


 西孤の身体が神誤より弾き飛ばされ、宙を舞った。


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