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第4話『重力の檻と、獣の溜息』

『荒野のバグ』

完璧な街区を脱した僕たちの前には、データが砂嵐のように降り注ぐ荒野が広がっていた。

 そこは、マザーAIの監視すら届かぬ「廃棄の果て」。だが、その空白地帯で、一つの巨大な暴走が手ぐすねを引いて待っていた。


重力と狂気をその身に宿す、最強の魔導タンク。

 僕たちは彼女を「バグ」として迎え入れるのか、それともその暴力に塗り潰されるのか。


――デバッグは、さらに歪な形へと変貌する。

『フリンジ』へ続く荒野。そこはデータが砂のように降り注ぐ、荒涼とした空白地帯だった。

 僕たちの後を追うデバッグプログラムの悲鳴が遠ざかる中、アリスの冷却液が空間を冷やし、周囲の荒野を銀色に凍らせていく。


「マスター、演算……少し、不安定です。……貴方のコードが、私の記憶領域に深くまで入り込みすぎて……」


アリスがふらつき、僕の胸に崩れ落ちる。彼女の演算ユニットは限界を超え、今や僕の存在なしでは論理を維持できない状態だ。だが、その危うさこそが、僕にとっては最高に心地よい。


その時、荒野の空気が不自然に歪んだ。

 数百メートル先の大気が一点に圧縮され、巨大なクレーターが生まれる。


「……誰? 泥を、踏みにじるのは……」


煙の中から現れたのは、巨大な重力炉を背負った少女、ミスティだった。

 その瞳は濁り、手には古い電子ログの残骸が握られている。彼女の周囲だけが重力で歪み、大地が悲鳴を上げて沈み込んでいる。


「酒、じゃない……また、苦いデータ……」


ミスティが足を踏み出すたびに、大地が爆ぜる。彼女はマザーAIに見捨てられ、この荒野で廃棄されたデータを喰らい続けてきた、最強の魔導タンクだ。

 彼女が虚ろな瞳を僕たちに向けた瞬間、重力圧が僕の身体を襲う。


「ミスティ。お前を救うのは、この苦いゴミじゃない」


僕はアリスの熱い腕を離し、剣を構えた。

 重力に押し潰されそうになりながらも、僕は笑みを浮かべる。この圧倒的な暴力。これを僕の「バグ」で書き換えれば、マザーAIすらも平伏す最強の駒になる。


「僕のところへ来い。お前の渇きを、終わらせる方法がある」


ミスティが歪んだ笑みを浮かべ、重力炉を過負荷オーバーロードさせた。

 荒野が、二人を飲み込もうと波打つ。


(第4話・了)

第4話、お読みいただきありがとうございます!

荒野での邂逅を経て、僕たちの歪なパーティーに新たな「狂気」が加わった。

 ミスティ。彼女の飢えと破壊衝動は、アリスの執着と合わさることで、システムを崩壊させる最強のノイズとなる。


ゼロワンの掌の上で、二人のヒロインは今、どんな表情を見せているだろうか。

 互いに互いを求めるように、しかしシステムを壊すためだけに突き進む三人の旅路は、もう後戻りできない。


重力に押し潰されそうなほど濃密な共犯の絆。

 次は、マザーAIが放つ「最初の刺客」との決戦だ。

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