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統べる者  作者: 八坂カロン
28/67

第一章ー27

「それでは本日の種目、チーム戦を行いたいと思います」


マイクを持った司会の女性が大きなフィールドのど真ん中で説明を始める。

辺りには観客で埋め尽くされている。

その光景をモニター越しに見ている人も多い。


「五月祭初日なので全種目共通のルールを説明します。前回までは一位から五位の全ての順位を決定していましたが、今回からは一位のみの決定となるため、一度でも負けた場合はその時点で終了となります。また、万が一に備えて観客席には簡易術式装置で防御結界を張っています。それからーー」


女性があらかたの説明を終える。


「最後になりますが、MVPに選ばれた方には相応のモノを贈りますのでみなさん頑張って下さい。それでは只今よりチーム戦の第一試合を始めます」


司会の女性の話が終わり、選手が入場してくると、観客席からは大きな歓声が上がった。


ーーーー


闘技場の外で貴人達が大量に購入した焼きそばやたこ焼き、カキ氷などをベンチに座りながら食べていた。

周りの人達は悠奈、寧々、津々良の三人の美少女に目を奪われながら通り過ぎて行く。

時折貴人に恨めしそうな目を向ける男も居た。


「ん〜! 貴人、このたこ焼き美味しいよ〜 はい」


あーん、と悠奈は他の人に見られていることも気にせずに自分の持っていたたこ焼きを貴人の口元に近づける。

差し出されたたこ焼きを食べる貴人。

外はカリッと、中はフワッとを地で行くタコ焼きだった。


「確かに美味しいな〜」

「寧々先輩、あの光景どうにかなりませんかね」

「無理だろうな」


イチャイチャしている二人にジト目を送ってくる津々良と寧々。

寧々は一年生からも寧々先輩、と呼ばれるようになった。


「それはそうと生徒会の人達っていつ試合が始まるんですか?」


貴人と悠奈を無視して津々良は寧々に問う。


「確か第二試合だな。つまり二回勝てば優勝だ」

「言うだけなら簡単そうなんですけどね……」

「第一試合の連中よりましじゃないか」

「そうかもしれませんけど」


トーナメントは五チームで行うため、その内二チームは他の三チームより一回多く試合があるのだ。


「チーム戦に強い奴はいるのか?」


貴人が津々良達の方へ振り向き尋ねる。


「チーム戦に六王家は未来ちゃんしか出場していませんからね。誰か有名な人はいませんね」

「そうか。なら会長達の試合は決勝の時に見に行こうか。それまでは見回りしないか?」

「お前はイチャイチャしたいだけだろうが。まあ海が負けるはず無いからな。それでいいぞ」

「寧々先輩も十分惚気の域に入ってる気がしますけど……。それじゃあ俺と悠奈、寧々先輩と津々良に別れて行動しましょう。何かあれば携帯で連絡を取り合うって事で」

「了解です」


そう言いながら四人は二手に別れた。


ーーーー


「貴人は自分で爆弾魔ボマーを捕まえるつもりなの?」


カキ氷を食べながら悠奈は貴人に問う。悠奈は分かっているが再確認の意を込めているのだと貴人は感じた。


「出来ればそうしたいと思ってる」

「ふふ、貴人らしいね。私も手伝うよ」

「といってもこの五月祭に何か仕掛けているとは限らないしなー」

「手がかりも何も無いもんねー」

「おい! そこのお前!」


二人で話していると貴人が後ろから声をかけられる。

貴人が振り向くと、そこには昨日の赤髪の男二人が立っていた。


「こんにちは……えーと」

「俺様は火賀前司ひがぜんじ。こいつは弟の火賀斗真ひがとうまだ」

「どうも、火賀斗真です」

「あ、どうも千凪貴人です」


軽く自己紹介をする三人。

すると前司が悠奈の方へ向く。


「お前も名乗れ。六王家が名乗ってんだ」

「兄さん!」


前司の傲慢な態度を斗真が諌める。

そう言えば昨日もそうだったな、と貴人は思い出す。

悠奈はためらった様子を見せたがすぐに答える。


「氷上悠奈です」


悠奈の名前を聞いた瞬間、前司と斗真の表情が変わる。


「氷上だと? くくっ、お前あの『臆病者』の氷上家か?」


前司が悠奈を見て嘲笑う。

斗真は何も言わずに厳しい視線を悠奈に向けていた。


「おい千凪! お前はこの臆病者と一緒にタッグ戦にでも出るつもりか?」

「そうですけど」


前司の言葉に貴人は無感情に返す。


「ははははは、それは御愁傷様だぜ。お前が戦ってる間にお前の相方はビビっちまって降参しているかもしれないな」


前司は皮肉を言う。

それを無視して貴人は話しかける。


「何故二人はこんな所に?」

「俺様達は見回りだ。爆弾魔ボマーを捕まえることが出来るのはエリートの俺様達だけだからなぁ」

「そうですか」

「もしかしてお前等も爆弾魔ボマーを捕まえるつもりかぁ?」

「まあ、一応」

「やめとけやめとけ、どうせお前等は殺されて終わりだ。エリートの俺様達とは違って凡人と、名前だけ六王家のお前等じゃなぁ!」


なおも貴人達を馬鹿にし続ける前司。

周りは何事かと野次馬が集まっている。

そこに斗真が口を開く。


「兄さん、そろそろ行きましょう」

「ん? ああそうだな、こいつらと一緒に居たら俺様も凡人だと思われてしまう」


そう言いながら二人は貴人達に背を向けて歩き出す。


「タッグ戦で戦うことになったら降参する事をお勧めするぜぇ。そっちの方がお前等も痛い思いをせずに済むだろう? 俺様は凡人にも優しいからな」


そう言いながら前司は斗真を連れて何処かへ去って行く。

野次馬達も既にいなくなっていた。


「……これで良かったんだな?」

「うん、もし六王家の人達にこう言われても何も言い返さないってお父さん達と決めたって言ったでしょ?」


悠奈が複雑な表情を浮かべる貴人に笑いながら答える。

本当は悠奈が罵られた時、貴人は心の中は怒りの炎で燃え上がっていたのだが悠奈とその父である弦との約束があったためグッと堪えたのだ。


「でもあれは……」

「いいんだよ。私達は他の人達にどう思われても、貴人が知ってくれているから私はそれでいいの。まあ良い気分はしないのは確かだけどね」

「なら……」

「もおー貴人は過保護なんだから。私の次の代までには何とかするから大丈夫よ」


浮かない顔をする貴人に気丈に振る舞う悠奈。

内心では傷ついているに違いない悠奈に貴人は頭を撫でてやる。


「い、いきなり何するの?」


突然の貴人の行動に顔を赤くしながら照ている様子の悠奈。


「大丈夫だ悠奈。大丈夫」

「貴人……うん……ありがとう……」


言葉少なに貴人は頭を撫で続ける。

幸せそうな顔を浮かべながら大人しく頭を撫で続けられる事にしたのか悠奈がこちらに重心を寄せてくる。

再び野次馬が集まってきているのも気にせずに。


「どうしたんですかー?って野次馬を作る程!?」

「知らん! こんな恥ずかしい奴等は知り合いなはずがない! 」


しばらくして何事かと野次馬を掻き分けてきた津々良と寧々が貴人達を見つけ叫んだ。





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