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至福の朝のひとときですわ!


久しぶりの更新です。

作者本人も一から読み返しました(笑)


 

 今日も夜明けと同時に起きて朝の日課をこなし、パリッと糊の効いた制服に身を包む。

 昨日よりも少し早く家を出て、人通りの少ない道を馬車で進みます。


 朝日に照らされた林を抜けて学園へと至る。

 人気のない廊下を歩いて教室の扉を開けると、ちょうど荷物を下ろして席に着いたばかりのルナマリア様と目が合う。


 ルナマリア様は驚きで目を見開き、それからゆっくりと声を掛けてくださいます。


「ご機嫌ようペネロニース様。気持ちの良い朝ですわね」

「ご機嫌ようルナマリア様。そうですわね、こうしてルナマリア様とお話しする時間が得られたんですもの。早起きするのも悪くありませんわ」

「ふふふ、実は私も楽しみにしておりましたの。でも昨日よりもお早いですし、音もなくお見えになるんですもの」


 驚いてしまいましたわと言って控えめに微笑まれるルナマリア様は今日も美しいわぁ。

 別に驚かすつもりはありませんでしたけれど、つい足音を消して歩いていたみたいですわ。いけないいけない。


 私も荷物を置いて席に着く。昨日と同じように水魔法で紫外線バリアを張ると、ルナマリア様は待ち切れないと言わんばかりに話を切り出した。


「き、昨日の授業後は如何でした?」

「シルヴィア様とナターシャ様とでカフェテリアに参りましたの。私お友達とご一緒する食事は初めてですごく楽しかったですわ。ナターシャ様ったらあんなに細いのに一人前の食事をあっという間に召し上がるんですのよ」

「まぁ、皆様カフェテリアでお食事を…素敵ですわね」

「今度はルナマリア様もご一緒に参りましょう」

「えっ、私も?」


 まさか誘われるとは思っていなかったのか、本当に目を真ん丸くしていらっしゃるルナマリア様。

 にっこり微笑んで、もちろんですわ!と伝えるとふにゃっと柔らかく微笑まれるの。だって私達お友達ですもの、ね!


 それからクラブ見学の話になると、羨ましそうなのを隠すこともできないルナマリア様に矢継ぎ早な質問をされましたわ。


「皆様どちらのクラブに入るのか、もうお決まりになりましたの?」

「シルヴィア様はまだ迷っていると仰っていましたけれど、ナターシャ様は狩猟同好会に入るおつもりで、私は社交クラブに入ろうと思っていますわ」

「まぁ、友好が広がって楽しそうですわね。他に気になるクラブや会合はございました?」

「黒魔術に対する研究会ですとか、占いをなさっている導きの部屋ですとか、まだまだございますわ!もちろん、ルナマリア様とお茶会もしたいと思っていますのよ」

「それは嬉しいですわ!…できることなら私もクラブ活動に参加してみたいです」


 少し寂しそうな表情で力なく笑われるルナマリア様を下から覗き込み、ニヤリと笑ってみせるとパチパチと音が鳴りそうな程の瞬きをしてみえますわ。


「王妃教育がどのようなものかは存じ上げませんが、たまには息抜きがあった方が効率が上がると思いませんか?」


 え?と理解が及ばない顔をしてるルナマリア様にもう一声かける。


「もし一月に一度のお休みを勝ち取ることができたら…私がどちらのクラブにでも案内致しますわ!」

「私にそんなことができるでしょうか……。いえ、やってみせますわ!ペネロニース様、約束ですわよ!」

「ふふふ、私の誇りにかけて嘘はつきません」


 頬を桃色に染めて嬉しそうにしているルナマリア様を見ていたら、婚約者のアルフレッド王子殿下とフローラ嬢のあれこれは置いておこうと思いましたわ。

 ちょっと私の方でも探りを入れてみませんとね!


 それからは、王妃教育でどんなことをしているのかお話を聞いていたら、いつの間にかクラスの皆様がお見えになっていますわ。


 あっという間に時間が経っていたことに面白くなって、二人で顔を見合わせて微笑みました。水魔法をそっと解くと、ルナマリア様は読書に戻られたので、私も自分の作業に入りましょう。



 昨日はリアム君とコンタクトを取りましたが、あたくしの次なる捕食対象ターゲットは王子殿下の侍従、黒髪のジャン様ですわ。ガードの固そうな彼には早めに布石を敷いておかねばなりません。


 今日もまたあるであろう朝の茶番に備えて、小物の準備を……。




 ホームルーム開始の十分前、教室にふわふわとしたピンクブロードの少女が入ってくる。

 王子殿下を見つけた少女は荷物を持ったまま駆け寄る。


「アルフレッド様、おはようございます!」


 肩に荷物をかけたまま笑顔で頭を下げる少女。そして開いたままのカバンからドサドサと落ちてくる教科書とノート。


 周りにいる人達はその落ち着きの無さと騒がしさに戸惑っているが、王子殿下は落ちた教科書を拾い上げる。


「おはよう、フローラ。まったく、お前はドジだなぁ。ホラ」

「あ、ありがとうございます!…アルフレッド様は優しいのですね」


 複雑そうな顔で王子殿下のことを優しいと褒める少女。その不思議な表情に疑問を覚えた王子殿下は、手元にある教科書を見る。

 うっすらと踏みつけられたような跡のある薄汚れた教科書。


 目を見開いて顔を上げた王子殿下が何か言いかけたところで、横から人影が現れる。

 軽く結い上げた濡れ羽色の髪が朝の陽射しを受けて瑠璃色に輝く。

 女性の中では長身で細身の美少女がそこにいた。


 そう、あたくし登場です!


 スッとしゃがんで教科書とノートを拾って、埃を払いフローラ嬢に手渡す。


「もう間も無くディミトリ先生がお見えになりますわ。さ、席に参りましょう?」

「え?あ、ありがとうございます」


 想定外のことに対応できず渋々席に向かうフローラ嬢を見送ってから、今気付いたとばかりにしゃがんで白いシンプルなハンカチを拾い上げる。


「…ジャン様、ハンカチを落としになっていませんか?」

「え、いや…」


 いきなり声を掛けられたジャン様はびくりと肩を跳ね上げ、怯えた色を隠しながらこちらを伺う。


 彼にだけ見えるよう、指先でハンカチの間に挟んだ紙切れの端を覗かせる。

 力強く目を見つめながら手元を見ずに紙切れの端をハンカチの間へとしまい直す。


 一連の動きを見たジャン様は何かを察したようで、小声でありがとうと言ってハンカチを受け取る。


「それでは、私も席に戻りますわ。御機嫌よう」


 王子殿下に小さく礼をして席へと戻ると、ちょうどディミトリ先生が教室に入ってきた。


「おはよう。今日は静かであるな諸君。それではホームルームを始める」




 ミッションコンプリートですわぁ!

 誰にも怪しまれずに王子殿下の侍従とコンタクトを取る…中々のミッションでしたわね。


 それにしても、フローラ嬢は思いの外大胆な手段で来ますのね。

 場の空気を持っていかれそうになりましたけれども、土壇場での対応はまだ弱いようで一安心ですわ。



 さて、ディミトリ先生からの視線がビシビシと突き刺さるのが気にはなりますが、今日も楽しい学園生活を過ごして参りましょう!



三日置きの更新を予定しています。

ゆるゆると始めていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!


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