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第83話 合衆国は、とても困っています。

今度は、スタンピードが発生したみたいです。

(1月29日です。)

  アオちゃんは、自宅に戻ると白蛇の姿に戻った。男の子の姿では、マリアちゃんと一緒の部屋と言うわけにはいかないのだろう。それに小学生位の男の子が、学校にも行かずにブラブラするなどできないからだ。


  でも、アオちゃん、夕食を一緒に食べたいと言い始めた。いつも生の肉や卵では飽きたらしいのだ。


  父様達は、アオちゃんをこの家の守護神だと勝手に思い込んでいるので、特に疑問もなく、一緒に食事を始めた。未央ちゃんは、少し緊張しているみたいだった。


  まあ、アオちゃん、青い瞳に白い髪のイケメン美少年だし、見た感じは、完全男の子だから、しょうがないだろう。


  夜、遅くに、父様の携帯に電話がかかって来た。父様、深刻そうな顔だ。父様が、テレビを付けろと手で合図をしている。テレビをつけると臨時ニュースをやっていた。


  ニュースの内容は、案の定、魔物に関するものだった。ただし映像は、CNNのものだった。アメリカのネットワークのニュースだ。


  内容は悲惨だった。ニューヨークのセントラルパークで魔物が湧いて来て、一般市民が1000人以上犠牲になっているらしい。また、警察官や州兵が3千人以上投入されたが、ほぼ全滅しているとのことだった。


  セントラルパークは、ニューヨーク市のマンハッタンにあり、南北4キロメートル、東西0.8キロメートルの広大な公園だ。今、その公園は魔物達に占拠されているみたいだった。


  映像に写っているのは、ゴブリン、オークそれにオーガのようだが、ゴブリン達は兜と鎧で完全装備し、アイアンソードで武装しているみたいだ。低級なゴブリンではなくゴブリンソルジャーだ。最前線がゴブリンソルジャーと言うことは、かなり高レベルの魔物が背後にいると言うことだ。


  父様にかかって来た電話は、銀仮面の出動要請だった。安芸首相に、米国大統領からホットラインが入り、銀仮面に助けて貰えないかと頼まれたらしい。


  現在、米国ニューヨークでは、午前10時で、魔物の活動も低下しているみたいだそうだ。殆どの魔物は、夜行性だし、特にアンデッドは太陽光が嫌いなので、活動は夜限定となるらしい。


  しかし、昼だからと言って不用意に攻撃しようとしても、魔障シールドや遠距離からの魔法攻撃を撃破する術が無ければ、単に物理的被害が抑えられるに過ぎないし、湧き出ている巣窟の中に入り込むのは、自殺行為だ。


  結局、奴らが活動を開始する日没後に、殲滅を図ることにした。


  朝、6時に起きると、もう母様が起きて朝食の準備をしてくれていた。トーストとハムエッグだ。飲み物は勿論オレンジジュースにして貰った。


  食事が終わって、3階で着替えていると、アオちゃんも一緒に行くと言って来た。龍神の『聖なる力』が役に立つかもしれない。一緒に行くことにした。


  私は、銀仮面の衣装に着替え、ホッカイロをたっぷり貼り付けておいた。未央ちゃんが、首元からはみ出ているホッカイロを貼り直してくれた。


  ニューヨークのセントラルパークって行ったことがないけど、地図サイトから航空写真を見て、行きたい場所のイメージは作り終えている。ゲートを開き、『転移』した。


  転移先は、セントラルパーク南端高度1000m位のところだった。アオちゃんも普通に浮かんでいる。眼下には、鬱蒼としたセントラルパークの森が北に広がっている。ドローンが何機か飛んでいるが、随分高度が高い。後で知ったのだが、最初はもっと高度が低かったらしい。でも魔物の遠距離攻撃を浴びて墜落してしまったそうだ。


  早速、降下しようとしたがアオちゃんが降下するのを止めて来た。うん、どうするのだろう?


  アオちゃん、懐から竹笛を出して来た。黒の漆塗りの横笛だ。何処にしまっていたの?それを吹き始める。見る見る眼下に黒雲が広がって行く。雲の下では大雨が降っているみたい。雷鳴も聞こえる。そうか、雨に濡れた体で、雷を至近距離で浴びたら、完全に黒焦げだ。


  30分位吹き続けたろうか。空中と地面からの雷の直撃、魔障シールドでは防ぎ切れないだろう。


  アオちゃんが笛を吹くのをやめた。あっという間に雲が切れて行く。


  まだかなりの数の魔物がいるようだ。アオちゃんは、身体が青白く光っているが、息遣いが激しい。だいぶ消耗したみたいだ。私は、アオちゃんの手を握って『聖なる力』を流し続ける。あっという間に満タンになったようだ。


  もう少し下に降りてみる。ゴブリンソルジャーの群れが蠢いている。私は、群の中心にメタルワッシャーを打ち込んでいく。音速の約3倍の速度だ。空気との摩擦で、メタルワッシャーが真っ赤に光っている。地面に衝突すると、物理的な爆発が起きてしまう。あまりにもエネルギーが大きすぎるのだ。爆発の衝撃波で、ゴブリン達が10人単位で倒れて行く。


  土魔法で大きな穴を開ける。そこに、『念動』で倒れているゴブリンどもを、ひとまとめにして放り込む。その上から、土をかけてやる。いや、かけると言うのは可愛らしい。実際は、小山で穴に蓋をする。生き埋めどころか、圧死してしまうだろう。


  もう少し北に飛行してみる。下から雷撃が何発も撃たれてくる。でもシールドのために、全くの無駄打ちになっている。アオちゃんが、笛を一閃した。地面が青白く光る球形の光に包まれる。その球が縮んだと思ったら、大爆発を起こした。火球が、どんどん広がって行く。


  衝撃波で樹々がなぎ倒されて行く。夜空にキノコ雲が登って行った。直径500mは、何も無い虚無空間になってしまった。ゴブリンやオークどもは、素分子レベルに分解しただろう。


  もう少し北に行ってみると、魔物達が我先に森の中に逃げ込んでいる。きっと、この先に、あいつらが湧き出てくる穴があるのだろう。


  逃すものか。私は、高度50m位の高さからクルクルステッキを振り回す。真っ赤な火炎が次々と落とされて行く。下の殆どの魔物が焼け死んでいるようだ。


  魔法の炎は、物が燃焼している訳ではない。物理法則を無視して燃えているのだ。だから一定時間は燃え続ける。


  大気が暖かくなって来た。あ、失敗した。ホッカイロを貼り過ぎた。私は、周囲を見たところ、誰もいないようだったので、ホッカイロを背中とお腹から剥がしてポイした。


  炎が消えた。アオちゃんが、雨を降らして大地を冷やしている。300m位先に小さな丘があり、そのふもとに直径10m位の穴が開いている。中はきっとダンジョンになっているのだろう。


  今日は、ダンジョン攻略に来た訳ではないので、ダンジョンの中で爆発を起こしてやろうと思った瞬間、嫌な気がした。


  「マリア、こっち。」


  アオちゃんが聖なるシールドを張る。かなり分厚い。そこに闇の触手が何本も伸びて来た。この触手の感じ、魔障だ。と言うことは、闇の使徒、高位魔法使いにしてアンデッド、あいつはリッチだ。リッチが一人だとしたら、レブナントが数体いる筈だ。


  「来る。」


  アオちゃんが警告を発する。下を見ると、何かが接近して来ている。レブナントは飛べない筈だが。いや、飛んでいるのではない。ジャンプで飛び上がっているのだ。ここは高さ50mだ。なんて運動能力だ。でも少しおバカさん。単なるジャンプでは、方向変換なんか出来ないだろうに。


  本当におバカさんだったのは私達だった。レブナントは、私達のそばまで接近すると背中から蝙蝠のような翼を広げたのだ。彼らはレブナントの亜種だった。流石に羽ばたいて飛翔することは無理のようだが、滑空して方向変換をするぐらいは可能なようだ。


  そいつらは、私達の至近距離まで迫って来た。右手は魔障の剣を持っている。黒い霧に覆われていて、聖なるシールドを切り裂いてくる。不味い。このままでは、あの剣に切られてしまう。


  その時だった。アオちゃんの手から雷光がほとばしった。通常、落雷は1億ボルト以上の電圧だ。物凄い轟音と共に、迫ってくるレブナントを雷光で包み込んだ。魔障壁も何も、全て消滅してしまった。


  シールドが無かったら耳がおかしくなっていたろう。アオちゃんの青白い顔が、真っ青になっている。本当に無茶をする。でもありがとう。また魔力を充填してあげた。


  真下の小山の上を見る。黒いモヤモヤに包まれてあいつがいた。周囲には、オーガゾンビどもが防衛線を張っている。


  私は、元の世界の父様から貰ったショートソードを取り出す。聖なる力を目一杯纏わせる。


  私の周りには、30本位の5寸釘を出現させた。全てに炎属性を纏わせた。真っ赤になっている5寸釘を、周囲の魔物達に打ち込んでやる。


  魔物の体の中で、炎のエネルギーが爆発する。オーガもゾンビも原型を留めていない。肉片と、何か気持ちの悪いものになってしまった。


  ゆっくり降りて行く。リッチが、魔障弾を次々と撃ち込んでくる。しかし聖なるシールドを次々と重ねて貫通させないようにしている。シールドが間に合わずに飛んでくる魔障弾は、ショートソードで叩き切ってやった。


  徐々に高度を落として行く。アオちゃんも一緒だ。アオちゃんは、周囲に聖なる光を広げて行って、穢れを浄化している。ゾンビの破片は、蠢くのをやめてしまった。


  リッチは、自分の前に土の障壁を作り上げた。物理攻撃を防ぐつもりなのだろう。でも無駄だ。私の『斬撃』を防ぐには貧弱すぎる。山でさえ消し飛ぶ『斬撃』を放つ。土の壁は、ほぼ意味をなさず、リッチの身体を上下に分断した。


  しかし、上半身だけが浮遊している。切り口からは、何かが垂れ下がっている。ウエッ、キモい。


  リッチの上半身から、下半身が生えて来た。と言うことは、地面に転がっているリッチの下半身を見てみると、嫌な予感が的中した。上半身が生えて来ている。


  でも完全回復を待っている気はさらさら無かった。取り敢えず地面に降りて、リッチの下半身、いやもう肩口まで再生しているものを、厚さ1センチに輪切りにしてやる。


  アオちゃんが、1枚1枚、消去させている。下半身の料理は終わった。上空を見ると、リッチが回復し終わっていた。


  ドローン10数機が、周囲を飛び回っている。徐々に高度を落として来ていたのは知っていたが、今はそれどころではない。リッチに有効な攻撃手段を考えている。


  「マリア、考えるな。攻撃し続けろ。」


  アオちゃんが、指示してくれた。うん、それしかないだろう。リッチに近づく。分厚い魔障シールドが貼られた。もう考えない。魔障シールドの上から斬りつける。聖なる力を込めたヒヒイロカネのショートソードだ。


  魔障シールドがバターのように切り裂かれて行く。リッチの首と両手と両足を斬り落とす。切り離された首が、フワフワと浮かんでいる。首から下を再生しようとしているのだろう。


  アオちゃんが、聖なる光で首をすっぽり包んでしまった。聖なる力が、魔の力を無効化しているようだ。切り落とした手足は、サンダーで中から黒こげにしている。


  動体のみになったリッチは、モニョモニョと首を再生しようとしていたが、形になる前に私に切り落とされ、アオちゃんに消滅させられている。


  何回か繰り返すうちに再生しなくなった。そこで、初めて胴体の心臓部分を切り開き、魔石を取り出した。禍々しいほどの深紅の魔石だった。魔石には殆ど魔力が残っていなかったが、アオちゃんが浄化していた。


  これで戦いは終わった。筈だったが、まだ終わりは来ていなかった。

アオちゃんが龍神であることを知らなければ、可愛い男の子にしか見えません。

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