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視点が二転三転してるのでお気を付けください。

 森を抜けた先。街道を一台の馬車が走る。

 荷台には木箱やツボなどと一緒に、ひとりの少女が乗っていた。

 頭には皮袋を被され、手足は縄で縛られていた。


「(シュガー…)」


 これから楽しいことがたくさん起きると思っていたのに。

 どうしてこんなことになってしまったんだろう。


 昨日の夜、シュガーと別れて、お風呂に入り、ベッドで眠った。

 もうすぐ夜明けだろう時に、目が覚め、いきなり目の前に人がいた。

 びっくりして声を出そうとしたけど、お腹を殴られて頭に何かを被せられた。

 そのままどこかに運ばれて、馬車に乗せられて、また運ばれているみたい。

 今はたぶん、森を出たんだと思う。

 森を出て、初めて見る景色は、シュガーと一緒に見たかった。




 シュガーに初めて会った日、レティは森で一人で泣いていた。

 レティは何もしていない。なのに、みんなが冷たい。今まで仲良くしていた子もいた。でも、あの日以来、全て変わってしまった。


 あの日、お母さんが死んだ。病気だった。元気な姿をあんまり見たことなかったけど、死んじゃうとは思ってなかった。だからすごく悲しくて、その日はたくさん泣いて、すぐに眠ってしまった。

 そして、レティが眠っている間に、もう全て終わっていた。お父さんはいなかった。村の大事な物を盗んでいなくなったと村長に聞かされた。

 村はひどい状態だった。焼けた跡がたくさんあった。火傷をした人もいた。お父さんがやったんだって言われた。この村で火属性魔法が使えたのはお父さんだけだった。でも、お父さんがやったなんて思いたくなかった。

 その日から、みんながレティに冷たくなった。レティに何も言ってこないけど、すごく睨んでくる人もいた。レティはお父さんに似ているって言われたことがあったから、そのせいだと思う。

 仲が良かった子からは、お母さんが火傷をしたのはレティのお父さんのせいだって言われた。

 その日から話しかけては来なくなった。レティも誰にも話しかけなくなった。


 あれから1年。シュガーに会ったとき、聖獣だと思った。真っ白な毛並みが、すごくきれいだった。喋ったとき、すごく驚いたけど、きれいって言われてうれしかった。

 優しい方だと思った。聖獣様にこんなこと言うべきじゃないだろうとは思ったけど、1年間ずっとさみしかったから、どうしても話し相手が、友達が欲しかった。だから、聖獣様のお願いを聞くから、レティのお願いも聞いてほしかった。

 聖獣様はお願いを聞いてくれた。もう友達だって言ってくれた。うれしかった。

 呼ぶ名前がほしくてシュガーって名前をつけた。喜んで名乗ってくれた。うれしくてたくさんおしゃべりをした。

 その後、魔物だって聞かされて驚いたけど、シュガーはもうレティにとって大事な友達だったから、別に構わなかった。


 シュガーに会って一年経った。レティの話を聞いてもきらわなかった。レティを良い子って言ってくれた。

 こんな村から出て、一緒に旅に出ようって言ってくれた。すごくうれしかった。

 お父さんに会って話がしたいとは思ってる。でも、その前にイヤなことを言ってしまいそうなの。

 レティがお父さんにイヤなことを言っても、シュガーはレティを良い子って言ってくれるかな。



 彼女は怒っているかな。きっと心配をかけちゃったよね。

 レティの大切な友達は、とっても過保護なのだ。

 彼女を信じてる。絶対に助けてくれるはず。だからか、不思議とこわくない。

 むしろ彼女がやりすぎてしまわないかが心配。

 ケガだけはしないでほしいな。







 足跡を追う、匂いを追う、まだ残っているそれらが、レティの居場所を辿る手がかりだ。

 まだそんなに遠くない。急げば間に合う。

 人前に大きい姿を現してしまったが、もうここには用は無い。別に構わないだろう。


「ま、魔物だ!」

「武器を! 魔法を使え!」


 うるさい。こいつらに構っている暇はない。早く追わないと。

 こっちだ。


「村から出せ! 深追いするな!」


 レティが辛い目に遭ってるのに、コイツらはなんなんだ。

 殺してやりたい。


「死にたくなければ失せろ」


 怒りのあまり冷たい声が出た。まあ、別にいいだろう。

 声を聞いてエルフ達の動きが止まる。


「喋った…せ、聖獣か?」


 なにか言っているが、どうでもいい。


「せ、聖獣様!」


 年老いたエルフが声をかけてくる。


「聖獣様! なぜそのようにお怒りに…!?」


 エルフの中では一番身なりが良い。こいつは村長か?


「一度だけ聞く」

「え?」

「レティシアをどこにやった」

「レ、レティシアですか? も、もしやあの小娘が何か粗相を…」


 ああ、殺したい。


「早く答えろ」

「も、申し訳ありません! あの小娘はもう、売ってしまいました」

「売った…」


 なんで


「なぜだ」

「あ、あの者の父はこの村の秘宝を盗んだのです。それによってどれだけの損害を受けたことか…」

「それを子に償わせると?」

「そ、それは」


 こいつらは、卑しくて、浅ましいだけのクズどもだ。

 なんでこんなやつらのせいで、あの子がつらい思いをしなければいけない。


「親の罪を子に背負わせるな!!!」


 力が溢れる。







「エルフってのはもっと一族の結束的なものがあるんだと思ってたが、そうでもないんだな」

「そうみたいですね。まさか子供を売るとは」

「とんだ悪ガキなのかもな」


 昨日の昼ごろに、子供を売る話をエルフの男からされた。

 この国ではまだまだ奴隷制度は健在だ。

 見目もよく、身寄りはいない、その上子供だ、かなり高く売れるだろう。しかもエルフとなりゃいくらになるか想像もつかねえ。こんなに上手い話、飛びつかないわけがない。




 夜中に連れ出すのは面倒だったが、特に問題なく運び出せた。

 楽な仕事だ。


「せめていい飼い主に会えればいいな」

「攫った人のセリフじゃないっすね」

「違いねえ」



 もう少しで街が見えてくるだろう。その前に子供が見えないようにキチンと隠しとくか。


「一旦止めるぞ。子供を隠してこい」

「はい」


 隣に座ってた若造を降ろす。まあ、そんなに詳しく荷台を見られたりしない。一見して見えなければいい。


「お! 親方!!」

「なんだ、どうした!」


 若造が慌てて御者台に戻ってきた。もしかして子供がいなくなったのか。


「デカイ魔物がこっちに向かってきてます!!」

「は!?」


 後ろを見ると、真っ白いキツネのような魔物がものすごい速さで向かってきている。

 なんだありゃあ!


「出すぞ!」


 馬を走らせようとした瞬間、目の前に土の壁が現れた。


「な、なんだこりゃあ! 魔法か!?」

「う、うわああ!!」


 真っ白な何かが横を通ったと思ったら、土の壁が消え、目の前に魔物が現れた。







「あれか…!」


 馬車を遠くに見つけた。あれからレティの匂いがする。

 逃がさない。全力で駆ける。

 すると、馬車が遠くで止まった。チャンスだ。

 御者に乗ってた男が降りてきた。こっちを見て、慌てて戻って行った。馬車を動かされてはたまらない。


「アースウォール」


 レベル3の土魔法だ。土の壁を出せる。この距離なら小さいけど届く。

 馬車はそう簡単に方向転換できない。足止めには十分だ。



 追いついた。




「動くな。動いたら殺す」


 御者に乗っている二人に言う。本当は今すぐにでも殺したいが、レティが先だ。


「しゃ、喋った…」


 老けている方の男がつぶやく。

 若い方は今にも失神しそうだ。


「降りろ」


 途中で馬車を動かされたら困る。コイツらには降りててもらおう。


「わ、わかった」


 老けてる方が若造を降ろし、自分も降りる。そう遠くない位置で座り込んだ。


「そこにいろ」


 頷いたのを見て、荷台の方に回る。

 覗き込むと、頭に袋を被せられ、手足を縛られている子供がいた。

 怒りで目の前が真っ赤になりそうだ。

 今の姿では解くのが難しいが、できなくはないだろう。


「レティちょっと動かないでね」


 聞こえたのか、もぞもぞ動いていたレティの動きが止まる。

 爪で丁寧に縄を切る。最後に袋を咥えて取る。


「シュガー!」

「レティ…!」


 レティが抱き着いてくる。元気そうだ。良かった。


「怪我はない?」

「んー平気。こすったくらい」

「む…『ヒール』」


 光属性のレベル2は回復魔法だ。かすり傷くらいなら綺麗に治る。


「ありがとうシュガー」

「本当に良かった…! ごめんなさい遅くなって…怖かったでしょう」

「だいじょうぶ。シュガーなら絶対来てくれるって信じてたし」

「当り前よ!」


 頭でレティをグリグリグリグリする。足らないくらいだ。


「これからはもう離れないわ」

「うん。レティも気を付けるね」




お金の流れとかどうなってんのかねこれ。

たぶんあれです。後払いとかそういうのです。

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