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52 魔物の檻

「あーいたいた。探しちまったよ」

「遅かったな。せっかく席取っといたのによ」

「こんだけ人がいるんだから探すのに手間取っちまっても仕方ないだろ」


 すぐ近くの席で男性二人が会話をしている。どうやら待ち合わせをしていたようだが、相手が見つからずに探し回っていたらしい。

 まあ、この世界には携帯電話なんて便利なものは無いものね。待ち合わせ一つするだけでも大変よね。遠くの人と会話できる魔道具とかないのかしら。

 テイマーの都とか呼ばれている国があるんだし、魔道具の国とかないのかしら。在るなら行ってみたいわね。便利なものとかありそう。


「ここに来るまでによ、すごいもん見たぜ」


 そんなことを思っていたら、後からきたその男性が興奮を隠せない様子で話し出す。


「なんだよ?」

「大型の従魔が運ばれて来てたんだよ、ワイバーンだぜ! いやーデカかった!」


 どうやらこの施設内にワイバーンが運ばれてきたようだ。コンテストに参加する魔物で大型のものは予め施設内に運び込まれるらしい。し、知らなかったわ。でも当然か。大型の従魔は街に入る時に檻に入れられるんだし。


「ワイバーンなら去年も見ただろ。このコンテストの常連だし」

「そうだけど違うんだって! なんか去年見たワイバーンとちょっと違ったんだよ」


 ちょっと違った? ……もしかして。


「違うって何がだよ」

「なんていうか、大きさが普通のより大きかった気がするし、色や形も少し違った気がするんだよ。まあ、そんなに近くで見てないからハッキリとはわかんねーけど」


 これは……もしかして、そのワイバーンはユニーク個体なのでは? だとしたら朗報だわ。直接確認したいわね。


「レティ、今の聞こえた?」

「うん。行ってみよっか」


 レティも同じ考えに辿り着いたようで、意識はもう目の前のコンテストからワイバーンへと移ったようだ。

 早速わたしたちはその従魔がいるという場所へと向かった。




「うーん。当然といえば当然なんだけどね」

「関係者以外入れない……」


 その例の場所が分からなかったので、近くの施設関係者の人に尋ねてみたところ、関係者以外は入れないと言われたのだ。どうやらレティを好奇心旺盛な子供だと思ったようで、場所は教えてもらえたけれど、優しく諭された。

 とりあえずその教えてもらった場所まで来てみたのだけれど、当然のように見張りが立っていた。

 大型の檻が入れるように、場所は施設の外近く、扉はかなり大きい。その前に見張りが四人立っていた。


「うーん。わたしが大型の魔物としてあそこに搬入されれば堂々と見れるかしら」

「それだとシュガーはコンテストが終わるまであそこから出られないよ」


 それはダメとわたしを抱きしめるレティ。確かに今後身動きが取れなくなるのは何かあった時に困るし、変化のスキルで逃げだしても探し回られたらもっと厄介だ。


「どうしよっか」

「あ、待って、何か話してる」


 見張りの一人が紙をペラリとめくりながら近くの見張りと会話している。


「次の搬入はもうすぐか?」

「ああ、もう来るだろ」


 どうやら新たに運ばれてくる檻がもうすぐ来るらしい。あ、そうだ!


「レティレティ、作戦を考えたわ」

「どんなの?」


 わたしは考えた作戦をレティに耳打ちする。といっても、大したものではないので、作戦と呼べるものでもない。


「ああ、つまり扉が開いたら走って滑り込むんだね」

「ええまあ、それぐらいしかないし」


 そう、単純に滑り込むだけである。小型化したわたしが走り出し、その後ろをレティが追う。そうすればもう逃げ出した従魔を追う子供にしか見えない。単純だけど、まあたぶん大丈夫でしょう。


「それじゃあ扉が開いたら行くわよ」

「うん」




 しばらくすると檻が運ばれて来る。中には大きな獣系の魔物が入っている。でも顔は人っぽい感じ。強そうだし、なんだろうあれ。


「あれがマンティコアか。初めて見たな」

「コンテストでも見たことないな」


 あれがマンティコア……何部門に出るんだろう。総合部門じゃないといいな……。

 そのまま運ばれてきたマンティコアは扉の前で一旦止まる。従魔証の確認をしているようだ。マンティコアは檻の中で大人しくしている。あれ、暴れたりしないのかしら。


「マンティコアだな。よし扉を開けろ」


 ギイイと大きな音を立てて扉が開いていく。よし、今!


 見張りから見えない建物の死角から、まだ開き切っていない扉に向かって走り出す。しばらくしてからレティも飛び出してくる。

 檻の中で大人しくしていたマンティコアがこちらを見る。警戒はしているようだが、暴れる素振りは無いので一安心。だがマンティコアがこちらを見たせいで、見張りもわたしに気が付いてしまった。

 気づかれたことに気づいたレティが叫ぶ。


「待って!」


 静止するよう叫ぶが、止まらず走り続ける。名前を呼ばないのは念のためだ。一応コンテストに出るし。

 見張りも状況を理解したようで、わたしを捕まえようとする。ここでこの見張り達をすり抜けられなければこの作戦は失敗に終わる。全力で走り抜ける!


「この! あ!」

「待て!」


 子狐でしかない今のわたしに武器を向けたりはせず、素手で捕まえようとした見張りの横をすり抜け、掻い潜り、開かれた扉の中に入る。



 よし――!!?



 その瞬間、たくさんの魔物たちの殺気を浴びた。


「うぐ……」


 思わずうめき声が出てしまうほど、強い魔物たちの視線を感じる。しかし、止まるわけにはいかない。そのまま走り続け、物陰に隠れる。こうすれば、レティが中でゆっくり探し物をできる。


 そのまま待っていると、レティと見張りの数人が中に入って来たようだ。レティは大丈夫だろうか……。


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