40 アイアンゴーレムⅡ
「はあ~…助かった」
「お疲れ様シュガー」
なんとか雪崩に飲まれずに逃げ切ることができた。山の方を見ると、今でも雪崩で雪が煙のように舞い上がっている。
あんなのから逃げていたのね…。
「しばらく無理ね」
「うん。お昼にしよう」
そういえばもうお昼も大分過ぎている。動いてお腹減ってるし、食べましょう。
もうしばらくは山に入れそうもないし。
「あの中からアイアンゴーレムを探すのかぁ…」
「ちゃんと死んでるかな?」
「掘り起こしたら動き出したとか、シャレにならない」
どうか死んでますように。そして魔石が無事でありますように。
お昼を食べ終えたくらいに漸く、雪崩も落ち着いたようだ。
「そろそろ大丈夫そうね。じゃあ、登りましょう」
「うん」
もうゆっくり登る必要はないので、覚えているおおよその場所まで駆け上がった。寄ってきた魔物は、死の威圧でビビらせておく。
本当に便利ねこの魔法。
「この辺だっけ?」
記憶を頼りに登ってきたけれど、辺り一面雪、雪、雪…で代り映えが無くて困る。
「うーん…あ、これアースウォールの残骸かな…」
それっぽい土壁の破片を見つけた。この辺りを掘り返せば見つかるかな?
「手あたり次第に掘るしかないわね」
「うん」
急がないと日が暮れそうね。
そしてふたりで手分けして、ひたすら穴掘りをした。
しかし、掘っても掘っても出てくるのは雪ばかりで、先ほど嫌というほど見つめていた鈍い銀色の姿は見えてこない。
そう簡単に見つかるとは思ってなかったけど、まさかこれほどとは。
そういえば、キツネは土の中に食べ物を保管する習性があるらしい。穴掘りは得意ということかな。まあ、嫌いじゃないなって、自分でも思うけど。
それに、キツネには第六感…のようなものがあって、それを使って雪の中とかにいるネズミなどの獲物を狩るんだって。
わたしにもそれがあれば、埋まっているアイアンゴーレムをすぐに見つけられるんじゃない?
第六感ってなんだろう…直感みたいなやつかな。よし。物は試し、やってみよう。
うーん…この辺かな?
確かこうやって…頭から突っ込む!
ズボッ
んんんんんんん~…。あ! なんか硬いものがある! 良く見えないけど!
「ぶはぁ!」
これ、頭抜くのが大変だわ。
「シュガー何してるの」
レティが一連の流れを見ていたらしく、呆れたように聞いてくる。
「いやいやいや、遊んでたわけじゃないわよ。それよりこの下に硬そうなのがあったわ」
「ホント?」
どっちの『ホント?』なんだろうか。いや、レティはきっとわたしを信じてくれている。遊んでない、遊んでないわ!
なんて思いながら穴掘りを続けていくと。
ガキン
と、なにか硬いものに爪がぶつかった。
「あった?」
「あったあった」
アイアンゴーレムを発見した。
アイアンゴーレムは大きいので、雪を全部取り除くのに苦労したけど、漸く全貌が見えた。
「頭は吹き飛んだみたいねぇ」
どうやら爆弾はちゃんと効果があったようで、アイアンゴーレムは動く気配がない。
「でも、魔石がある胸の部分は平気そう」
胸の部分は急所だからか分厚くできているらしく、魔石がある辺りは無事みたいだ。まあ、魔石自体の確認はできてないけど。
腕とかも損傷がひどい。ただ、雪に埋もれて隠れていた足の部分は傷が少ないみたいだ。
これ鉄だし、それなりに売れそうね。
…あ!
「今思ったけど、魔石取り出す方法なくない…?」
「…硬いもんね。解体できないね」
さすがにアイテム袋に入らないかも。
これ、このまま持って帰るの…?
結局、アイテム袋に入らず。
仕方がないので、ゴーレムを縄で縛り、縄の端を咥えて引きずって帰ることに。
「ほぉほぉい」
「頑張って」
レティはわたしに乗らずに歩いている。
アイアンゴーレムが重すぎるので、少しでも身軽にするためだ。
ああ、王都までどれくらいかかるだろう…。これからはもう少し先を見通して準備しないとダメね…。
どうにかこうにか、昨日一夜を過ごした洞窟まで歩いてきた。
もうすっかり日が暮れてしまったので、今日もここで一晩過ごすことにした。
「はあ~」
「ごめんねシュガー」
「いいのよ。仕方ないわ」
ブーメランの素材だもの。お金にもなるだろうし。持ち帰らないなんて選択肢はない。
ただ、このペースだとだいぶ時間がかかる。
「アイテム袋がもう少し大きければなあ」
「さすがにアイアンゴーレムは入らないね」
さすがに重量オーバーだったようで、入らなかったのだ。アイテム袋って一体どんな原理でできているんだろう。
バラバラにでもできれば、また違ったんだろうけど。
せめて半分くらいにできたらなあ。
まあ、ないものねだりしてもね。軽くなるわけじゃないし。
「明日も頑張るわ。レティは魔物をよろしくね」
「うん。がんばろ」
筋トレみたいだなーとか思いながら眠りについた。
アイアンゴーレムを引きずりながら下山をしている途中、ひょんなことで問題が解決した。
「闇魔法のレベルが上がった!」
道中ほぼ常時発動状態だったせいか、思ったよりも早くレベル2になった。しかも、覚えたものがかなり便利である。
「影収納だって」
「なにそれ?」
「影の中に物を入れられるらしいわ。影より大きなものは入れられないけど、重さは関係ないって!」
「! アイアンゴーレム入る?」
「早速試しましょう」
自分の影にアイアンゴーレムを収め…ようとして入らない!
一瞬絶望するかと思ったけど、これ、もしかしてサイズ変更してもいけるのでは?
自分のサイズを大きくしてみる。影も大きくなる。そこにアイアンゴーレムを収める。
影収納を使うと、ズブズブとアイアンゴーレムが影に沈んでいった。
「入った!」
「やった!」
サイズ変更する。問題なし。身体を小さくした状態で取り出す。問題なし。
つまり、取り出す際は影の大きさは関係ないのね。素直に助かる。
身体が軽い!!
「解放された…」
「お疲れさまシュガー」
労ってくれたレティを背中に乗せ、上機嫌で山を下りる。
こうして、わたし達は王都へ問題なく帰ることができたのだった。
実際には第六感というよりも、磁場などを感じ取っているのではないかと言われているそうです。
シュガーのはたぶん第六感…というより、勘でしょうね。




