39 アイアンゴーレム
昨夜は猛吹雪だったけれど、翌朝は雲一つ無い快晴になっていた。
朝食を食べ終え、アイアンゴーレムを探す気満々なレティに声をかける。
「アイアンゴーレム見つかるといいわね」
「うん」
「でも、どうしても見つからなければ諦めて帰るからね」
「むー…わかった」
レティはしぶしぶといった感じだけど、理解してくれたようだ。
快晴とはいえ寒いことに変わりはないし、長居して体調を崩してしまっては心配だ。今日探し回って見つからなければ諦めるしかない。
それにしても、そんなにブーメラン欲しいのかしら。わからなくないけど。
洞窟を出て、ゴーレムを探しながら歩き回る。
昨夜の吹雪でさらに雪が積もったようで、足がずぶずぶと沈んでいく。
「レティだったら半分くらい埋もれそうね」
「シュガー平気?」
「歩きづらいけど、これくらいなんともないわ」
動きの速い魔物とかが出たら困りそうだけど。でも、走れない程でもないかな。
ゴォォォォォ…
しばらく歩き回り、雑魚敵にも飽きてきた頃、奇妙な音が聞こえてきた。
「何か聞こえるわね」
「何?」
「うーん」
風みたいな…? 雪崩とかではなさそう。
「こっちね。もしかしたらブレスとか吐く魔物かもしれないから気を付けて」
「うん」
慎重に音がする方へ移動する。
この辺りにブレス吐くような魔物なんていたかしら…。ああでもはぐれオーガとかいるんだから、どんなところに何がいてもおかしくないわね。うん。
ともかく、警戒はしておかないとね。
「何あれ」
「なんとも厄介な」
音の発生源にたどり着くと、なんとお目当てのゴーレムを見つけた。
アイアンゴーレムだ。しかも氷属性が付いてる。
「ゴーレムが手から雪出してる」
「意味わかんないし、あれじゃ近づけないじゃない」
ゴーレムの両手から、ものすごい勢いでブリザードが出てる。さっきの音はあれね。
ゴーレムは遠距離攻撃をしてこないから火力が低くてもなんとかなるだろうって思ってたのに。
わたしたちって結構見通しが甘いわよね。
「どうしましょう」
「攻撃」
「強気ねぇ」
レティはあのゴーレムを討伐する気のようだ。まあ、あれを目当てにここまで来たんだから、何もせずに帰るのはね。
それに。
「あれ、動けないのかしら」
「半分埋まってる」
アイアンゴーレムはどこから来たのか、体が半分雪に埋もれている。無理矢理動くことはできそうだけど、動きは鈍そうだ。これならなんとかなるかも?
それでもあのブリザードはかなり厄介だけど。
「あれ使う?」
「あれは本当にどうしようもなくなったとき用の最終手段だから」
「じゃあ攻撃」
「そうね、地道に削りましょう」
レティに風魔法を付与してもらい、ゴーレムにテイルナイフを思いっきり放つ。
打撃と斬撃の嵐だ。多少は効いただろうか。わたしの尻尾は地味に痛いけど。
「あんまり…?」
多少傷はついてるけど、致命傷には程遠い。さすが鉄製。
ゴーレムはわたし達を敵と判断したのか、雪をかき分けながらじりじりとこちらに向かって来ている。ゴーレムの手からブリザードが出ているので、一定の距離を保つ。手からだと範囲が広いから結構厄介ね。
「ハント・ウィンド、エアショット!」
レティがエアショットで打ち出したナイフが、かなりの速度でアイアンゴーレムに飛んでいく。
キィン
と金属音がしたが、やはりあまりダメージはなさそうだ。はじかれたナイフは雪に埋もれたけど、あれ後で探せるかな。
「ねえ、鑑定で何か見えたりしないの?」
「うーん…特にこれといって…HPが少しだけ減ってる」
「一応効いてはいるのね」
長くなりそうね。
「未だに倒せない」
「数時間経った気がする」
実際そんなに経ったのかはわからないけど、それでも結構な長期戦になっている。
ゴーレムの鉄の体には無数に傷がついているけど、深く傷をつけられたのは数える程度だ。
こちらは一定の距離を保ちながら遠距離攻撃を繰り返していたので、怪我らしい怪我はしていない。精神的には大分疲れたけれど。
レティの鑑定によれば結構HPは減っているらしいんだけどね。
あの手からブリザードはいつまで出続けるの? 魔力無くならないの?
ゴーレム怖い。
「あれ使っちゃおうか…いや、でも危険だし…効くかもわかんないし、その後大変だし…」
「シュガーならきっと平気」
「むぅぅぅ…わかった。キリがないものね。使いましょう。でも、本当に気を付けてね」
そう言ってアイテム袋から取り出したのは…
なんと手投げ爆弾である。
一気にファンタジーから遠ざかった気がする。でも、対空戦術とかに大型の爆弾とか使われてるんだって。
雪山に行くのが決定したときに、火力になるものを探して武器屋にいったところ、これを発見した。安くはなかったので、これ一つしかない。
こういう、魔法だけに頼らない姿勢は素晴らしいけどね。夢はぶち壊しよ。
使えば倒せる…かもしれない。魔石ごと吹き飛ばないことを祈るばかりである。ま、まあ、アイアンゴーレムって魔力の効果か知らないけど、普通の鉄より硬いらしいし…。この爆弾もそんなに威力高いわけでもないし…イケルイケル。
「じゃあ投げるね」
「準備できてるわ」
いつでも逃げられるように、準備万端だ。
「じゃあいくわよ、シャイニングアロー」
レベル3の光の矢で、ゴーレムの意識を逸らす。凍らされては困るからね。
そしてわたしの背にいるレティから爆弾が投げられる。
「えいっ」
可愛い掛け声とは裏腹に、風魔法が付与されて飛距離が伸びている爆弾がゴーレムの頭上辺りに飛んでいく。レティが投げたのを確認して、アイアンゴーレムから距離をとる。正しくは爆弾から。
次の瞬間、大きな爆発が起きた。
ドォォン!!
音がデカくて耳が痛い。でも、背中にレティの存在があるのはわかるから、それさえわかれば大丈夫だ。
ドドドドド…
ああ、予想通りの展開ですね。
「アースウォール」
「ウィンド・エレメント」
ゴーレムの場所が分からなくなったら困る。せめてもの目印だ。そしてレティが魔法を唱えてくれる。
「ちゃんと捕まっててねっと!」
サイズを最大まで大きくしながら、雪崩から逃げるために一気に山を駆け下りた。
行きは歩いて登ったから、平地まで遠いわけじゃない。このサイズで走ればすぐに降りられる。
ちなみに、元は2~3メートルくらいの大きさだったけど、サイズ変更すると8~9メートルくらいにはなる。自分で言うのもなんだけど、こんな魔物が目の前にいたら怖すぎる。
それにしても雪のせいで走りにくい。それに雪崩が結構速いから、だんだん追い詰められていく。
レティが風魔法を付与してくれたとはいえ、安全地帯にたどり着くまで飲まれずに済むだろうか。
いや、自分たちで起こした雪崩に巻き込まれるなんてヘマはしたくない!
「うぉおおおりゃあああ!!!」
掛け声と共に、全力で大ジャンプをして雪崩を無事に回避した。
今作一話目に出てくる転生の神と、前作の番外編に説明だけ出てくる転生の神は同じ神っていう裏設定があったりします。




