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3 お友達ができました

本日二度目の投稿です。

前話がまだの方はそちらからどうぞ。

 

 いつものように狩り兼、森の探索をしていたら、森の切れ目というか、少しずつ木が少なくなってきている場所があった。

 おそらく、ここから先へ行くと森を抜けることができるんじゃないかと思う。

 ちょっと興味あるけど、悩むなあ。

 また強いやつがいたら嫌だし、人の住む村があっても困る。

 今のわたしは魔物だから、人間と出会い頭に攻撃とかされる可能性もあるわけで。

 身体は少しずつ大きくなってきているみたいだけど、それでも強くなったかと言われると、ちょっとね。

 でも、人間を見てみたい。この世界にもちゃんといるんだよね?




 少しずつ、少しずつ、森の出口らしき方へ歩いていく。

 周囲への警戒と、身を隠すのを忘れない。

 野生での生活は、何が命に関わるかわからないからね。

 何か見つかるかな。



「ぐすっ」


 む、音がした。

 音っていうか、鼻をすする音みたいな。

 誰かいるのかな。


 ゆっくりこっそり音がする方へ歩く。

 すると、そこには小さな女の子がいた。

 肩より長い薄緑色の髪と、瞳から流れる涙が、陽の光に当たってキラキラと輝いているようだった。


 なんて綺麗なんだろう。


 わたしは身を隠すのも忘れて見入ってしまった。

 そしたら女の子と目が合った。


「あ」


 どっちが発した声だったか。

 その女の子は、わたしを見て


「きれい…」


 と言ってくれた。

 だからわたしは


「あなたの方が綺麗よ」


 と返した。何も考えずにさっき思った言葉を口に出した。


「しゃ、しゃべった!!」


 だから、女の子がビックリしてひっくり返ってしまったのは、素直にわたしが悪いと思う。





「大丈夫? ごめんねー」

「うん。だいじょうぶ」


 ひっくり返った女の子に近寄って、落ち着かせるのに苦労した。

 敵意が無いことに関してはあっさり信じてくれて、却って心配になったけど。

 前世でいえばまだ小学生ってところかな。一人で森にいて大丈夫なのかな。

 落ち着いた女の子とお話をする。


「良かった。一人でこんなところでどうしたの?」


 そう聞くと、女の子は俯いて黙ってしまった。


「ごめんなさい。言いたくないならいいの。ねえ、あなたのお名前を教えてほしいな」

「レティシア! レティでいいよ」

「レティ! いい名前ね。ねえレティ。あなたは人間なの?」

「ううん。レティはエルフだよ」


 エルフか…よく見たら耳が長いわ。もしかしてこの先にエルフの村か何かあるのかな。


「この先に村かなにかあるの?」

「うん。エルフがいっぱいいるよ。ねえ、キツネさんのお名前は?」

「ごめんなさい。わたしには名前はないの」

「え! そうなの!?」

「そうなの。ねえレティ。わたし、この森から出たことないの。お外のこといろいろ教えてくれないかな」

「でもレティも村から出たことないよ。それでもいいの?」

「レティの知ってることだけでいいよ」


 そう言うと、レティは悩んだように唸りだした。何か問題があったかな。


「じゃあね、じゃあね、その…キツネさんが、お、お友達になってくれたら…いいよ」


 何この子可愛すぎるでしょ。


「なる! いえ、もうわたしたちは友達よ!」

「ほんと!? やったあ!」


 すごく嬉しそう。可愛い。


「そうだ! キツネさんに名前つけてあげる!」

「え? いいの?」

「うん! えっとねー」


 嬉しいけど、変な名前じゃありませんように!


「シュガー!」

「シュガー…」

「遠い国ではおさとうのことをシュガーっていうんだって。キツネさん、おさとうみたいに真っ白だから。どうかな」


 キラキラした表情でこっちを見てくる。可愛い!


「いい名前ね! 今からわたしはシュガーね」

「えへへ。よろしくねシュガー!」



 それからわたしたちはたくさんお話しをした。

 ここはチェルテラという国にある大きな森の中で、ルテラの森というらしい。

 この大きな森の一部に、エルフは昔から住んでいるそうだ。

 この森は大きく三つに分かれていて、端にあるのがエルフが住む森、真ん中が動物や弱い魔物が住む森で、奥に行くと強力な魔物がいる森になる。

 あの小川の向こうがそうなんだろうな。

 魔物には魔石というものが体内にあるらしい。

 わたしが狩ったオオカミはウルフという魔物だったようだ。するとあの石は魔石か。なにかに使えるかな。

 他にも、エルフ以外の種族が森の外にはいたり、この世界には魔法があったりなど、たくさんお話をしてくれた。


 そんな話をしていたら、日が傾き、夕暮れ時になってしまった。


「もう暗くなってきちゃうね。そろそろお家に帰らないと危ないわよ」

「ん…帰りたくないな…」


 可愛いこと言う。

 ノータッチ。ノータッチですよわたし。


「また明日会いましょう」

「うん…ぜったいだよ?」

「もちろん。それと、わたしのことは誰にも話しちゃダメよ?」

「うん。わかった」


 そう言ってレティは村へと帰って行った。

 わたしもねぐらに帰ることにした。




 まさかヒトと会話ができるなんて思わなかったな。

 魔物だからやっぱり少し諦めていたんだけど、前世は人間だったもん。会話ができるならしたい。

 ちなみに魔物と会話するという選択肢はない。魔物は腹を満たす獲物である。獲物と会話なんてしたら決意が鈍る。

 明日も会えるといいな。


 次の日。ひとまず狩りに出てお腹を満たす。小川に向かい水を飲む。そんないつも通りの日課をこなしてから、昨日レティと出会った場所へと向かう。


 レティのことは信用しているが、ヒトを簡単に信用してはいけない。だから、もしものことを考えて、ちゃんと身を隠しながら進む。

 レティがわたしのことを誰かに話し、聞いた誰かがわたしを危険と判断する可能性だってありえない話じゃないからね。


 でも、それは杞憂のようだ。

 昨日の場所に、レティが待っていた。周りに誰かがいる気配はしない。

 わたしは安心してレティに声をかけた。


「レティ」

「シュガー!」


 レティが懸命にこちらに走ってくる。わたしも近寄りながら、レティを受け止める。


「もふもふ…」

「くすぐったい」


 レティはぎゅーって抱き着いてわたしをもふもふしている。

 まあ、わたしが反対の立場だったら同じことをしているだろうから、別に止めたりしない。


「レティ。今日は魔法について聞きたいんだけど、いいかしら」

「うん。いいよ」


 魔法。なんて魅力的な響きなんだろう。

 異世界に来たら使ってみたい能力ナンバーワンですよ。わたしの中で。


「マホウにはね、6つのゾクセイがあるんだって」


 火、水、風、土、光、闇の六つだそうだ。それぞれ得意不得意はあるけど、種族によって使いやすいものとかがあるらしい。


「エルフはね、風がトクイな人が多いよ。でも火はニガテな人が多いんだって」

「レティは使えるの?」

「使えるよ! 見ててね」


 レティは近くに落ちていた葉っぱを拾い、手のひらに乗せる。


「ハント・ウィンド!」


 唱えた瞬間、手のひらに乗っていた葉っぱが、ふよふよと浮き始めた。

 数秒程度で落ちてしまったが、確かにあれは魔法で浮いていた。


「すごい! 今のが魔法…」

「えへへ。まだちょっとだけどね」

「魔物も魔法使えるの?」

「うん。…もしかしてシュガーってマモノだったの!?」

「あれ、言ってなかったっけ」


 見た目キツネだから動物だと思ってたのかな。


「怖い?」


 今更だけど、怖がられたらショックだなあ。


「ううん。シュガーやさしくてきれいだから好き」

「わたしもレティが好きぃ…」


 嬉しすぎる。今日は最高の日ね!




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