4 魔法の練習をします
「マモノでもマホウは使えるんだって聞いたよ」
「そうなの?」
「うん。ヒトより上手なんだって」
そうなのか。わたしも使えるかな。
「魔法ってどうやったら使えるの?」
「んー。マリョクを感じ取って、呪文を唱えるんだって」
「呪文?」
「一番簡単なマホウは名前を唱えればいいんだって。レティもたくさん唱えたよ。そしたら使えるようになったの」
まあ、たぶんそんな簡単な話じゃないんだろうけど、エルフは風魔法が得意だからうまくいったんでしょうね。
「難しいとたくさん練習しなきゃいけないんだって言ってた。そしたらいつの間にか覚えてるんだって」
「そうなんだ…。その魔法の名前を教えてもらってもいい?」
「うん。いいよ」
それぞれの魔法の初級魔法名を教えてもらった。どれか使えるようになるかな。
「あとね、マホウ以外にも、スキルっていうのがあるよ」
「スキル?」
「うん。持ってるヒトは少ないみたいだけど。スキルは生まれた時から持ってるんだって。」
「へぇ~。どんなのがあるの?」
「えっと、マホウを覚えるのが早くなるとか、力持ちになるとか、マホウではできないこともできたりするんだって」
「すごく便利ね。レティは持ってる?」
「…」
「? どうしたの?」
「ううん。なんでもない。レティは…持ってないよ」
「そうなんだ。持ってない人もいるのね」
「うん」
ちょっと間があったけど、どうしたんだろう。レティはちょいちょいこういうことあるのよね。
最初に会ったとき泣いてたし、何か抱えてるのかな。
でも、まだ話してくれそうにないね。
気長に待ちましょう。
「レティは、森の外に出たいって思ったことある?」
「え?」
「わたしいつか森から出てみたいな」
せっかく異世界に来たんだから、やっぱり冒険ってしてみたいよね。魔物だから難しいかな。
なんて思って話をしたら、レティが泣きそうな顔をしていた。
「ちょ、ど、どうしたの!?」
「シュガー森から出て行っちゃうの?」
「行かない行かない。わたしみたいな弱っちいキツネが一人で森から出たら、すぐにお腹すかして戻ってきちゃうよ」
そう言うとレティは笑い出した。
「あはは! シュガーったら食いしん坊ね」
「お腹は満たすものよ」
それを聞いて、また笑ってくれた。良かった。
「森の外かあ…どんなところなんだろう」
「見たことないものがたくさんあるんでしょうね」
「見てみたい気もするけど、やっぱりちょっとこわいなあ」
「そうね…。じゃあさ」
「なあに?」
「ふたりで行きましょうよ。森の外に」
「ふたりって、レティとシュガーで?」
「ええ。そうすれば怖くないでしょ?」
レティはパアっと笑顔になって、
「うん!」
と元気よく返事をしてくれた。
「ふたりで世界中を旅すれば、きっと毎日楽しいわ」
「そうだね! えへへ。ぜったい行こうね」
「そうね。でも、もう少し大人になってからね」
「え~」
「ダメよ。だって、きっと危険もいっぱいよ。ふたりで強くなって、それからね」
「む~。わかった。じゃあ、マホウの練習いっぱいする」
「ええ。わたしもいっぱい練習する」
「ふふん。レティが強くなって、シュガーのこと守ってあげる」
「あら、それはこっちのセリフよ」
そうしてふたりで笑いあった。
まだ何年も先の未来の話だけど、きっと叶う夢だ。
今からその日が楽しみだ。
次の日からわたしとレティの特訓が始まった。
昨日寝る前に魔力を感じ取れるか試してみたところ、あっさり習得した。魔物だから魔法の扱いが上手いというのは本当のようだ。
次に魔法の習得だけど。
「一番カンタンなマホウはセイカツマホウっていうんだって」
どうやら、レベル1の魔法は生活魔法として広く使われているそうで、攻撃性がある魔法は最低でもレベル2かららしい。
例えば、火のレベル1魔法は『ハント・ヒート』といって、ものを温める効果があるそうだ。
反対に、水のレベル1魔法は『ハント・クール』といって、ものを冷やす効果がある。
便利そうな魔法だなあ。
でも、そこからレベル2に上げていくのが難しいらしい。
…というようなことをレティが頑張って教えてくれた。
なので、まずは生活魔法を覚えるところからだ。
「マホウの練習するって言ってたから、コップに水入れてきたの」
「あら準備万端。助かるわ。ありがとう」
早速、水に魔法を使ってみる。
「ハント・ヒート」
……み、見た目では変化がないから地味!
しかも使えてるのかわかんないし。
もう少し続けてみればわかるかな。
しばらくして、レティがコップに触れる。
「つめたいね」
「あら…じゃあ、火魔法は使えないのかもしれないね」
「シュガー真っ白だから火って感じじゃないもんね」
関係あるのかな。意外とありそうな気がする。
次にハント・クールを使ってみる。
しばらくすると。
「あ、さっきより冷たい」
「え! あ! 本当!」
ちゃんと冷たくなってる!
地味すぎていつから使えていたのかわからなかった。
「すぐに使えるなんてすごい!」
「そう? ありがと」
早いのはやっぱり魔物だからかな。
他にも使える属性はないかな。地味だけど、魔法ってやっぱりロマンだよね。
その後、他の属性の魔法を使ってみたところ、土と光の魔法が使えた。
これで水、土、光の3つを使えるのがわかった。
「レティはねー、水と風が使えるんだよ。水はおそろいだね!」
「ふふふ、そうね。お揃いね」
そういえば、わたしにスキルってあるのかな。
「レティ、スキルを知る方法って知ってる?」
すると、レティは何やら難しい顔をしている。なんでそんな表情に?
「いろいろあるけど、自分で気づけるって聞いたよ」
生まれた時から持ってるってことは、その生物にとって一番合ったものってことかな。
わたしにスキルがあったとしたら…なんだろう。
キツネだから変化とかできないかな。
「うーん。わたしも何かスキル持ってたら使ってみたいのに」
「シュガーのスキル…」
「キツネって言ったら何かな」
「頭がいいって聞いたことある」
「わたしそんなに頭よくないよ…」
キツネなのに中身がわたしだから賢さはない。
「変化できないか試してみようかしら」
「キツネさんってヘンシンするの?」
この世界のキツネは化けたりしないのかしら。
「そう聞いたことあるからね。何になろうかしら」
「じゃあイヌ!」
犬か。キツネってイヌ科だし、イケるかも。
こういうのは、強くイメージするといけたりするもんよ。
よし、変化!
「…何か変わった?」
何も変わったように見えない。
白い毛並みも、可愛い足もそのままだ。
「あ、シッポ」
「あら、短くなってる」
尻尾がクルリと曲がった短いものに変わっていた。
そして、徐々に尻尾が元の大きさに戻っていき、やがて元通りになった。
ちょっと疲れを感じるけど、スキルを使ったせいかな。
「変化できた…これがわたしのスキルなのね」
「シュガーすごーい!」
レティがまるで自分のことのように嬉しそうにしてくれる。
「でも、キツネさんのままが一番好きー」
「わたしもレティが一番好き!」
頭でじゃれつくようにグリグリした。嬉しそうにもふもふされた。
それにしても。
「ハント・アース」
ボコっと地面にちょっとした穴ができる。
そしてその横に、これまた小さな土の山が出来上がる。
「これ何の役に立つの?」
「知らない」
手で掘った方が早くない?
光属性の魔法は『ライト』っていう便利な魔法なのになあ。




