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20 聖女の娘は、皇帝をも利用する

書き直す場合があります。ご了承下さい。

その事を、なかったことにする気はヴァロスにはなかった。

そして、イソロリピアへの罪悪感もなかったのだ。

我ながら酷い男だと、自嘲するような笑みが漏れる。


何しろ、そもそも――娘と認めたわけではないのだから。


だが、それでも。

何故だか、あの小娘はその事すら分かっていたような気がした。

だとしたら、あの小娘の望みは――

俺の娘になることではなく、皇国へ来ることなのかもしれない。


「……はっ。流石はあの女の娘だけはあるな。

この俺を利用するとは、大した度胸だ」


そう呟いた時、知っている気配がこちらへと近づいてきた。


「来たか。ご苦労だった、アクシオス」


「いえ、何も大したことは……」


しばし沈黙が落ちる。

先に口を開いたのは、ヴァロスの方だった。


「お前から見て、あの小娘はどう見えた?」

アクシオスは、ヴァロスが皇帝になる前から仕えている護衛騎士だ。

そして、イソロリピアとも面識があった。


「……亡くなられた皇妃様に似て、とても美しく、賢い

『姫様』だと思います」


「そうか。

生意気なのも、似ているとは思わんか?」


その言葉に、アクシオスはかつての皇妃を思い出す。

確かに彼女は、この主君に対して怯むことなく、

時に大胆で、不敬とも取れる態度を取っていた。


言われてみれば――

あの幼女も、そうした皮肉な強さを母から受け継いでいるのかもしれない。


「皇妃イソロリピア様を生意気だと思うお気持ちは、

分からなくもありません。ですが……」


アクシオスは、静かに続けた。


「それでも貴方は、皇妃様を排除したり、殺めたりはしなかった。

傷一つ付けることなく、尊重し、大切にされていたように

私には見えておりました。ですから――」


「アクシオス。うるさいぞ、黙れ」


威圧を含んだ声が、その言葉を遮る。


「……失礼しました。出過ぎた真似を」

「いい。

お前は先に、あの小娘を迎えに行け。馬車まで連れて行け」


「はっ。失礼します」


去っていく背を見送りながら、

ヴァロスは独り、低く呟いた。


「イソロリピア……

お前の子は、色んな意味で強いぞ」


1拍置いて、続ける。


「流石は――

『聖女』であるお前の子なだけはある」

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