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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第440話 メッサーナ商会からの使者

2022 3/24 修正

本来拠点にいないハズの、龍之介が会話に加わっていた部分を修正。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 北条達『サムライトラベラーズ』が帰らずのエリアへと向かってすぐの事。

 見送りを終えた一同が解散し、これから思い思いの時間を過ごそうという所で『メッサーナ商会』からの使者が拠点を訪ねてきた。

 

「ホージョー様はいらっしゃいますか!?」


 慌てた様子で駆けこんできたのは、冒険者ギルドで鑑定士として働いているコーネストだった。

 彼は『メッサーナ商会』より冒険者ギルドへと派遣されているが、異邦人たちは途中から北条の"解析"能力に頼っていたので、余りこの男と接点のある者はいない。


 しかし『メッサーナ商会』の一人であるという認識はされているので、入口の守衛の所で確認をされた後に、中央館の会議室にまで通された。

 室内には信也やシグルドをはじめとしたリーダー連中の他に、野次馬のように話が気になった連中も押し寄せている。

 コーネストも話の内容が機密という訳ではないのか、聴衆が増えても気にしていないようだ。

 



「そうですか、入れ違いでホージョー様はダンジョンに……」


「ええ。ですので、話は俺たちで伺いますよ」


 クラン『ジャガーノート』の副団長として信也が話を促すと、コーネストは事の発端部分から話し始めた。


「シンヤ様もその場にいらっしゃったのでご存じかと思いますが、私共『メッサーナ商会』と『ジャガーノート』とで提携を結ぶ際に、ホージョー様から二つの条件を言い渡されました」


「ええ、覚えていますよ。ゴーレムの核を融通してもらうことと――ベネティス領に関して調査してもらうということでしたね」


「はい。当商会はここ『ロディニア王国』では一、二を争う規模の商会ですので、どちらの条件もご期待に沿うことができる。……そう思っていたのですが、そこで想定外な事実が発覚致しました」


「想定外?」


 コーネストの言う「想定外」な事について、信也はまったく心当たりが思い浮かばず、疑問を浮かべながらコーネストに尋ねる。


「ゴーレムの核に関しては、その後幾つか融通致しましたので問題なかったことは存じ上げてることかと思います。ですが、もう一つのベネティス領に関しての調査を進めていくと、私共『メッサーナ商会』にも関わりが出てくるような事実が明らかになってきました」


「なあに勿体づけてんだぁ? さっさとその事実ってのを教えてくれよ」


 コーネストの回りくどい話に、ムルーダがつい言葉を挟んでしまう。


「これは申し訳ございません。順を追って説明した方が分かりやすいかと思いまして……」


「いいんです、いいんです……。もうっ、ムルーダ! ちゃんと話は聞きなさいよ」


「うっ、ま、まあ、シィラがそこまでゆーんなら仕方ねえ」


 最近はこの二人の仲も大分進んでいるようで、ある時期から明らかにムルーダの態度が変化していた。

 具体的に二人に何があったかは周りの仲間も薄々気づいていて、今では祝福ムードが流れている。


「では……続きをお話いたしますね。ベネティス領を調べると言われましても、何を具体的に調べるのかが明言されてませんでしたので、初めはあらゆる方面から調べていったのです」


 商売に関する情報は初めから集めてはいたので、それ以外のこと。

 それこそ町の人の噂話から、裏社会の情報に至るまで、あらゆる情報を集めていったと言う。


「そうして情報を集めていく内に、ライバル商会である『ディファイアント商会』が、やたらベネティス領内の貴族と取引を行っていることに気づきました」


「シェアが奪われているということか?」


「それとは少し違いますね。元々『メッサーナ商会』はベネティス領での活動は小規模でしたので……」


「ならそこまで気にする情報でもないんじゃないか?」


「通常であればそうなのですが、扱っている品が食料や武具。それから人員だったんです」


「……何やら物騒だな」


 平和な現代日本で育った信也といえど、その三つが意味するところは理解出来た。


「ええ。それも、表向きには別の品の取引のように見せかけていたので、猶更きな臭いものを感じました」


「ベネティス領ではここ数年税が上がる一方で民衆が困窮していたというのに、吸い上げた金でそのようなものを仕入れていたのか……」


 かつてベネティス領で冒険者をしていたシグルドが、低い声で憤りを吐き出す。


「その情報を仕入れた辺りから、我々も調べるポイントを絞って調査を始めました。そこでとある方の放った間者と接触を持つことができまして……」


「とある方?」


「それは、申し訳ありませんがお答えすることができません。ただ決してあなた方にとって害のある方ではございません」


「……分かった。続きを話してくれ」


 信也は詳細を明かされないことを残念には思っていたが、逆に秘密をキッチリ守ろうとする姿勢には好感を覚えていた。


「最初は互いに警戒もしていたのですが、話を進めていく内に協力し合えると双方の上の者が判断致しまして、協力体制を取ることになったのです」


 詳しくをコーネストは語らなかったが、元々「とある方」とは懇意にしていた間柄らしく、互いに所属を確認し合った後はすんなりと協力体制に移行出来たらしい。


「その結果、ベネティス領の貴族だけでなく、協力者から情報提供のあった貴族たちは皆、『ディファイアント商会』との繋がりが強いことが明らかになりました。そして、それらの貴族たちも食料や武具などを買い集めていたのです」


「……これはなんだか大きな話になりそうだね」


 ゴクリと唾液を飲み込んで緊張した様子のライオット。


 彼は最初の頃はクランメンバーに対して丁寧な言葉を用いていたが、最近では少しくだけた口調が自然と出るようになってきている。

 元々仲間であるシャンティアにはそのような口調をしていたので、ライオットの中でクランメンバーに対する認識が変化してきているのだろう。



 ここまでのコーネストの話を聞いただけでも既に、大きな陰謀が蠢いているような気配は感じられる。

 だが話はまだ終わってはいない。寧ろこれらの話を前提として、次の話が本題であった。


「ここで少し話が変わるのですが、この国の貴族には三つの派閥があるのをご存じですか?」


「いや、生憎そういった情報には疎くてな」


「あー、やっぱ貴族ってそういうのあるんですね」


「ラノベではよく出てくるわよね」


 コーネストの発言に信也は正直に知らないと答えていたが、咲良や陽子からするとよく目にしたような内容だったので、すんなり納得しているようだった。


「『らのべ』というのが何なのか存じませんが、この国では国王に忠誠を誓う王家派閥。貴族至上主義といいますか、貴族の地位向上を掲げる貴族派閥。それから、どちらにも属していない中立派閥という三派閥がございます」


「それは詳細な説明が必要ないほど、分かりやすい派閥の分かれ方だな」


「そうですね。それでこの三つの派閥の大まかな割合としては、王家派閥が二、貴族派閥が五、中立派閥が三といった所でして、貴族派閥がこの国では一番を占めております」


「うわっ、なんか住みにくそうな国だったのね」


「ここの領主はどの派閥なんだ?」


「グリーク辺境伯はガッチガチの王家派でございます。そして、調査依頼をされたベネティス領は、反対にガッチガチの貴族派となります」


 今この場には、マデリーネとアリッサの姿はない。

 そこそこ朝早い時間帯なので、今頃は町でこちらに向かう準備でもしている頃かもしれない。

 彼女らがいれば、この辺りの話について会話に参加していたことだろう。



「私共『メッサーナ商会』は王国全域に展開してはおりますが、中でも活発に活動しているのは、王都などの大都市を除きますと、王家派閥と中立派閥との取引が多いんです」


「だから、ベネティスでの活動は小規模なのね」


「はい、その通りです。ですがそのことが逆に、この不自然な食料の取引に気づくのが遅れた理由でもありました。そして、こうした品の取引はベネティス領だけでなく、他の貴族派の領地でも行われていました」


「それは……」


 信也も事の大きさが理解出来てきたようで、額に汗が浮かび始める。


「これら食料や武具の買い溜め、傭兵ギルドからの雇い入れ。冒険者への勧誘などは、規模は小さいながらも数年前から徐々に行われていたことが判明しています」



 これまでは、大発生した魔物の討伐だのとそれらしい理由をつけて、戦力をその度に少しずつ増強していたという。

 それにかかる費用は結局のところ民衆が負うことになり、ベネティス領以外でも税が上がって困窮している領も増えていた。


「ですがここ数か月ほどは、そうした表向きの理由もなく戦力を強化していることが判明しました」


 これも情報が出回らないように『ディファイアント商会』が情報規制を行っていたようだが、これだけ大規模に行われていれば、完全に抑えることはできない。

 特にそれと疑って調査した『メッサーナ商会』には、誤魔化しが効かなかった。


「私共はこれらの情報を調査しながらも、複数の貴族に対して探りを入れていきました。その結果、一つの計画が判明したのです」


 ここまで言われれば、この先の話も容易に想像がつく。

 すっかり静まり返った会議室内に、コーネストの声が良く通った。


「貴族派の貴族達は互いに手を組み、王家に対して謀反を企んでいる。そして、彼らが行動に移る日は近い……と」




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