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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十五章

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第427話 サンドワーム


 北条が敵の襲来を告げるが、周囲にそれらしき姿は見当たらない。

 感知能力に関しても北条は異常なので、大分距離が離れてる魔物であろうと感知が出来る。

 ヴェナンドの話によると、サンドワームは相当に巨大な魔物らしいので、多少距離が離れていようが近くにいれば確認出来るはずだ。


「オッサン! どこからだ!?」


「話を聞いてなかったのかぁ? 奴らは砂中を移動してくるんだってことをよぉ」


「あー……、そっか。砂の中じゃあ、"嗅覚強化"も使えねーなあ」


「方角は……この方角に歩いて十分程の距離」


 北条がサンドワームを感知した方角を指で指し示す。


「私は"聴覚強化"を持ってるけど、地面が振動する音すら聞こえないわね」


「……ッ! 奴の移動速度は結構速そうだ。前衛は前にッ! 後衛は俺の傍に集まれぃ! これより陣地を構築する」


 

 北条の指示に、素早く龍之介らが従って動き出す。

 一歩遅れてヴェナンドとファエルモも前衛、後衛に分かれて移動するのを確認すると、北条は魔法の詠唱に入る。


「一面のあまねく砂よ。我が意の通りの形を成せ。【砂漠操作】」


 北条が魔法を発動させると、周囲の砂が大きくうねるようにして、北条達後衛の足元を押し上げていく。

 そしてまたたく間に高さ五メートル、縦横の距離が十メートル四方の盛り上がった砂の台地が形成された。

 しかし陣地の構築はそこで終わりではなく、更に追加の魔法が発動される。


「小さき砂は寄り固まりて、硬き岩へとならん。【石化砂漠】」


 先ほどよりも、多量の魔力を消費して発動された次なる魔法は、最初の魔法で盛り上げた砂の台地を、一瞬で一枚の岩のように固めてしまう。


「な、なんだ!? これは何の魔法だ!?」


「地面を高くして、足元を石に固めたぁ。これでサンドワームも、この範囲内では地面から急に出てくることはぁない! 後衛はこの場所から遠距離攻撃に専念できるぞぉ」


 見知らぬ魔法に思わず好奇心が刺激されるヴェナンドだったが、すでに敵は迫っていることを思い出し、すぐにモードを切り替えて敵の迎撃に意識を向け始める。



 ゴゴゴゴッッ……。



 カタリナのように"聴覚強化"がなくても音による異変が感じられるようになり、前衛の緊張が高まった、そのすぐ後。


「マジかッッ!!」


 慌てた様子の龍之介が、今いた場所から飛び跳ねるようにして移動する。 

 すると、そのすぐ後にその場所から巨大なサンドワームの先端部が姿を現わしていた。


「シィィィィィ……」


 先端部にある大きな口を開いたまま、龍之介を飲み込もうとしていたサンドワームは、獲物を食らい損ねたことにいら立ったように声を上げる。


「で、でけえ……」


 龍之介は今まで、グローツラングやシーサーぺントなど、同じような形状の巨大な魔物と戦った経験はある。

 だが砂中から体を半分出した状態のサンドワームは、その中でも最大規模の大きさだった。


 まだ全身を地上に晒してはいないが、あの上半身の大きさからして、少なくとも全長十五メートル以上はありそうだ。

 その分胴回りも太く、口を開けば人間なんか二人か三人くらいは一度に呑み込めそう程大きい。


「こん……ならぁぁッッ!」


 思っていた以上に、異音が聞こえてから襲撃までの間隔が短かったせいで、襲撃に対する反応が遅れてしまった龍之介。

 しかしすぐにも体勢を立て直し、〈水鳥〉を手に切りかかっていく。


「オラオラオラァァァッ!!」


 しょっぱなから"ハードスラッシュ"で切りかかった龍之介は、その後も闘技スキルを交えながらひたすらに巨大な体を切りつけていく。

 そして、龍之介のとっておきである剣系の闘技秘技スキル、"風舞剣"も最初からぶっこんでいく。



「ハアアァァッ!」


 メアリーも龍之介に負けじと、最初から槌系闘技秘技スキル、"鬼撃"を筆頭に、闘技スキルを次々と打ち込んでいく。

 その様子は、さながらサンドワームが巨大なサンドバッグにでもなったかのようだった。


「うああ、二人とも凄いねえ」


 そんな様子をファエルモが関心しながら眺めていた。

 ファエルモも手にしたハンマーで攻撃を加えてはいるのだが、明らかに火力では二人に届いていない。



「……龍之介、みんな……!」


 ノリノリで攻撃を続けていた龍之介達だが、不意に聞こえてきた楓の声に、咄嗟に周辺に注意を向ける。

 すると、サンドワームが口を大きく開き、そこから光線のような何かを発射し始めた場面が視界に映った。


「ぎゃ、ぎゃああああああぁぁぁッッ!」


 レーザー状に発射されるその攻撃が最初に向けられたのは龍之介だ。

 楓の警告もあって、一応初撃を回避することに成功した龍之介。

 だが、そのまま発射され続ける光線を避け切ることが出来ず、顔の右半分と、咄嗟に顔を庇った左手の部分から強酸を浴びたように白い煙が立ち上がる。


 被弾した箇所は、強力な酸でも浴びたかのように焼けただれており、特に顔の右半分の損傷は痛ましい程だ。

 顔の皮膚が一部溶け、眼球が飛び出ているような状態になっていて、視覚も右目からの情報が脳に届かなくなっている。


「龍之介くん!」


 その様子を見たメアリーが、慌てて"回復魔法"を掛けようとするが、龍之介を襲った強力な酸の光線は次にメアリーの方へと向けられている。


「……【流水遁の術】」


 そこで咄嗟に楓が"忍術"の【流水遁の術】を使用すると、上空から猛烈な勢いで滝のような水が流れ落ちてくる。

 それはまるで水のカーテンのように酸の光線を遮り、その間にメアリーは龍之介への"回復魔法"を発動させていく。



「……そいつは"アシッドブレス"だぁ! 見ての通り、ブレス属性と酸属性の強力な攻撃なので注意してくれぃ! 今レジスト魔法を掛けにいく!」


 いつも通り、最初は"解析"で相手の能力を探っていた北条だったが、解析が終わる前に先に危険な攻撃が放たれてしまった。

 そこで慌てて前衛の下に駆け寄って、【レジストアシッド】と【レジストブレス】を掛けてまわる。


 これらの"付与魔法"は、余り遠くにいる相手には使用できない。

 なので戦闘中にこれらの魔法を掛けるには、前衛の方から後衛の下に駆け寄るなどする必要がある。

 しかし北条の場合は、元々前衛でも戦える位の実力なので、こうして直々に前線まで出張って魔法を掛けていくことも可能だ。


「……ッッッ、クソッたれがあ!!」


 顔や左手の皮膚が溶け落ちるほどの、強力な攻撃を食らったばかりの龍之介であったが、戦意は落ちることなく返って高まっているようだ。

 すでに見た目の方は、メアリーが重ねて掛けた治癒魔法によってほぼ元通りになっている。




「ロイド、とにかくなんでもいいからあのでかいミミズに攻撃して!」


「水よ! うねりて敵へと襲い掛かる蛇となれ! 【水蛇】」


 隆起した足元が石化された高台からは、カタリナとヴェナンドの魔法がサンドワームへと襲い掛かる。

 カタリナは水の微精霊であるロイドによる攻撃の他、自身でも水魔法を"中級"で扱えるので、そちらでも攻撃を加えていく。


「シイイァァァァァッッ!!」


 それは幾ら水属性が弱点とはいえ、タフな生命力を誇るサンドワームからしたら、微々たる攻撃だ。

 しかし、それでも苦手属性でちょこまか攻撃されるのを嫌ったのか、サンドワームは再び大きな鳴き声を上げる。

 すると、丁度高台とサンドワームとの間に巨大な砂の壁がせりあがっていく。


「【サンドウォール】か!」


 砂中からの奇襲攻撃を防ぐためと、遠距離から攻撃しやすいようにと北条が構築した陣地であったが、間に遮蔽物が出来てしまうとそれが仇となってしまう。

 事前情報で、サンドワームが"砂魔法"を使用することは知っていたが、【サンドウォール】を使用されるとやりにくくなってしまう。


「相手は大きいし、【水弾】みたいな操作性の良い魔法ならあてられそうだけど……」


 相手を攻撃する魔法には、弾状のものを飛ばしたり、矢にして飛ばしたりと、幾つものバリエーションが存在する。

 それらはそれぞれ、威力や命中、操作性などに微妙な違いがあり、魔術士はそれらの中から適宜その場に適した魔法を選択して使用している。


「ウォール系の魔法は長時間はもたない。ここは様子見した方がいいだろう」


「……そうね」


 ヴェナンドの進言を素直に聞き入れるカタリナ。

 そこへ、前衛にレジスト系の魔法を掛けてきた北条が戻ってくる。


「今戻ったぁ。あの"アシッドブレス"はこの位置にも届くから、お前らにもレジスト掛けていくぞぉ」


 北条は後衛の陣地となる場所には、毎回【物理結界】と【魔法結界】を張り巡らせている。

 内側に【魔法結界】を張ることで、内側からでも魔法を発動することができる、かなり便利な即席防御陣だ。


 しかしこれらの結界が防ぐのは、物理攻撃と魔法攻撃だけだ。

 実はブレス属性の攻撃はそのどちらの属性にも属していないので、あの"アシッドブレス"がこちらに向けられると、両方の結界を貫通して素のままの攻撃を食らうことになる。


 恐らくは、ブレス攻撃に対応する"結界魔法"も存在するとは思われるが、元々が希少な部類の魔法であり、そこらの魔法書などで習得できるものではない。

 北条も、これまでブレス攻撃をしてくる敵が殆どいなかったので、研究の範囲外にあってまだ覚えていなかった。


(……この先ドラゴンなんかと戦うこともあるかもしれん。ブレス対策はしていかないとな)


 まさかサンドワーム相手にこのようなことを意識させられるとは北条も思っていなかったが、ブレス対策を考えるいいきっかけにはなった。




「……ホージョーの魔法の腕は途轍もないな」


 【レジストアシッド】と【レジストブレス】を掛けられたヴェナンドが、唸るように感想を述べる。

 "付与魔法"の使い手であるヴェナンドも、この二つの魔法は使用することができる。

 ……出来るが故に、同じ魔法だというのに自分が使用した場合と効力が一段違うことに、驚きを禁じえないでいた。


 それから、引き続き北条はカタリナへも同様の魔法を掛けていく。

 しかし、その途中。

 前衛の戦いを見ていたカタリナが大きな声を上げる。



「メアリーッッ!」



 その危機感迫る声に、魔法を発動し終えた北条が慌てて後ろを振り返る。


 その視線の先には、【サンドウォール】を回り込んで攻撃をしようとしていたメアリーと、そんなメアリーに狙いを付けて、その巨体ごと突進していくサンドワームの姿があった。



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