表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

491/907

第426話 砂漠


 階層を移動する前に各々が戦闘準備を始める中、龍之介はいつもの〈ウィンドソード〉から、〈水鳥〉へと武器を持ち替える。


 片刃で反りがあるという日本刀を思わせるこの武器は、切れ味が鋭く、硬い外殻を持つというサンドワームすら切り裂くことができるだろう。

 扱いについては、"剣術"でもある程度同じようには扱えるが、最近龍之介は"刀術"も取得したので、ますます〈水鳥〉の扱いにも慣れてきている。


 メアリーもこの間入手した、〈爆砕槌〉を手にやる気満々だ。

 今回の相手は巨大なサンドワームということもあって、左手にはいつも装備している〈ヴィルディヴァルディ〉の姿はない。

 この魔法の盾は、防御よりも攻撃を受け流す時に真価を発揮するのだが、今回の相手は流石に巨大すぎて、受け流すのは無理だろうとの北条のアドバイスによるものだ。


「それでぇ、転移してすぐの所に奴が潜んでいるのかぁ?」


「いや。確かに私達が逃げる際に近くまで追ってきてはいたが、あれからもう大分経っている。恐らくもう近くにはいないと思うが……」


「なら、補助魔法を掛けるのは転移してからとしよう。先に俺たちから飛ぶぞぉ」


「分かった。転移したらすぐに避けといてくれ」




 まず先に北条達から転移していき、後からヴェナンド達が追うことになっていたので、一足先に北条達が四十層へと転移していく。


「うげーー。ほんと見渡す限り砂だらけだなー」


「ほんと……。日差しも思ってた以上にきついわ」


「ほらほら。感想は後にして、一旦魔法陣の範囲から抜けるぞ」


 迷宮碑(ガルストーン)には、こういった転移先に人が居座ってる場合の対策が予め仕込まれているが、階層転移の魔法陣の場合はそうではない。

 この場合、転移先の魔法陣に居座ってる連中が、何故か近くの別の場所へと強制転移させられてしまう。

 なので、魔法陣に居座って階層封鎖ということはできないし、転移したらすぐに魔法陣から離れるのが一般的だ。


「……どうやらすぐに襲われるってことは回避できたみたいだな」


「ああ、周囲には魔物の気配は一切ない。三十層と同じ感じだぁ」


 『サムライトラベラーズ』の面々が魔法陣から離れると、少ししてヴェナンドとファエルモの二人も転移してくる。

 なお、パーティー構成はそれぞれのパーティーのままだ。


「そうなると、いつアイツと遭遇するかが分からない……か。私達もこの階層の構造がどうなっているのか、よく分からないままウロウロしていたのだが、そんな時に奴と出会ったのでな」


「確かに、こんな目印もなんもねーとこじゃ、同じところをグルグル回ってても気づかないかもな」


「そうだね。ボクらが逃げ出せたのも、本当に運が良かったとしか言いようがないよ」


 領域守護者(エリアボス)守護者(ガーディアン)といったボスは、逃げ道を塞がれた状態で戦いに入る場合と、この階層のように逃げ道が塞がれない場合が存在する。

 しかし、この何もない広い砂漠では、逃げ道を塞がれなかったとしても、前の階層に無事戻るのは難しい。



「とりあえず、すぐに奴と出会うかどうかは分からないが、先に"付与魔法"だけは掛けておこう」


 ヴェナンドはそう言って魔法を掛け始めようとするが、それを北条が制する。


「ヴェナンドには熱さ対策という魔法を任せる。他のは俺が個別に掛けていこう」


 何を言っているんだ? と北条の言葉の意味を理解する前に、北条は次々と仲間にステータス強化系の魔法を掛けていく。


「ヴェナンドは……魔力だけでいいなぁ?」


「えっ? あ、ああ……」


 どうも仲間に"付与魔法"を掛けていたと思しき北条だが、その間一切詠唱をしていないことが、ヴェナンドの注目を集めていた。

 そのせいか、北条に尋ねられたヴェナンドは、上の空状態で反射的に返事をする。


 だが次の瞬間、北条の魔法がヴェナンドに作用して自身の魔力が大幅に増加したことに気づくと、ヴェナンドは表情を一変させる。


「なっ、私に今何をしたんだ?」


「何って……魔法で魔力を一時的に強化したんだがぁ……。"付与魔法"の使い手ならそれ位は分かるだろう?」


「い、いや、そういうことを言っているんではない! あ、いや待て。だからこそ違いが分かるとも言える。お前が今私に掛けた魔法は、私が【魔力大増強】を掛けた時より強化具合が大きかった。そ、それに詠唱をしていないように見えるんだが……?」


「強化具合が違うのは、俺が使用したのが"付与魔法"の【魔力大増強】ではなく、"添加魔法"の【魔力倍増】だったからだぁ。詠唱は【無詠唱】スキルでカットしている」


「は……はあぁぁぁぁぁ!?」


「……ヴェン。口が開きっぱなしになってるよ」


 驚きの余り、口を開けたまま固まっているヴェナンドの顎に手を当て、ガクンと嵌めこむ様に口を閉じさせるファエルモ。



「ふぁふんっ……! ふぁ、ファル、お前もう少しやり方をだな……」


 二人がそうしたやり取りをしてる相手に、今度は北条が"結界魔法"の【断熱結界】を個別に掛けていく。

 【物理結界】や【魔法結界】などは、同時に二つ同種の結界を張ることはできない。

 しかし、【断熱結界】は複数展開することも可能なので、一つの結界内に寄り集まって移動する必要もなく、便利な魔法だ。


「わあぁ。ほら、ヴェン。さっきまで焼けるような熱さだったのに、一気に涼しくなったよ?」


「ッ!? これは……まさか"結界魔法"……なのか?」


 魔法を掛けるたびに一々大きなリアクションを取るヴェナンドを、北条もすっかりスルーしてさっさと全員に魔法を掛けていく。


「さあ。後はあんたの暑さ対策の魔法だけだぁ。よろしく頼むぞぉ」


「あ、ああ……」


 言われるがままに、全員に暑さ対策の"付与魔法"である【サーマルプリザーベーション】の魔法を掛けていくヴェナンド。

 この魔法は【断熱結界】のように直接暑さや寒さを軽減するのではなく、外気の影響によって体温が変化するのを防ぐための魔法だ。


 体温が維持されるせいか、暑い場所でも汗を大量にかくことはないのだが、寒いところでは体の一部が凍り付くことはある。

 ぶっちゃけ今の状況なら【断熱結界】だけでも十分ではあったのだが、北条は未知の魔法を見る為に敢えてヴェナンドにも頼んでいた。


「よおし、これで一先ず準備は整ったぁ。後はサンドワームを倒してさっさとこの階層からおさらばするとしよう」


 士気を高めるためとはいえ、大分気軽にサンドワームを倒すと言ってのける北条。

 しかしつい今しがた上位魔法の行使やレアスキルを見せられたヴェナンドは、確かに龍之介が言っていたような「この男ならどうにかしてしまいそうだ」という気持を抱いた。



 そして話を終えた一行は隊列を組んで移動を開始する。

 一番先頭を楓、次に龍之介、メアリー、ファエルモの前衛陣。

 その後ろを残りの後衛や、従魔のニアとラビという布陣で固め、熱く乾燥した風が吹きすさぶ砂漠の中を移動していく。


 砂漠は当然のことながら真っ平になっている訳ではなく、意外と起伏に富んでいて、移動はなかなかに困難だ。

 慣れない砂地に少しでも慣れる為に、龍之介やメアリーなどが時折ダッシュをしたりして、足元の感覚を確かめている。


 なお、"ダンジョンマッピング"のスキルを持つ北条とメアリーは、このような場所であっても頭の中の地図情報が随時更新されている。

 今から三十九層に戻るとしても、ほとんど同じ時間で戻ることができるだろう。




▽△▽



 しばしそのまま砂漠を歩き続けた一行は、途中で昼食を済まし、補助魔法を掛け直して、午後の探索に移る。

 今時分が一番熱い時間帯なのだが、北条の【断熱結界】によって、少し暖かい程度で済んでいる。

 しかし暑さのせいか、遠くの風景は揺らめいて見えた。

 条件が整えば、蜃気楼なんかも見えそうだ。


「砂ばかりの風景も飽きてきたぜ」


「まだそんな時間も経ってないでしょ……っていっても、私ももう砂漠は結構だわ」


 一番肝心な暑さ対策が出来ていると言うのに、すでに龍之介とカタリナは砂漠の移動に辟易とした様子だ。

 今はみんな、〈魔法の小袋〉から外套を取り出して羽織っている。

 【断熱結界】で温度は問題ないが、日差しと砂埃をガードするのに外套が大いに役立っていた。


「もーちゃっちゃとサンドワームをぶっ殺して、次のエリアに移動したいぜ」


 これで何度目か分からない龍之介の愚痴に、仲間はやれやれといった反応だったが、その中で一人、別の反応を返す者がいた。


「……龍之介、喜べぇ。ようやっと敵さんのお出ましだぁ」


 不敵な笑みを浮かべながら、龍之介だけでなく全員にも伝わるような声を出す北条。

 その声を聞いた他の仲間は、一斉に表情を引き締め、辺りをキョロキョロと窺うのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

こちらの作品も宜しければどうぞ! ↓からクリックで飛べます!

ドラゴンアヴェンジャー

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ