最後の晩餐と向こうの景色
恵麻はお帰りになられました
どれほど時間が経ったんだろう、私はムックリと布団から起き上がるともう既に障子の奥は縁側になっているため明るさは判別できるもののすっかり夜になってしまっているではないか。
少々寝過ぎたかと頭をポリポリかいてアクビをするも、まぁ頑張ったからと割りきれば別にどうってことはないんだがなぁ。
それにしてもなんだろう、何か違和感が感じられる。
……そう、恵麻が布団に居ないのだ。
台所にいた聖奈が後で話してくれたが時雨だって忙しい、できるものが完成したならば重機を撤退させるのが当たり前、それに伴い同時に帰ってしまったとのこと……1日くらい宿泊していけば良いのに。
それに恵麻も無茶するなぁと思うかもしれないが時雨の民は頑丈で治りも早い、あとは彼女は水曜を司る女神である……となればなおさらだし、5時間程度寝れば瀕死状態から元気イッパイになるなんてそうとうキメ込んでるんじゃないかな?
いや、何がって……曜力かなぁ。
「へへっ、ここの長屋は1棟全部俺らのモンだから好きに使って良いんだとよ。 俺なんてベッドとテレビを配置したぜ? まぁ、テレビは電波届かないから何も写らんけどな……ワハハ。」
ふむ、この長屋は結局私達の所得物になったと言うわけか。
別に部屋なんて欲しくないけど。
「水道もきちんと通ってますし、飲み水としても問題ありませんからね。 大幅に生活の水準が改善されて私も嬉しい限りです。」
だろうね。
聖奈は私が行くたびにお茶を出してくれるが井戸水を充分沸騰させて殺菌してからお茶にするくらいだからね。
なにより安全な水があれば餓えることもたぶんマシにはなるんじゃないかなとは思うけどね。
あとは郊外地には畑とか……城下町には娯楽とかお食事処、銭湯に美容院……はてまたは診療所とかなんてあれば素敵だと思う。
そうなると雇用を増やして豊かになるかもしれないからね。
なんて今からそんな皮算用ってのを考えても今後のことは考えてもどうしようにもないし……とりわけどうにもお腹は減っていてたまらない。
わかるだろう、割烹着の姿をした聖奈を見るだけでお腹が減る。
わかるだろう、この気持ちわかるだろうッ!?
……大切なことはたくさん言うが、別に聖奈が美味しそうって訳じゃないから勘違いはしないで欲しい。
「聖奈ぁ、今日の晩飯何?」
玄弥は畳の部屋からだらしなくモゾモゾと這い寄ってくるも芋虫なのか?
すごく撃ちたくなる……いや、私の武器は鎌メインだけど。
「今日は里芋の煮物ですよ、楽しみにしててくださいね。」
「ウイッス、じゃあ出来たら起こして。」
玄弥は作るのを手伝わんのか?
いやまぁ良いんだけどさ。
それにしても聖奈はお城が完成したのに住まないのだろうか?
あんな立派なのに勿体ないような気がする。
住まないなら私にちょうだい……あぁ、あんなデカイ建物やっぱり要らないわ。
「お城の中にはまだ暖房器具が無くて、今から住んでもただ寒いものですから。 後日お引っ越しする予定です。」
なるほどね。
長屋の暖房器具は玄弥が持ってきたヒーターがあるから全般的に暖かくて引っ越しの準備が整うまでだったら何1つ不自由はないと思う。
さてさて、私も早く晩御飯が食べたいからお手伝いでもするかな。
聖奈が煮物ならこっちはご飯を炊飯して味噌汁を……うん、充分貢献できる、私の腕の見せ所ってヤツだ。
あまり上手く炊けてなくて驚いたわ。
味噌汁は別に問題ないけど、かまどでご飯を炊いたことなんて1回もないわけだから聖奈のレクチャーがあったところで少し柔らかっぽいご飯が炊けてしまった。
途中で火種が消えたりとハプニングが多発してしまうのも何かと面白かったがね。
とりわけ炊飯器などに頼りっきりの私にはレトロ過ぎる炊飯は無理があった。
竹の筒でフーフーするのなんて初めてだったからなぁ。
でもさすがはかまどで炊いたご飯だ、よりいっそう美味しく感じられるのは気のせいじゃない。
これは炊飯器じゃ体験できない美味しさだと思うよ。
「おいしーっ!! やっぱり聖奈は料理の達人ね!!」
先程までお風呂に入ってて姿が見えなかったが結愛も絶賛で大満足の表情だ。
事実、聖奈に和食の料理を作らせたら今のところ右に出るものはたぶん居ないだろう。
玄弥は相変わらず酒で酔いつぶれてるし、まぁいいか。
夜朧もとりあえずは完成ってことで明日からまた少し大きく休んで次へと英気を養っておくかな。
次からは燎煉になる……のか?




