月夜映ゆる空の下で
楽しんでますか?
淡い月夜に照らされた小さな集落にも希望の燭台の灯火が大きくなり始める今宵、宴が行われた。
たまにはこういうお祭りも悪くないし見ていてとても微笑ましいことこの上ないじゃないか。
みんなで作ったヤグラと芋煮とおにぎりが美味しくないはずがないじゃないか……と、舌鼓をならし至福の時というのを分かち合うこれ以上の幸せは今はあるまいよ。
まぁ私はどうでも良いけどね……あ、この甘酒美味しい。
「冥綾も踊れーっ!!」
キャンプファイヤーの目の前で玄弥がブレイクダンスをしており所々から歓声が上がっているみたいだが、私にはそんな芸当は出来ない。
そんな人間離れしたアクロバティックな動きができるかっての。
「じゃあ、俺と一緒に踊るか? 今宵は冥綾がお姫さまだぜっ……てな。」
玄弥の手が私の手を持ち上げてはお誘いをしてくるじゃないか!?
高鳴る胸の鼓動が、これは千載一遇の……いや、私はぎこちないからこんなところで変な踊りを民衆に醜態をさらすのは避けたい。
それに玄弥のお姫様はあっちにいるだろう?
私は芋煮を食べてながら聖奈の方を見て玄弥の視線を移動させる。
楽しそうな顔をしている聖奈だが、見ていてばかりだとたとえ笑顔でも今ばかりは夢心地を見せてあげても良いんじゃないかな?
聖奈、1つ貸しを与えてあげるから今度返してくれよ?
……そうだ、それで良い。
遠くでキャンプファイヤーを楽しそうに見つめている聖奈をエスコートしては手を取り合う、やはり夜のお祭りに男と女の色模様がなくちゃ興奮できないからなぁ。
聖奈の顔が赤くなっているのをみるとよほどドギマギしているようだが……って、うぉっ!?
踊るの上手い……、玄弥との調和がとれてなんて美しい舞いを見せてくれるんだ。
女神の舞いなんて滅多に見れるものじゃないから画面の向こうの皆もしっかり目に焼き付けておくんだぞ。
それから数時間が経過してすっかり深夜になった頃、祭はお開きとなったが甘酒の飲みすぎで頭が思うように動かない。
お酒は飲める歳じゃ無いが甘酒ならイケるかと思ってその美味しさに溺れて、再現なくガバガバ飲んだ私は愚か者だろうな。
自制心が効かなくなると言うとはこういうことなのだな、酒飲みの玄弥の気持ちがわからなくもない。
だが、こんなにも頭がシェイクされクラクラして心地良いんだから今は片付けをしたくない……このまま寝たい、なんて甘えが脳裏によぎる。
パソコンの電池も切れちゃったし私の言葉なんて単なる独り言にしか過ぎないけど、そんなこともどうでも良いほどに思えて……ん?
「こんなところで寝てたら風邪引くぞ?」
ブルーシートに横たわった私の頭上から聞き慣れた優しい声が降り注ぐ。
あぁ、ここは天国だろうか……いつも地獄の狭間にいるからこういう暖かい言葉って嬉しいような気がするよ。
「ほら、肩を貸せ……トラックの荷台のベッドまで運ぶぞ。」
自分で歩けるがこうして肩を並べて歩くっていうのはどうにも小恥ずかしいモノだな、まるで二人三脚か何かか勘違いしてるんじゃないだろうな?
いや、勘違いしてるのは私の方なんだ……こんなにも頬を染めてさ、月の光が綺麗に映し出される夜中の男女だなんて、これだけで映画のワンシーン録れちゃうほどだ。
頬を染めてるのは甘酒のせいだ、そういうことにしておかないと私も今夜は寝れそうになくなりそうだからなぁ。
「よし、着いた。 おら、寝ろ寝ろ。」
荷台のベッドにはすでに結愛が寝息をたてて眠っている。
夜朧は霜が降りるほど肌寒いがここは暖かくて快適。
今夜はよく眠れそうだが、ベッドは2つしかなく1つは結愛が使っている……まさか!?
「んじゃ、俺も寝るから朝には起こしてくれると助かるんだぜ。」
Uターンするって事はまさか運転席で寝るつもりか?
相変わらずワイルドなのが自慢の玄弥だが……まあいい。
こんな火照った身体だが今は明日のためにしっかりと睡眠をとっておかなくちゃ。
後の祭りってね(意味が違うのはご愛敬)




