疾風のごとく、雪崩の少女参上!?
お別れは済んだか?
青い空を見上げては軍曹が帰ったことにちょっと寂しいな……なんて思いながら、ギュッて抱き締めたまだ温かみが残る腕をポケットにしまう。
さてと別れの悲しみはもう4度目か、さすがに慣れたはずだろう?
ここでクヨクヨしてちゃ軍曹に申し訳がたたない。
とりあえず恵麻がレンタルでスノーボードを借りてはこれから楽しむらしいが私は次の風見のやるべきことを考えなくちゃいけなくて、なかなか休みというのは欲しくてもとれない。
こう言うのを【勝って兜の緒を締めよ】って言ったかな。
戦に勝ったからと言って油断をするな、次の戦いのために緒を締めよって感じで言えば分かりやすいかな?
とりあえず下山ならぬ下丘をしようとした時だった……見ちゃいけないようなものが目に入った。
……こんなところにポイ捨ての空缶!?
そりゃ観光客が詰め寄れば当然マナーの悪い人もいるだろう、私は呆れながら引き抜こうとしたんだが何か様子がおかしい。
逆さまに埋まってたんだけど、持ち上げてみるとどうだ?
「なっ、未開封のビールの空き缶?」
ポイ捨てかと思ったんだが意外にそうじゃないのか、はてまたは誰かの落とし物かよくわからない。
とりあえずロッジの案内所に持ち込んで落とし主を探そうと思うんだけど、こんなことでビールを持っていく私が恥ずかしくてしょうがないんだけど。
けれど落として焦ってる人も居るかもしれないし、一時の恥だがやるしかない。
そう思ってその場をあとにしようと思ったときだった。
どこかで聞き覚えのある声が近づいてくるッ!!
この肌に伝わる莫大な曜力素は七曜神クラス……間違いなく【木曜神の元木 菊花】だろう。
「そのビールさんは菊花のだよぉおおおおおおおおっ!!」
まるで除雪列車のように雪を掻き分けながらスゴイ勢いで走ってくる小さな少女。
と言うか軍曹に会わせたらどんな反応するのかちょっと見ものだったが少しだけ登場が遅かったかな。
まぁ、いつか会えるでしょ。
「別に私はビールなんて飲まない。 落とし物だと勘違いして案内所に送るつもりだったが持ち主が見つかって良かったな。」
菊花はビールが大好きだから横取りしようと企んでるのかと思えば別にそうじゃなく、正直者。
正直……というか純粋な心を持つから嘘をつけないと言った方が早いかもだが、それゆえか悪気がなくてもストレートにモノを喋り相手を知らずに傷つけることもある。
それでも立派な私自身の1人さ……可愛いだろう?
キンキンに冷えたビールを手渡すと安堵したのかその場で呑み始めるとは、さすがだ。
この見た目でもアルコールを分解できるし、原理は不明だけど3升を目の前で飲み干す芸当も去年辺り見せてくれた。
こう言うことについては彼女の不思議、一説では思い込みを現実に反映させる能力を持っていると私は睨む。
「ビールさんおかえり!! 幸せだよぉおおっ!!」
それに飲んでる最中といえどもなぜかと明確な発音ができるのも不思議のひとつ。
最初は驚いたが今となっては別に……って感じだ。
「菊花、速すぎるんだぞ。」
「菊花はね、脚がとーっても速いんだよ? 軍曹も頑張れば菊花といい勝負ができそうだね!!」
そりゃそうだ、菊花の足の速さは誰にも勝てな……え?
「なんで軍曹がここに居るのぉおおっ!? 今目の前で消えたでしょぉおおっ!?」
いかん、菊花と似たような喋り口調になりつつあるが仕方ない……緊急事態発生。
軍曹が帰ってないだと!?
「ギュッてしたらさすが圧迫されてお花を摘みたくなったから抜けさせてもらっただけだ。 消える間際だと言うのに催すとはタイミングの悪い身体だ。」
消えたと思ったらトイレに言ってたのかよ。
けど消えかかってた身体をどうやって維持し、また実態を取り戻したって言うんだ!?
こんなこと、あり得ると言うのか。
「トイレで誰かに出会ったんだがな? 軍曹は直感で【コイツが菊花か】ってわかったんだぞ!! えらいっ!!」
【菊花もね、玄弥から軍曹のことは聞いてたよ!! 一目見てわかるなんてこれが一目惚れだねっ!! 菊花は大人の階段を登っちゃったぁ。 これで菊花も大人だよー!!】
なるほど、たぶん推測するなれば菊花が軍曹を繋ぎ止めてるんじゃないかな。
まぁ、この不可思議な現象が別に何か悪いことを起こそうとする様子は今のところ感じられない、結界の揺らぎも異常はない。
ならば……まぁいいか、あとは菊花に軍曹は押し付けて任せるとして、次のステップに移動しますかね。
お別れ済んでませんでした、これからもよろしくね




