まさかの超展開
「せ・・戦神アシェラトだと・・」
俺以外にはあんなに強気なエラルドがこの有様。さすがチョロイン。存在感がハンパじゃねぇ。
どうにか意識を持ち直したらしいエラルドだったけど、その瞳には若干の怯えが見て取れる。
「例えアシェラトとて、私がケイ様を思う気持ちは負けない!」
心折れたようにみせかけて健気に強がるエラルドに不覚にも萌えそうになる。
「あー、安心しなよ。別に君たちをどうこうしようってわけじゃないからさ。ちょっと時間が空いたから久しぶりにケイ君どうしてるかなぁって見に来たらこの場面でしょ?さすがにあのままにしておくのはマズいかなぁって思っただけで、他にもちょうどケイ君に伝えたい事もあったし…」
バトルを止めてくれたのはありがたいんだけどさ。でも、よくよく考えてみるとせっかく従魔誕生という一大イベントだったハズなのにチョロイン登場で全部もっていかれたネロが不憫すぎる。
「久しぶりだね、ケイ君。その異様に早い成長のスピードにまさか従魔までこしらえてるだなんて。やっぱり君ってめちゃくちゃだね。元からあんまり心配はしてなかったけど本当に杞憂だったみたい」
「マスター、この方は?あちらの人達とはまた別みたいですが?」
ネロは通常運転に戻った様子。というか通常モードとか以前にどれが素なのか分からん。
「えっと、色々とあり過ぎて状況についていけてないんだけどさ。とりあえずネロ?でいいんだよな?お前って俺の従魔なんだろ?従魔ってそもそもなんなんだ?」
「それは私が説明しましょう」
アシェラトさんかと思ったらまさかのエラルドさんでした。
「従魔とは古来より伝わる禁じられし呪法から生まれしモノ共の総称です。呼び出した者の魔力を糧とするのですが、他の召喚術などで生み出されたモノとは違い、表面上は主人に絶対服従を語っていますがその実主人の魔力が尽きるまで延々と魔力を吸い出し、それと引き換えに主人の望むどんな強大な敵でさえ消し去るという自らの命と引き換えに莫大な力を生み出す禁呪より生まれしモノ」
まじかよ、ペットみたいなもんかと思ってたらすっげぇヤバイ奴だったんか。
なるほど。だからエラルドもあんな反応したんだな。
でもおかしくね?全然魔力とか吸われてる気配しないんだけど。
「確かに我々従魔は呼び主の魔力、すなわち命と引き換えに敵を葬りし為のモノ。だがマスターはそこいらの塵芥とは訳が違う。この方の底に眠りし魔力は計り知れない。いや、魔力だけでなくそれ以上に強大な何かが眠っている。本来であればたかが人間如きの呼びかけに応じる事など無いのだがこの方だけは別だ」
「んー、確かにこのコからケイ君に向ける呼びだされた従魔特有の敵意みたいなモノは感じられないね」
うん、アシェラトさんが言うんだから間違いねーわ。
「けれど本来なら従魔が対価を欲しないなんて有り得ない。貴様の狙いはなんなのだ?」
エラルドが俺の言いたい事言ってくれた!
ゴスロリは歓迎だけど代わりに死とか勘弁だしな。
「この方の持つ魔力は異様。本当にこんなデタラメな魔力は今まで触れた事がない…」
そこまで言うと今までずっと無表情だったネロの口端がほんの僅かに釣り上がる。
「ただ魔力を喰う存在であり、それ以外何も考えたことなどなかったのだが。どうやらやっと私の存在意義を見つけたらしい。きっと私はこの方の力となる為に今まで魔力を蓄えてきたのだろう。と言うわけでマスター。これからよろしくお願いしますね」
途中で俺の方に向き直ると無表情の中にも微かに嬉しそうなネロの顔がこちらを見ていた。
よくわかんねけど言う事聞くってんなら困りはしないだろうし。
実際今の説明聞いたら結構凄い奴みたいだしな、待望のロリ枠だしね!
でも今まで使えてた魔窟オーラが無くなっちゃうのは不便だなぁ。なんて思ってると、
「…あっ、くっ…、ううっ…」
おいロリどした?いきなりお顔が真っ赤だぞ?…って!ん?!んおおおおお!?!!
なんかネロに持ってかれたと思ってたオーラが体の内側から出てきたよ!?
今まで纏ってた奴より量多いんじゃねコレ?おおお、すっげ!これがレベルアップ!?
あれか、ネロとは今同期中みたいな感じだからネロもこのオーラみたいなのの影響受けてるんだな。
…おぉ、収まってきた。
ネロもなんも無かったみたいにお澄まし顔に戻ってるし。
レベルアップってファンファーレが鳴ってステータスがちょこっと上がってあわよくば新技取得的な流れを想像してたけど、俺の今回のレベルアップのイベントちょっと引く位凄かった。
まぁ今までのレベルアップも大概だったけどな。
「それじゃ無事に争いも解決した事だし、ついでにケイ君に伝えたい事があったんだよね」
そうだよね。わざわざ戦神さまがケンカとめるだけの為に走ってくるなんてパシリみたいな事してらんないっすもんね。でも伝えたい事ってなんだろ?あんまいい予感しないんだよなぁ。
「せっかく魔族と仲良くやってる所申し訳ないんだけどさ、ケイ君今の自分がどれだけ異様な存在かって気付いてる?会ってみてボクも確信したんだけどはっきり言って今のケイ君は下手をするともう下級の神と同等かもしくはそれを凌ぐ力を持ってる。それでそんなケイ君の存在に気付いちゃった魔王がいてさ…」
魔王?おぉ…。魔王!?やっぱそーゆー感じの方もいるんですね。
「魔王ラグアクナ。狡猾で残忍な魔王だよ。殺した相手の魂を喰って生きたまま自分の中に取り込むのが趣味みたい。そんなアブない魔王がケイ君に興味もっちゃったみたいでさぁ。っていうかもうケイ君を探しに乗り出してるみたいで。厄介な奴に目を付けられちゃったみたいなんだケイ君」
「だから、いつまでもここに留まり続けてたら見つかるのもきっと時間の問題だろうし…」
なんでだ…?おかしいな…。
魔王とか、狡猾で残忍とか…。ぜんぜん怖さ感じないんだけど。
何が来ても負ける気がしないって言うか、俺こんな自信家だったっけな?
「ラグアクナ!?ケイさま!すぐに逃げて下さい!あれはキケン過ぎる!」
ホルンさんもこんな事言ってるんだけど俺からしたら見たことない魔王より、相当奇っ怪なフォルムに変形してる魔改造ホルンさんの方がコワイから大丈夫だよ。
エラルドもパイラトの話を聞いたらなんかそわそわしてるし。
んで隣にいたヴィアドは…、ん?ヴィアドどしたの?なにそんな威嚇してんの?
その時丁度ヴィアドが威嚇していた方向の空間がぐにゃりと歪んだ。
「逃げる?そんな必要はありませんよ?せっかくここまで来たのに素材に逃げられたら大変じゃないですか?」
ニターっと不気味な笑みを口元に張り付かせながら、趣味の悪いスーツ姿で口元以外を覆うようなSMっぽい仮面をつけた男が歪んだ空間から這い出してくる。
「なぜこのような辺境に戦神まで一緒にいるのかは分かりませんが、まぁ問題ではないでしょう」
男がおっぱいラトさんに目配せをしたかと思うと、その刹那さっきまでそこにあったハズのアシェぱいさんの姿が消えていた。
「さすがに戦神とまともにぶつかったら命がいくつあっても足りませんしねぇ・・・」
呟きながらそいつが辺りの面々を見渡すと、どうした訳かそいつの視線の先にいたエラルドがアシェラトさんと同じようにこつ然と消える。
「ケイ!キヲツケロ!ミナ バラバラニ テンイサ…」
そこまで言いかけたかと思うとヴィアドも消えてしまった。
「初めまして、私が先程ご紹介にあがりましたラグアクナと申します。魔力だけでなく顔も体も申し分ない。どの種族でも子供の血は美味ですからねぇ。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?ちゃんと貴方も私の中に取り込んであげますから」
まぁさ、ちょうどいいんじゃない?
俺も自分がどんだけ変わっちゃったのか気になってた所だったしね。
ガワは可愛い美少年だけど中身は30の腐ったオッサンのサイコパワーを見せてやろうじゃないの。