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『遠い星の話』  作者: 五木史人
3章
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11話 猫と綺麗な人形

ー機械たちの憂鬱ー



人類に似た生命体の乗る宇宙船から、


猫が逃げ出したというニュースが、


連日報道されていた。


この惑星の地上には、動物は存在しない。


ゆえに猫が、食べられるものが存在しない。


「猫?」


人類とともに滅びた動物だ。


首都の花売りアンドロイド・サクラは、遠い記憶にあった猫を想った。


人間時代に飼っていた猫は死んでしまった。


「見つけたら撫でたいですよね」


客とそんな会話で盛り上がたりしていた。




反乱分子によってカーン少佐が消去されたと言う情報は、


電力供給がままならない混乱の中、


当局による報道管制の網をすり抜けて、首都住民の知ることとなった。


当局は急遽記者会見を行い、カーン少佐の消去原因を、

『掃討作戦中の落盤事故による消去』

と偽りの説明をした。


その偽の発表が、さらに首都住民を不安に陥れた。


花売りアンドロイドのサクラは、


電力供給の途絶えたがちで薄暗い花屋の店内で、


売り上げの計算をしていた。


首都でも

『カーンは反乱分子に消された。』

『反乱分子が攻めて来る。』


『首都のアンドロイドはみんなスクラップにされる。』

『政府要人は、首都から逃げ始めてる。』

『もう、誰も俺達を守ってくれない。』


『皆の衆、消去のお覚悟を・・・。』

と不安を煽る声が聞こえてきていた。


店の常連客のミカは、花の様にあどけなく、


そして優しい面影のサクラを見ながら言った。


「反乱分子も、最初は良かったんだけど、


発電所爆破なんかしちゃたらね・・・なんか嫌な感じじゃない?」


「でも、あの人類に似た生命体を、


この星から追い出したくないって言う気持ち、解る気がする。」


「私もあの人類に似た生命体を見た時、


なんとも言えない懐かしい気持ちになったし、


あの人たちを守りたいっとは思ったよ。


でも・・・それはそれじゃない。


だって、街は真っ暗だし、もしかすると私達だって動けなくなるかも知れないでしょう。


私達みたいな底辺から電源カットが始まるって噂よ。


どうする、動けなくなったら・・・私達ただの置物の人形よ。」


「そうね」


サクラは、売上を記しながら軽く相槌を打った。


ミカは、サクラの花の様に優しくあどけない面影を見ると

「サクラなら綺麗な人形になりそう・・・。」


「え~、そんな事ないよ。」


店内の明かりが消えた。ミカは闇の中で


「まただ・・・。」


と、首都は、時折、不安に満ちた暗闇に包まれた。




つづく

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