10話 夢心地
決戦となる場所へ先についた方が、有利なのは、
機械文明だろうが人間文明だろうが、
猫の文明だとしても、共通した理屈なのかも知れない。
ソフィーが、鍾乳洞のほぼ全貌の地形マップを、
手に入れたのは、カーンが鍾乳洞に入った直後だった。
「仕事の早い連中だ・・・」
ソフィーは、破壊され頭部ユニットの奥で、
新しい部下たちを褒め称えた。
今、その特殊機械兵、通称孤独なアローン兵に守れてて、
鍾乳洞の暗闇を見つめていた。
それにしても、アローン兵の機体の金のかけ方が半端ない。
金属がまったく使われていない。カーボンとセラミックの塊にだ。
評議会が人工知能の奥にある意思を信じていない証だ。
お前らだって人工知能だろうに・・・
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ソフィー率いる特殊機械兵と、
カーン少佐率いる装甲騎兵の戦闘は、
鍾乳洞入り口付近に潜んでいた、
特殊機械兵の銃声から始まった。
その銃声の音を合図にしたかのように、
少佐と装甲騎兵達は、浮遊感に似た非現実的な感覚に襲われた。
人なら『夢心地』もしくは『陶酔』と表現するだろうが、
夢を見ない機械たちには、その感覚を表現する言葉が無かった。
少佐は夢心地の感覚の中、
目の前で銃撃され部下が砕け散っていく様子を、
暗い映画館の中で戦闘シーンを見ているかの様に、
その様子を眺めた。
今や装甲騎兵は背後と側面からの銃撃に晒されていた。
装甲騎兵の中には、闇雲に銃を乱射している者もいたが、
組織的な反撃は皆無だった。
1機・・・2機、3機と、部下が砕け散っていくのを、
映画の中の出来事のように見ながら、
少佐は、
「これは現実か?なんだこの心地よい浮遊感は?」
と考えを巡らしていた。
指揮官として現状を認識できたのは、部下が全滅し自らも、
水が流れる鍾乳洞の地面に倒れこんだ後だった。
抵抗する術を無くした少佐は、
鍾乳洞の奥から特殊機械兵と伴に現れたソフィーの姿を見た。
「お前が反乱分子のボス・・・」
少佐の言葉が終わる前に、
ソフィーの怒りに満ちた意思が伝わった特殊機械兵のセラミック製の足が、
少佐の記憶装置を踏み潰し、少佐の意識は、この星から消された。
つづく
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