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死んだソーダは今日も教授の元で働いている。  作者: 有馬とお
事件

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第5話 判決確定

 年が明けて、教授の家に再び二人の刑事がやってきた。

 教授は応接室に二人を促した。


「狭間の控訴と上告が棄却されました」


 席につくや否や、若い刑事は言った。

 教授はお茶をだそうとして、立ったままだ。


「これで有罪判決の確定です」


「……良かった……」


 教授がため息と共に吐き出した。

 ソーダに寄り添う。


「もう刑務所にいるんですか?」


 僕が聞くと、若い刑事は首を振った。


「もう少ししたら、ですね」


 ソーダを見やる。

 結んだ唇の端が下がっていた。


「嬉しそうじゃありませんね」


 背もたれに体を預けて若い刑事が言った。

 ソーダは返事をしなかった。

 若い刑事は唇を人差し指で叩き始める。


「宗田君は地縛霊なんですか?」


 若い刑事は指を止めず、じっとソーダを見つめた。


「おい」


 年上の刑事が低い声を出した。

 ソーダは困ったような顔をしていた。

 若い刑事は膝に手を置いて身を乗り出した。


「安心してください。 狭間はもう、刑務所に送られるだけです」


「おい」


 年上の刑事は再び低い声を出し、さらに何かを言おうとした若い刑事を制した。

 年上の刑事は口数こそ少ないが、いい人かもしれない。

 若い刑事は「なぜ?」と言う顔をしている。

 年上の刑事はため息を吐いた。


「長居しましたね」


 そう言って席を立つ。

 若い刑事は、目を見開いてからそれに倣った。


「もう来ることはないでしょう」


 年上の刑事は続けた。


「お達者で」


 そうして、頭を下げて帰って行った。

 若い刑事は


「またね」


 と手を振っていった。

 誰に言ったのか分からなかった。


 二人の刑事を見送ってから、教授が口を開いた。


「宗田君、親御さんに会いに行ったらどうかな」


 ソーダが眉根を寄せた。

 嫌だと思っているのが、よくわかる顔だった。


「最後のチャンスですよ?」


 教授が諭す。


「……何を言えばいいのか、わかりません」


 ソーダは眉根を寄せたまま言った。

 教授は言葉を発しようとしたみたいだが、息だけが漏れた。

 僕もいい言葉が浮かばない。


「……育ててくれて、ありがとう、とか」


 教授が絞り出したというような声音で言った。

 他人に言われたくないんじゃないかな、と僕は思った。

 ソーダは唸った。


「夢枕になら、立ってもいいかも」


 こちらも絞り出した様子だ。

 教授の顔が緩んだ。

 そうして、


「寂しくなります」


 と続けた。

 ソーダが僕に目配せした。


「今晩、ご両親のところに行くんですよ」


 教授が念を押した。






 次の週になって、ようやく僕は教授の家を訪れた。

 ソーダのいない空間に来るには勇気が必要だった。


 展示室に向かうと、受付にソーダが座っていた。

 僕に気がつくと軽く手を上げた。

 思わず応じる。

 そのおかしさに気がついて、僕は咳払いした。


「……まだ親のところに行ってないの?」


 ソーダが成仏したくない素振りを見せていたのを思い出していた。


「行ったよ」


 ソーダの返事に僕は戸惑った。


「なんでいるの?」


「わからない」


 僕はますます困惑した。


「成仏しろよ」


 言うとソーダはイタズラが成功でもしたように笑った。


「まだもうちょっといるよ」


 今、なんて?


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