10話 盾の守護者の強化
◆盾の守護者たちの願いと、再構成◆
ある日、リックさんたち〈盾の守護者〉のみんなが「相談がある」と言ってやって来た。
ラピスの戦いを見て、自分たちのギフトも作り替えてほしい──そう頼まれた。
ちょうど村に常駐してくれる冒険者が欲しいと思っていたところだったので、その条件で僕は了承した。
リックさんのギフトは【剣人】で、属性は火。マリンの元のギフトと同じだ。
ノーリスさんは、何度も助けられた【硬化】。
ディアーズさんは【火球弾】。
ハーヴィさんは【生命強化】。
どれもハイノーマルのギフトだ。
これから一人ずつリメイクしていくつもりなのだけど、ひとつだけ気がかりな事があった。
ラピスやマリンのギフトを作り替えた時の、あの二人の反応だ。
当然、リックさんたちもあの場面を見ていたわけで──
「坊ちゃん、再構成は一人ずつ、部屋でやってくれないか」
そう提案されてしまった。
僕自身、あの時は本当に恥ずかしかったので、もちろん即OKした。
……その瞬間、背後から鋭い殺気を感じた。まるで、熟練の暗殺者に狙われたかのような鋭い殺気だ。
振り返ると、ラピスがものすごい形相でこちらを睨んでいた。
なんとか宥めることには成功したけれど、正直、心臓に悪かった。
◆進化するギフトたち ― 剣豪・反射・癒し◆
まずリーダーのリックさんの剣人から作り直した。 マリンの剣豪は速さの強化だったけど、リックさんは攻撃力の強化だ。
これでこれまで攻撃が効かなかった魔物にも、攻撃が通るようになる。
次はノーリスさんで、硬化のギフトを作り替えたら反射の硬化が付与されて|反射《リフレクトになった。相手の攻撃を防ぐだけだったノーリスさんは「これで俺も魔物にダメージを与えられる」と喜んでいた。
その後はハーヴィさんだった。
ラピスのたっての希望で、ディアーズさんの時に立ち会いたいと言ってきた。
本人も"怖い"からと、OKした。僕は襲ったりなんてしないってきっぱりと言ったんだけど、ラピスとディアーズさんに"そう言う意味じゃない"って言われた。
どう言う意味だろう?
ハーヴィさんは、対象の治癒力を上げる生命強化というギフトだ。リメイクをすると、人ではなく、ハーヴィさんの立っている場所の周りに治癒力をあげる癒しの空間というギフトになった。
さて、いよいよディアーズさんの番だ。
「はい、男連中は出た出た」
「なっなんだよ、急に」
「俺たちの時もお前はいただろ?、別に気にしなくても…」
「リックのスケベ!」
ディアーズさんの言葉にリックさんが地味に傷ついていた……
さて、ディアーズさんのギフトを再構成しよう。
「ふぅ、終わりまし…」
たと言いかけて、僕はぎょっとした。
ラピスからは心臓も凍りつくような視線が、かたやディアーズさんからは恋する乙女のような熱いまなざしで見つめられていた。
相反する二つの視線を向けられて僕は戸惑った。
とっとりあえずディアースさんのギフトのリメイクが終わった。内容はこれまでのファイヤバレットがフレイムピラーになった。
純粋に炎の威力が各段に上がっただけではなく、火柱という形で継続ダメージを与える代物に変わっていた。
パーティ盾の守護者 ギフトの進化
・リック :剣人(HN) → 剣豪(R)
・ノーリス :硬化(HN) → 反射(R)
・ハーヴィ :生命強化(HN) → 癒しの空間(R)
・ディアーズ:火球弾(HN) → 炎柱(R)
◆森での実戦◆
リックさん達のたっての願いで村の近くの森に狩りに来た。
再構成で作り直したギフトを試してみたいといって聞かなかったのだ。その気持ちは僕も十分わかる!どのくらい強くなったのかはやく確認したいよね。
リックが一歩踏み出した瞬間、空気が震えた。
進化したギフト【剣豪】が生み出す“攻撃力強化”は、彼の剣筋そのものを別物に変えていた。
魔物が咆哮しながら突進してくる。
リックは一切退かず、ただ静かに剣を構える。
次の瞬間——
重い肉を断つような音とともに、魔物の巨体が真っ二つに割れた。
「これまで通らなかった攻撃が……嘘みたいだな」
リックは驚きと喜びを隠しきれない表情で剣を見つめていた。
ノーリスの前に立つのは、分厚い甲殻を持つ大型魔物。
以前ならただ耐えるだけだったが、今は違う。
魔物の爪がノーリスの胸を叩く。
その瞬間、衝撃が反転し、倍の勢いで魔物へ跳ね返った。
「おおっ!? 俺、攻撃してねぇのにダメージ入ってる!」
魔物は自分の攻撃で吹き飛び、木々をなぎ倒して転がっていく。
ノーリスは拳を握りしめ、少年のように笑った。
ハーヴィが一歩踏み出すと、彼の周囲に淡い光が広がった。
新しいギフト【 癒しの空間】が発動し、まるで聖域のような空気が生まれる。
仲間が攻撃を受けても、光の中にいるだけで傷が塞がっていく。
「すごい……立ってるだけで回復していく……!」
リックが驚きの声を上げる。
ハーヴィ自身はいつも通り穏やかに微笑んでいた。
「皆さんの力になれるなら、私はそれで十分ですよ」
戦場の中心に立つ彼は、まるで守護天使のようだった。
ディアーズが杖を構えると、地面が赤く光り始めた。
「いくわよ……【炎柱】!」
轟音とともに、魔物の足元から巨大な火柱が噴き上がる。
炎は魔物を包み込み、逃げ場を与えず、継続して焼き尽くしていく。
「ひゃ、火力が……前の比じゃない……!」
リックが思わず後ずさるほどの威力。
ディアーズは頬を赤らめながら、ちらりとこちらを見てくる。
「……どう? ちゃんと使いこなせてる?」
その視線は、まるで恋する乙女そのもの。
期待と不安が入り混じった、甘いまなざし。
◆二人の火花◆
——だが。
その瞬間、背後から“ギリッ”という音が聞こえた。
振り返ると、ラピスが頬を引きつらせながら、ものすごい形相でこちらを睨んでいた。
「……坊ちゃま。なんでディアーズさんの時だけ、そんな顔をしているのでしょう?」
「えっ、してないよ!? してないって!」
「ふーん……?」
ラピスの嫉妬は隠す気ゼロで、周囲の空気が一気に冷え込む。
対してディアーズは、ラピスの視線など気にも留めず、さらに一歩近づいてくる。
「ねぇ、もっと見ててよ。あなたが作ってくれたギフトなんだから……」
その甘い声に、ラピスのこめかみがピクッと跳ねた。
「……ディアーズさん、距離、近いです」
「え? そうかしら?」
「近いです!!」
二人の間に火花が散り、僕は思わず一歩後ずさった。
魔物より怖いのは、どうやらこの二人の視線らしい。
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