10.残酷なのは変わらない
「はい、おしまい。リリア」
「神聖なる光よ、魂を浄化せよ《浄化の光》」
ロッドを構え、ユリウスに剣を構えられたまま動けないアーサーに向けて魔法を放つ。
暖かく感じるその光は呪いを手に入れたものには灼熱の炎のように熱く感じられるらしい。
アーサーはその光によって消されようとしてもなお呪詛の言葉を叫び続けていた。
「哀れだな、アーサー。落ちる前のお前はどこにいったのか」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ!! お前に何がわかるという! お前と比べられ、出来損ないと言われ続けたオレの気持ちが!! 誰にも見られず、見られたとしても必ずお前と比べられるオレの気持ちが!! お前にわかるとでも思っているのか?!」
「……ワタシはお前という弟を持った覚えはないぞ? アーサー」
神とはときには優しく、ときにはとても残酷だ。世界の調和を保つために生み出された種族の生き残りは永遠の命を与えられ、不必要な記憶を消されかつての家族と敵対している。それを理解できるのは記憶のある敵となった家族。かつて親しくしていた家族はいつの間にか僅かな負の感情を焚き付けられ操られる。記憶をいじられた後、死の間際で記憶を取り戻す。
(そう考えると、神も、アイツも変わらないな)
何もできないまま家族に殺される。殺す本人は思い出せない。何かのはずみでその人物以外が思い出しても、その人物には何も届かない。
(俺もなにかの記憶を失っているのだろうな)
超越した何かになるというのはそれなりの代償が必要になる。それは命か、死か、それとも感情か。はたまた、もっと大切なものか。
考えたところで意味はない。俺達は所詮人形。神によってポッカリと空いてしまったその穴を埋めることなどもう俺達にはできないのだから。
△▼△
「やっと、ついた」
ぜえぜえと息をするカイル。魔力は消費していなものの自分たちの倍以上の敵を倒すのにはかなりの労力を要する。いくら、長旅に慣れているカイルといえどかなりキツイはずだ。
カイルは呼吸を整えると奥にいる人影へと目を向ける。
1つかと思われた人影はいつの間にか2つになり踊っている。
剣を手にフィルがカイルの横を通り過ぎていく。その後ろに続いてカイルたちも足音を立てないようにする。
「お前たちは相変わらず楽しそうだな」
「おやおや〜」
「フィリップくんじゃないですかあ〜」
「しけたつらしてますねえ〜」
「ワタシたちみたいにもっと気楽にいきましょうよ〜」
赤い長髪の子供に、青い短髪の子供。赤髪の子供が鎌を構え、青髪の子供が弓を構える。
彼らはとても楽しそうに、笑顔で踊っている。
「まあまあ、そんなに焦んなって。それに、今回はオレだけじゃねえぞ?」
「んん〜? それはどういう意味で……そういうことですかあ〜」
フィルに言われこちらに目を向けた赤髪が見つめるのは唯一人。カイルだけだ。
今までの経験がそうさせてきたのかはわからない。カイルは無意識に剣を構えていた。カイルの本能が告げていた。「この敵は今までとはレベルが違う」と。
大きく息を吸い、体に空気を巡らせる。自分が相手にするのは一人だけで十分だ。
「覚醒一歩手前と言ったところですか」
「ここに来たのが運の尽きですね」
「芽は今のうちに摘み取っておくのがいいのです」
「火種になりそうなものははやく消しておくのです」
「ワタシが」「ボクが」
「「相手をしてあげましょう」」




