9.一方その頃……
お久しぶりです。
一方、リリアたちはというと……。
「彼らに癒やしの祝福を。《癒やしの雨》」
「……腕を上げたな」
カイルたちと並行する形で別の敵の根城に入り込んでいた。
リリアの魔法技量に感心したのはノアだった。
「それはそうだろう。教えたのはディーネだからな」
「なんでお前が誇らしそうなんだ」
誇らしそうにディーネのことを褒めちぎるユリウス。そんな彼の言葉に照れてしまい、赤らめた顔を隠すディーネ。そんな彼らに呆れるノアと苦笑するリリア。
「――すまないな。俺達のせいでこんな役目を追わせてしまって」
ふと、ノアが悲しそうな、辛そうな顔をしてリリアに謝った。
「いえ。ですが、嘘を申してよかったのですか?」
リリアは彼の謝罪をやんわりと返すと逆に聞いた。
その問いに彼はぐっとつまった。
彼、ノアがカイルに嘘をついたというのは事実だ。
本来、100年前に神獣というものは存在しなかった。なら、彼らはどうして生まれたのか。
彼らはもともと、初代勇者の仲間だった。彼らはもともと人だったのだ。
当時の勇者、フィリップはその呪いに対抗するために神々は聖魔法を授けた。
原初の呪いを操る呪術師は彼らの敵国の王だった。
王はとある少女に執着していた。その少女は世界で重要な役割を持つとある一族の末裔だった。
特殊な力を持ち、人より長い寿命を持つ4つの種族は数を減らし、残すはたったの6人だけだった。そのうちの5人こそ初代勇者の神話にある彼らのことなのだ。
世界の均衡を乱す、呪い。それを生み出した呪術師を倒すために彼らは戦った。
しかし、一人の少女は殺され、王が執着していた少女は王の道連れにあい、殺された。
2人の犠牲を出してなお、王の呪いは消えなかった。呪いが完全に消えるまで、死ぬことも許されないまま100年が過ぎた。死んでしまった少女の恋人である男は妹とその親友の孫に当たるリリアたちを育て上げた。
「いつしか、神獣と呼ばれるようになって、そんな嘘の伝説が浸透して。まだ終わってなどいないのに。そして、自分の妹の孫に迷惑までかけている」
「……私は、聖女としてこの役目を果たすつもりです。祖母から受け継いだこのペンダントに恥じないよう私はここで終わらせます!」
「リリア……」
「ですので、隠れていないで出てきてもらいませんか? 鉄壁のアーサー殿」
「その男が気づいておるのに仕掛けてこないとはどういうことだ? ユリウス」
暗闇から姿を表したのは褐色肌に白髪の大男だった。アーサーと呼ばれた男は手に持っていたやりをユリウスに向けるとそう問いかけた。
「弟子の成長具合を確かめたくてね。なんだい、負けるとわかっているのに勝負を挑むのかい?」
「ハッ、笑わせてくれる。まあ、いいだろう。憎き貴様を殺したあと、そこの聖女もろともころしてやるわ!」
ギィン! という派手な音とともに戦闘が開始される。ユリウスはあくどい笑みをうか出て、アーサーは怒っているのか顔を真っ赤にしながら戦っていた。
(まんまとユリウスの策にはまったな)
「リリア、ユリウスが合図をしたらすぐに動けるように構えておけ」
「了解しました」
「ディーネは少し周囲に結界を張ってくれ」
「はーい」
ユリウスは二人の戦闘の様子を見ながら心のなかで思った。
(相も変わらず、自己中心的だな。アイツは)
窓から見える景色にはあの頃と変わらない古くて大きな黒い塔がそびえ立っていた。




