40.飼い主、見習い冒険者になる
「いや……はなれるのはいやだよ!」
僕は近くにいたケルベロスゥをギュッと抱きしめる。
やっとできた僕の友達だ。
今じゃケルベロスゥを家族だと思っている。
『俺は絶対離れないからな!』
『僕もずっと一緒だから大丈夫!』
『ココロをいじめたら許さないわよ!』
受付の女性をケルベロスゥはギリッと睨みつける。
「まぁ、これは国の制度が悪いというのか、一般的に魔物を管理するのにどこかに属していないといけないんだ」
「そうね。例えば冒険者や魔獣騎士団とかがそれに当たるかしらね」
「まじゅうきしだん?」
「ああ、騎士団と同じだが魔獣を操る騎士団も中には存在する。そういうところに所属しないと、魔物や魔獣を使役してはいけないんだ」
そもそも魔物と一緒に暮らすには、どこかに所属しないといけないのが国の決まりらしい。
それで僕を見習い冒険者として登録させようとしていたってことだ。
『僕達が一緒にいるにはどこかに所属する。見習い冒険者になれば、身分証明書ももらえるってことだね』
『どういうことだ?』
『とりあえず登録しろってことよ!』
『兄さんと姉さんはわかってるの……?』
『知らん!』
『どうにかなる!』
ベロは大きなため息を吐いていたが、きっと僕よりベロの方が理解はしているだろう。
僕も半分くらいわかっていない。
ケルベロスゥとずっと一緒にいるためにも、見習い冒険者にならないといけないってことしかわからない。
「それならぼくはみならいぼうけんしゃになる!」
「ああ、選択肢としてはそれぐらいしかないからな。そもそもその年で魔物を使役できるのがすごいことだからな」
使役が何かはわからない。
ただ、僕とケルベロスゥみたいに仲が良いことは滅多にあることじゃないらしい。
「へへへ」
『俺達は一生友達だからな!』
「かぞくじゃないの?」
『そうだよ? 兄さん、僕達は家族だ』
「マービンさんとかぞく!」
僕達はマービンを見ると優しく笑っていた。
「まぁ、お前らの面倒は俺が見ないといけないからな。またどっかに行って迷子になってもダメだからね」
ニヤニヤと笑うマービン。
「うっ……」
『あれはココロのせいだ……』
『そうよ……』
ケルとスゥがまた僕のせいにしようとしたら、おててさんとおででさんが床から姿を現した。
さっきも怒られていたのにお説教の時間かな。
見習い冒険者になることが決まった僕は受付の女性に言われた通りに登録していく。
って言ってもほぼやってもらったから、僕は何もしていない。
「とりあえずココロくんはこれで見習い冒険者だ。あとはそっちのケルベロスゥと謎の手だよな……」
受付の女性とギルドマスターはどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
まだ何か問題があるのだろうか。
「実はケルベロスゥ達の登録はここではできないんですよね」
「えっ!?」
『へっ!?』
その言葉に僕とベロは驚いていた。
ケルとスゥはいまだにおててさんとおででさんに怒られている。
「どういうこと?」
「ここでは魔物の登録をしていないのよ。だから王都にまで行ってもらわないといけないんですよ」
「おうと……?」
王都ってどこかの町の名前なんだろうか。
聞いた感じ王様とかがいるのかな?
「王都か……」
マービンは小さな声で呟いた。
一瞬、パパの顔が曇ったような気がした。
「なにかあったの?」
「ん? いや……何もないぞ」
そう言ってパパは僕の頭を撫でた。
マービンが僕の頭を撫でたことがあったかな?
嬉しくて見上げようとしたら手で押さえつけられて顔を上げることはできなかった。
『パパさん!』
『僕達にはないの?』
『せっかくだから撫でても良いわよ?』
ケルベロスゥもマービンに近寄ると、頭を撫でてもらっていた。
パパよりも少し雑に撫でるが、これはこれで胸がポカポカとしてくる。
「ココロは王都まで行きたいよな?」
「ケルベロスゥといっしょがいいからいく!」
『俺も行くぞ!』
『僕も行く!』
『付いて行っても良いわよ?』
「はぁー、なら王都まで散歩でもするか!」
マービンは再び大きなため息を吐いたが、一緒に王都まで行ってくれるらしい。
この町も田舎って言っていたから、王都まで遠いのだろう。
さすが僕達のパパだね!
「では王都までどうやって行くのかだけ決めておいてくださいね」
僕達は魔獣ケルベロスゥを魔獣登録するために、王都に行くことになった。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします(*´꒳`*)




