39.飼い主、見習い冒険者とは?
『うぁー腰が痛い』
『腰痛持ちにはきついな』
『脚もパンパンよ。明日むくみがひどいわね』
冒険者ギルドに着く頃には、ケルベロスゥは疲れ切っていた。
「おはようございます!」
まずは挨拶をして中に入っていく。
事前にマービンから挨拶をしておけば問題ないと教えてもらった。
『ココロ、もうそろそろでお昼だよ?』
「あー、こんにちは?」
ケルベロスゥと迷子になってから、いつのまにかそんなに時間が経っていたんだね。
結局朝ごはんを食べることもなく、冒険者ギルドに来ちゃった。
「冒険者の話を聞いてご飯でも食べにいくか」
「いく!」
僕達は昨日ジュースを作ってもらった受付の女性の元へ向かった。
「こんにちは!」
「あっ、こんにちは! 今日は何かあったかな?」
「鎧のおじさんに呼ばれたの!」
「あー、見習い冒険者の登録かな。ギルドマスターを呼んでくるわね」
女性が奥の部屋に入っていくと、すぐに鎧のおじさんが出てきた。
「昨日に続いて今日も来てもらってすまないな」
「ギルドマスターがちゃんと話をしないからですよ」
「ああ、すまない」
受付の女性に怒られていた。
鎧のおじさんはギルドマスターと呼ばれているらしい。
「そもそも昨日ちゃんと紹介もしていなかったぞ?」
「あっ、そうだったか?」
「はぁー、相変わらず抜けていますね」
どうやらギルドマスターは抜けている人らしい。
髪の毛がないことを言っているのかな?
「まずココロくんだったかな?」
「はい!」
「君は冒険者に興味はあるかい?」
冒険者は武器を使って魔物と戦う職業。
男の子はほとんどが冒険者に憧れている。
僕も興味がないと言ったら嘘になる。
「んー」
でもそれはスキルを授かる5歳までだ。
自分に冒険者になれる才能がなければ、冒険者になることができないはず。
僕のスキルは〝回復属性魔法(闇)〟。
このスキルで冒険者になることができるのだろうか。
「実は君がよかったら見習い冒険者として登録してみてはどうかと思ってね」
「えっ……?」
「君にはテイマーとしての才能がある。それは冒険者としての才能でもあるんだ」
ギルドマスターは僕のことをテイマーの才能があると言っていた。
だけど、実際はテイマーとしての才能はない。
ケルベロスゥが一緒にいるのは僕の友達だからだ。
そもそも僕はテイマーが何かもわかっていない。
「テイマーって?」
「ああ、テイマーは魔物に従わせて戦う人のことだよ。例えば、スキルだと〝テイマー〟〝調教師〟〝魔物使い〟がテイマーってまとめられているかな?」
それだと僕はテイマーになれる才能はなさそうだ。
僕は横に首を振る。
「ぼくはテイマーじゃないもん」
「なぜそう思ったんだね?」
「僕は――」
『ココロはテイマーだよ!』
僕がスキルを言う前に、またベロがテイマーだと言ってしまった。
そんなに僕のスキルを言ったらダメなのかな?
やっぱり僕はいらない子なのかな……。
『でも普通のテイマーじゃないぜ!』
『私達は好きでココロと一緒にいるからね』
ケルベロスゥは僕に体擦り付けてきた。
僕が落ち込まないように慰めてくれているのかな?
「ははは、それが本来あるべき姿なんだろうな」
ギルドマスターは優しく微笑んでいた。
魔物は基本的に凶暴な性格をしているため、仲が良いというよりは従わせているって感覚に近い。
テイマーとしてはそういう姿が理想だが、そうもいかないと言っていた。
「見習い冒険者は特に危険なことはないし、町のお手伝い程度だから登録しておきなさい」
ギルドマスターは僕に見習い冒険者になるようにどうしても勧めてきた。
冒険者にならなくても良いなら、将来は安全な仕事をしたいな。
「はぁー、それじゃあ説明が少ないわよ……。ココロくんは確か身分証明書がないんだよね?」
「うん」
僕はパパとママに捨てられた。
身分証明書もママが持っているかもしれない。
「他の町に行くには見習い冒険者が身分証明書にもなるんだ」
『他の町に行くにはあった方が良いってことだね。でも僕達はずっとここにいるかもしれないよ?』
「えーっと……」
受付の女性はベロを見て何かを考えていた。
名前を知りたいのかな?
「真ん中がベロです」
「ベロくんは頭が良いのね」
『ワン!』
ベロは嬉しそうに吠えていた。
「確かにベロくんが言うように、この町にずっといるなら、見習い冒険者の登録はしなくてもいいわ」
ならなんでそこまで僕達に見習い冒険者になるように勧めるのかな?
「でも見習い冒険者にならないなら、ココロくんとベロくん達はお別れしなきゃいけなくなるの」
「えっ……」
『へっ……』
僕達は時間が止まったように感じた。
また僕は一人ぼっちになっちゃうのだろうか。
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