そうするしかない
一番始めにに我に返ったのは、やはりグィーモ。
「おはようございます。……全く。起きているのなら声くらい掛けてください。」
「悪ぃ。具合悪くて死にそうなんだ。」
「フン!そのまま死んでいいぞ、ボサボサ頭。」
「青ガッパは黙れ。ついでに呼吸するな。空気が汚れる。」
「はぁ?それはこっちの台詞だ、ボケ!てめぇが黙りゃいいだろうが。」
「グィーモ、頭のおかしいそいつをどうにかしてくれ。――俺は部屋に戻r……ッ!!」
頭を起こそうと少し起き上がっただけで酷い目眩がして、ベッドに倒れ込む。
「フン!散歩に行っただけで重症になる弱虫は俺様のベッドで大人しく寝ていろ!」
「……チィッ!!」
思い通りに動かない体と、相変わらず絡んでくる青ガッパに、思わず俺は舌打ちをした。
「カル。チャジアの塔で何があったのです?何者かに襲われたのですか?」
やはりと言うべきか、グィーモが聞いてくる。
「……寝る。」
「しらばっくれる気か?!」
「……あぁ、もちろん。お前らに話す気はない。」
隠すのは、彼らへの信頼の有無ではない。
これは俺自身の問題。他の奴には関係ない。
「夜中にコッソリと寮を抜け出し、立ち入り禁止の建物に入り込んだのですか?もし学校側に知られれば、退学も有り得ますよ?」
「……ッ!」
「そりゃあ、良い!てめぇは、ずっと目障りだと思ってたんだ!」
「……チィッ。」
こいつの願い通りになるのは癪に触るな。
「……それより、なんで俺はここにいるんだ?しかも、よりによってなんで青ガッパのベッドなんだよ。」
「あーぁ。俺のベッドが弱虫に汚されたー。」
「あ……ぅぅ……。……ご主人様をここに運んできてしまって、ごめんなさい。本当にごめんなさい。ゴミ以下の価値しかないこの命ですが、死んで償いますぅぅ!!本当に申し訳ごさいません!生きていてごめんなさいぃぃぃーーー!!!」
「……え。あ、いや……、そう言う意味じゃなくて……だな?」
クリアのいつもの暴走に、青ガッパはタジタジ。
それを俺が面白げに見てると、クリアを庇う様にフゥが青ガッパとの間に入り、何故か俺の方を向く。
「ご主人様が部屋に結界張っちゃってるから、僕らが入れないんだよ!」
腰に手を当て、俺をピシッと指差すフゥ。
「それに、ルミがこっそり付いて行かなかったらどうなってたのかな!今頃、森の獣に食べられてたかもね?」
「……お前、付いて来てたのかよ。」
「ごちゅじん様ぁ~……。」
フゥの言葉を受け、俺がルミナスを軽く睨むと彼女の赤く泣き腫らした瞳に再度涙が溜まっていく。
「…………ルミナス、俺に近づくなって言ったよな?」
「ぅぅぅー……。」
「カル、てめぇ!そう言う事言って良いと思ってんのかよ!みんな心配してたんだぞ?」
ルミナスを庇う青ガッパ。
それより彼が俺の名前を呼ぶなんて珍しい。
「そうだよ、主人!ルミが滅茶苦茶取り乱して大変だったんだからな?」
「……ユン君も取り乱して大変だったよねぇ。」
青ガッパに賛同するフレィムと、それにのほほんと付け加えるレイン。他の妖精からも非難の籠った視線が向けられる。
まるで俺は悪者扱い(笑)
実際に、(彼らを不安にさせるという)悪い事をしているという自覚はあるけど♪
でも仕方ないんだ。――――あぁならない為には。
「それより、その傷をどうにかしなければいけませんね……。」
グィーモの呟きに、それなら……と俺は口を開く。
「ルミナス。お前ならこれ治すの出来るだろ?」
「ふぇ……。」
「……ルミはあんたを治そうと、魔力の大半を使ったんだけど?」
シャドウがキョトンとしているルミナスを庇うように立ち、俺を睨む。
「分かってるよね?妖精は魔力が枯渇すると消滅するんだよ?」
しかし俺は、それを無視して言葉を継ぎ足す。
「ルミナス。お前、他人の漏れてる魔力を練って【治癒】出来るんじゃねぇのか?」
「……ほぇ。出来るですけど……。」
「じゃあ、やれ。どーせ俺の魔力、駄々漏れだろ……。……な、青ガッパ。」
確認するように彼に視線を向けると、ビックリしたようにこっちを凝視してきた。
――あーぁ。俺の異常な魔力量、青ガッパにバレちまったな。そして青ガッパ経由でグィーモにも。
「ち……近づいてもいいのですぅ~?」
怯えるようにこっちを見つめるルミナス。
「今回だけ、……特別な。」
俺の言葉を聞いた途端、パッとヒマワリのような笑顔になったルミナスから視線を反らす。他人に見詰められるのは苦手だ。
【治癒】により、俺の体が白い光を放つ。
通常【治癒】を掛けられている時、体はじんわりと温かくなるハズなのに、何故か氷水のように冷たく鉛のように重く感じる。血が大量に出ているせいではないだろう。
海の底に沈んでいく。――実際に沈んでみた事は無いが、そんな感覚が身体を襲う。
――……格好悪い。
ボンヤリとしていく意識の中、そんな言葉が泡の様に漏れ出す。
――自暴自棄に陥って、気が付いたらこのザマ。
腕一本すら満足に動かせやしない。
……そういえば昔、言われたっけ。
――貴方なんか
――お前なんか
――――イラナイ。
『お前はもう、用済みだ。』
本能的に体が震えて身の竦む、野太い声。
そいつは最後に僕の名前を呼ぶ。
『さっさと死ね。シュラ。』




