「崩壊」
〈〜〜〜〉
《主人公視点》
あれからさらに一ヶ月経った
「あら、こんなところにまで来たわ《突き落としの悪魔》が...」
「ねえ、《悪魔》って何?最近よく聞くけど」
「っ!別のところで話しましょ」
...なんか変なあだ名付けられちゃった
最近おかしいなと思ってはいたけど、まさかここまでのことになるなんて
父さんと母さんまで似たような感じになってしまった
最初は訝しげな顔をして「ねえ、山入って人に着いて行ったりした?」とか聞いてきたりしたけど最近じゃ僕のことを信じられない者を見るような目で見てくる
アリスとエイドから聞いた話だと僕は山の中に現れては人を突き落とそうとしてくる危険人物になっているらしい
「僕、そんなことした覚えないんだけどなぁ?」
これ、もしかしてロイフあたりが絡んでたりしないよね?
冤罪の擦り付けって貴族の常套手段なんだけど
「エレスだな」
急に後ろから話しかけられたので振り返るとロイフの護衛の一人が立っていた
「...?たしかに僕はエレスだけど」
「主からの命令だ。拘束させてもらう」
そう言われるとあっという間に捕まってしまった
「なんムグッ」
なんで?って聞こうとしただけなのに布で口を塞がれた
「黙っていろ」
色々と酷くない?
〈〜〜〜〉
「着いたぞ」
そう言われて周りを見ると広場に柵みたいなのが何本も立ってて真っ白な馬もいた
あとなんか皆凄い形相僕のことを睨んでる
どうしたんだろう?
「お前エレス!この人殺し!」
「よくもお父さんを!」
「お父さんを返してよぉ!」
お父さんを返して?
何の話?
「皆の者、聞いてほしい!」
ロイフのその一言で皆が静かになった
「今連れられてきたエレスは森で何度も人を突き落とそうとしたばかりか、先ほど狼の群れを森の深くで休息を取っていた者達の元へ誘導し、皆殺しにした」
えぇ?そんなことした覚えないし無実なことはこの護衛の人も知ってるはず...
「報告しろ」
「はっ、確かに山の麓で大笑いしていたこの子供を捕えました」
いやいたの真逆だし笑ってもないんだけど!?
「お父さんを殺しておいてよくそんなことできるわね、この」
「「「「「「ヒトゴロシ!!!」」」」」」
「くつわを外せ」
「御意に」
口元が解放され、やっと喋れるようになる
「いや僕はやってな」
「うるさい黙りなさいよヒトゴロシが!」
──ゴンッ
罵声と共に石が飛んでくる
「ア、アリス...?どうして」
「あんたが本当にヒトゴロシだなんて思わなかった!さっさと処刑でもされなさいよこのクズ!なんではこっちのセリフよ!!」
なんで、君は僕を信じてくれていたはずなのに
「エ、エイ」
「ごめんだけど黙っててくれるかな?じゃないとうっかり...」
ああ、なんで、なんで君までそんな表情を僕に向けるんだ
「殺しに行きそうになる」
「カイラ!」
カイラなら、カイラならもしかしたら
「...」
下を向いて俯いている
あれは、あれは真実を知っている顔だ!
申し訳なさそうな、憐れむような表情は
「ちょっとカイラ!あんたも見たでしょ!?父さんのく、首を川に放り投げ、投げて」
「笑うあいつを!!!」
「そんなこと知らな」
「もういいだろう、口を閉じろ」
「ムグゥッ!?」
また布で口を塞がれた
「私の部屋に運べ」
「ですが」
「麻ひもで雁字搦めにして熱した鉄板の上にでも座らせておけばいいだろう」
「...かしこまりました」
〈〜〜〜〉
熱い、痛い、焼ける、灼ける、ヤケル
「ほう、この状況で泣き叫ばないとは奴隷にしては根性があるな」
痛い、痛い、ヒフがハガレル、ニクがヤケル
「おい、背中に石を乗せてやれ。うんと重いやつだ」
──ズンッ
「ぎやあぁっ!」
「やっと叫び声を上げたか」
「お前が全て仕組んだんでしょ」
「そうだ」
イタイ
「そうだ、コレを見せてやる。おい、アレを持って来い」
──ゴトッ
「お前の父親だ。あの間抜け共はお前がこれをやったと思っているらしいな?」
父さんだ
でも、
カタメがナイ、アゴがナイ、ウデもアシもハラワタもナイ
ホネがミエテイル
「あ゛あ゛あ゛あぁぁぁッ!!!!」
「僕が断わったからか!?それだけ、それだけの理由なのか!?」
「うるさい...舌を抜いておけ」
──ブツッ、ブチィ!
「あ、あ」
ユルサナイ
ユルサナイ
「祭りの準備をしろ」
外に出される
「よくも!!」
「さっさと死ね!」
「お前なんか産まなきゃ良かった!!」
──ワーワー!!
「皆の者、これより極悪人エレスの処刑を執り行う!」
「首を落とせ!」
「火炙りだ!」
「処刑方法は決まっている!」
「静まれっ!!」
──シンッ
「さて、説明をする。この馬は見事な白さから神の御使であろうと大事に育て上げられた白馬だ。そしてこの馬を使って処刑を行う」
「この馬は善人には決して危害を加えないが悪人に対しては後ろ蹴りを繰り出そうとしたり踏みつけようとしたりと凶暴になる」
「そこでこの馬でこの広場を13周する。乗り手は私だ。その周回で一回も踏まれなければ解放する、その後は預かり知らんが。この方法で処刑を行う!異論は認めん!」
──おお、それなら
──乗り手がロイフ様なのも安心だ
「では刑を執行する」
〈〜〜〜〉
──パカラッパカラッ
──ドカッ
「〜〜ッ」
イタイ
──パカラッパカラッ
──ドゴッ
「ッ!」
イタイ、クルシイ
〈〜〜〜〉
──パカラッパカラッ
──グシャッ
「...」
肉が潰れた
腕が千切れた
──パカラッパカラッ
──グシャッ
「...」
お腹が冷えていく
ドロリとしたしたものが流れていく
〈〜〜〜〉
「さて、結果としては全ての周回で踏まれた。これは彼が大罪人であることの立派な証左である!」
「ロイフ様万歳!」
「ああ、感謝します神よ!」
〈〜〜〜〉
《ロイフ視点》
「終わったか」
「お疲れ様です...アレは如何しましょうか?」
「そうだな...山にでも捨てておけ」
「承知いたしました」
〈〜〜〜〉
《主人公視点》
──ドサッ
「ま、お気の毒ってやつだな」
「ロイフ様に目を付けられたのが運の尽きだったってこった。」
「よしっ、仕事終わりぃ〜!村で適当な女抱こうぜ!」
「いいな!俺はあの──」
〈〜〜〜〉
──グチャッ、グチャッ
夜も更けた
体が冷たい残った腕も、指も動かない
腹は狼に食われてる
あア、ここデシぬのか
「あー、あ」
シねない
そう言おうとしたはずなのに舌がないからか喋れない
もう意識が遠ざかっていく
なんで?
なんで冤罪を着せられて殺されなければいけなかったの?
なんでやってもいないことで恨まれなきゃいけないの?
なんで関係ないことで友達から失望されないといけないの?
なんで?
ナンデ¿
いや、分かりきってる。
アイツだ、ロイフだ!
アイツが僕に対して腹いせに冤罪を着せたから
だから僕はこんな目にあってる
全部、全部アイツのせいだアイツがやったんだ
僕が村から孤立したのも、僕がアリスやカイラ、エイドから恨まれるようになったのも
元はといえば僕を逆恨みして悪人に仕立て上げた、父さんを含めた村のみんなを殺してその罪を僕に着せたアイツのせいだ
全部アイツの掌の上だったんだ
みんなに僕に対して疑いを持たせて不信感を持たせて、そこに恨みを持つようなことを起こす
そしてその犯人に仕立て上げる
それで誰もが僕を恨み、殺意を抱く
あははっ!
アハハハハッハハッ!!
ああ、なんて滑稽、なんて愉快
大して抗おうともせず、面倒なことを避けて無関心を貫いて、
その結果がアイツの、ロイフの思い通りの道化になる末路!
ああ、
なぜだろう?
怒るべきなのに、
いや、無性に腹が立つし恨んでもいる
今すぐアイツを僕と同じ目に合わせてやりたい
殺さず生かして見せ物にしてやりたいそれなのに
どうして僕は今
「あ、っはは」
笑ってるんだろう?
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