「懺悔」
《カイラ視点》
「あら、匂うわね?」
「ああ、あの子が出てきたからよ」
「あらほんと、何でいるのかしらねぇ」
「...」
顔を伏せ、ご近所のヒソヒソ話から逃げるように街へ繰り出す
「いらっしゃーい!何が欲し...ちっ、お前かよ、なんか適当に買ってったらさっさとどっか行け!客が来なくなる!」
店でもこちらにかけられる罵倒を耐え、買い物を済ませて家に戻る
...あれでも、対応が一番マシなのよ
「あと、お金これだけ...」
随分と軽くなってしまった財布を胸に、自分で研いで傷が付いてしまった包丁で野菜を刻む
「...もう、この臭さにも慣れちゃったな」
近所の人から臭いと言われる原因、前に貴族の人にとある誘いをされてからゴミ置き場となった我が家の匂いを嗅いで、そんな呟きが漏れる
「う、...また」
火鉢で温めた湯に野菜を刻んだ野菜を放り込んだスープを飲んでいたら虫の卵が付いていた
前は虫の死骸が丸々野菜の傷んだ部分から埋め込まれていたから刻むようになったのに...
「卵付きは勿体無いけど除けよう」
前、無理して食べたら死にかけちゃったからね...
〈〜〜〜〉
夜になって寝ようとする
“あれ”のせいでもうこの街では仕事にありつけなくなってしまった
だから仕事はできない
──ドンドンドン!
「...」
無言でドアを開ける
「お貴族様に媚びた女が仕事もせず飯食って寝るだけなんて、楽で良いよなぁ!」
「...」
無言でドアを閉める
こんな家でも鍵はある
もう煤だらけで若干機能しなくなってきているけれど...
「おい!」
──ドンドンドンドンドンドン…
最近ずっとこうして夜中にドアを叩かれている
わざわざ何人かが交代でやっているようで、朝まで続く
この労力、別のことに向ければいいのに
なぜ、こうなってしまったのか
それは昔に遡る
〈〜〜〜〉
10年前
「カイラ!」
幼馴染で、密かに心を寄せていて、でも恥ずかしくてあまり関わることができなかったエレス、そのエレスが兵士に取り押さえられて晒し者にされている
みんながエレスのことを、狼の群れをお父さん達狩猟隊にぶつけて殺した悪魔だと言う
でもそうは思わない
やってもないことで悪魔だと言われていたのに、エイドもアリスも、みんな一時の怒りに飲まれてその嘘を信じている
そんなわけはないのに
でも私はみんなの迫力に飲まれて俯いてしまっていた
そうして何も言えずにいると
「ちょっとカイラ!あんたも見たでしょ!?父さんのく、首を川に放り投げ、投げて」
「笑うあいつを!!!」
そう、そんなわけはないと思うけれど、アリスとエイドと一緒に見てしまったのだ
狼に食べられたアリスのお父さんの首を抱えて川に放り投げて、大笑いするエレスを
でも違和感がある
あの時のエレスはフードを被っていた
でもエレスはそんな物持ってない
さらにおかしかったのが髪色。
エレスの髪色は黒にうっすらと赤いメッシュが混ざった色をしている
でもあのエレスは、遠目だったけど“茶髪”だったように見えた
本当に私が見たエレスは、エレスだったの...?
そう、考え事をしているうちにエレスは貴族の部屋に連れて行かれてしまった
そして...
エレスは馬に何度も踏まれて体の四肢がひしゃげた状態で森の奥に捨てられた
最期は狼に食べられて死んでしまったらしい
...私の、私のせいだ
私が気が弱かったから
私が声を上げられなかったから
全て、私のせいだ...
〈〜〜〜〉
数年後
「はいよ、オードフィッシュ二匹だ」
「ありがとう」
あれから数年が経った
結局あれからも私は気が弱いまま
あの時のことは誰にも言えないでいる
自分の家も持った
家で買った魚を使ってご飯を食べていると思う
真実を言えずに想い人を見殺しにするような私が、こんな良い生活をしていて良いのだろうか、と
「ごめんなさい、エレス...」
いつものように自作したお墓に手を合わせる
私はクズだ
それは自覚している
でも、もう面と向かって謝罪する機会もない
だから私は人の幸せを祝福する役場の結婚関連の部署で受付嬢をしている
せめて贖罪になるようなことをするために
いや、これも違う
私は逃げてるだけね
他人の幸せを見ることでエレスを見殺しにしたことから目を逸らしてるだけ
「自分で私が嫌になるわね...」
今日も私は自分の醜さを思い知りながら生きていく
〈〜〜〜〉
──ドンドン!
「あら、どうしたのかしら...?」
家のドアがかなり強めに叩かれている
かなり焦っている?
ドアを開けると
「お、お前何かしたのか!?貴族様がお前に様があるって...」
え...?
貴族様が私に用...?
心当たりなんて何もないけれど?
「何かした覚えはないけれど...分かったわ」
そうして案内されるままに用意されていた馬車に乗り、何時間かかけて
隣の、“パング伯爵領”の“私の故郷”へと、たどり着いた
「え、まさか“貴族様”って...」
〈〜〜〜〉
「よい、楽にしてくれ」
やはり、用がある貴族というのはやはり、ロイフサマだった
そして他にもアリスやエイドも呼ばれていた
「さて、諸君らはなぜ呼ばれたのか気になっていると思う」
当たり前だ
なぜわざわざあの事件の関係者を集めたのか
まさか真実を公表するわけでもないでしょうに
「それはな、諸君らの幼馴染のエレス、だったか?その事件の真実を教えるためだ」
は?
なんで今更?
「では私の口から語るとしよう、あの事件の真実を──」
〈〜〜〜〉
「「「...」」」
語られた真実は、やっぱり私が見た通りだった
やってもいないことで噂を立てられていたのはロイフサマが少し似た別人にやらせていたから
そして、みんながお父さんを失う原因となった事件のエレスも偽物
エレスは、
何も、
何もしていなかった
「じゃ、じゃあ本当に、エレスは何も、それなのに俺は...」
エイドは俯いて何かぶつぶつと呟いている
そしてカイラは...
「あっそ。で、それを今更教えて何になるのよ?私達に何かさせようっての?」
どこまでもあっさりとしていた
「お、おいアリス!?エレスに対して俺たちがしたことは間違いだったんだぞ!?エレスは、冤罪だったんだぞ...?なんで、そんな平然としてられる?俺たちが...」
そこで言葉を詰まらせたエイドの言葉を引き継ぐ様に、
「殺した様なものだって?で、今更それを知ってどうすんのよ?それで何かできるわけでもないのに?」
「それでも何も思わないのは違うんじゃないのか!?」
...うるさい
何でエレスが冤罪だったってことを知ってこんなくだらない言い合いをできるのだろう
涙を流して手を合わせながら叫ぶ
「黙って!!」
「!?...どうしたのよカイラ、急に叫んで」
「何でこういう時でさえ言い合えるの?...静かに謝意を述べるくらい、できないの...?」
私の格好を見て何か思ったのか、バツの悪そうな顔をして二人とも黙った
「...やっと静かになったか、では要件を言おう」
そして一度言葉を区切り、
「ではエイドには毎月50万シルバーの援助をしよう。工房を開くこと、夢だったのだろう?」
「な、何でそれを...」
「次にアリスとカイラ、そなたらには毎月30万シルバーの援助か私の妾に...」
そこまで言葉を聞いたところで、私の中の何かが切れた
「ふざけないで!!!!なんでエレスを私情で冤罪をかけた様な男の援助とか妾になるなんて話、誰が受けるのよ!!!」
ここまで言ったところで、受けそうな人物が思い浮かぶ
「え、何言ってるのよカイラ。こんな話受け得じゃないの。どうせ受けたらその代わり今の話は黙っておいて〜とか言われるだけでしょ?その話、妾になる方向でお願い」
本当に受けてしまった
エイドはかなり悩んでいる
怒りの表情をしてはいるものの、50万シルバー、夢が叶うという文言に揺れている様だ
なぜ、
なぜここまで恥知らずなことができるのだろう
「〜〜ッ、とにかく!私はそんな話受けませんから!」
そしてまた馬車に乗り込み、家へと帰った
〈〜〜〜〉
現在に戻る
しかし、帰った時には1日経っていたのと、あのクソ...ロイフサマは勝手に資金援助をしていたみたいで、そこから色々な噂が広まっていた
さらに、住んでいた街がロイフサマとは敵対関係の貴族の領地だったし、領民も珍しく
『パング伯爵なんてクソ喰らえだ!』
という考えの人たちが集まっていたからあんなことになっていた
理不尽だ、なんて思わない
これが私に下された罰なんだろう
だから逃げない
逃げて別の街でゼロからくらすということも、できなくもない
お金がなくとも存在することが許される存在...借金奴隷などがいるからだ
しかも借金奴隷の大半は鉱山での掘削作業で借金を完済する
そうすれば晴れて自由の身だ
まぁ例外もいるけれど...
「でも、私はここに骨を埋める」
一生をここで暮らす
ここで暮らしてあの扱いを受け続ける
でないと、私が存在する意味がなくなってしまう様な気がするから
...
死ぬ時はエレスのお墓の隣に埋まろう
あのお墓の下には何もないけれど、そうすれば地獄へ落ちる前に、エレスに会って謝罪することができるかもしれないから...
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できるだけ毎日投稿をしていくのでこれからもお願いします。
主人公を助けられたカイラが主人公のラブコメIFで書こうかな?
ヤンデレ物になる気しかしないけど




