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プロペラ  作者: 塩味うすめ
30/35

巡る風

 

++++++++++++++++++++✈️


 強力な砲台が現れたら、先ずは防いだり対抗したりするだろう。それが上手くいかなかった場合、強力な砲台をどうにかしようとするという思案のもと今回の指令が出されたのだと、ピアンテさんから指令が出された経緯を聞いた後、本題の作戦についての話に入った。

 

「現地時刻1400から本作戦は開始。各班は地図に示された場所に向かい、到着後は各班毎に決められた合図を送る手筈となりますーーーー」


 しっかりと聞かないといけないのに、トレメイン大佐の顔が浮かんで「今度は誰の思考をなぞるのだ?」と執拗に問いかけてくる。

  

「うるさい!僕の思考だ!」

「リトル?」


 誰も予期せぬ声が出て、二人の戸惑った顔が慌てさせる。


「ごっごめんなさい...少し疲れているみたいです。話は分かりましたので」

  

 ピアンテさんから作戦が書かれた用紙を奪うように受け取り、心配をする二人を強引に退室させた。ドアの向こうからビアードさんがしつこく声を掛けてきたが、それも無視してやり過ごした。

 自室のベッドに倒れるように身を投げ出す。それと同時に用紙が宙を舞う。拾わなくてはいけないのにそんな気も起きなかった。自分が自分ではないような感覚が僕を支配していた。


 大橋頼人とライト・K・フライヤは別人だけど同一人物。大橋頼人にライト・K・フライヤはいないが、ライト・K・フライヤには大橋頼人がいる。ライト・K・フライヤの皮を被った大橋頼人とも言える。

 そうすると僕はいったい誰になる?大橋頼人なのか、ライト・K・フライヤなのか分からない。

 

 大橋頼人の知識がライト・K・フライヤの人生に影響を及ぼしていて、何が正しいのか分からない。

  

 ライト・K・フライヤとしての経験が大橋頼人の生き方を変えさせていて、何が正しいのか分からない。


 正しいものが分からない。


 何がしたいのかも分からない。


 その日は気づくとそのまま寝てしまい、深夜に目を覚ますことになった。起き上がり窓から見上げた空は地球のものとは違い、月は無く北極星も見当たらない。僕の前には違う世界が広がっていた。

 

  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 成長して一定の年齢に達したら大人になれるのだろうか。そうだとすると肉体の成長が完了が大人ということになる。

 それでいいのだろうか。誰の目が無くても大人になれるのなら、人は独りで完成した存在になる。

 

 そんな事はない。


 他人との関わりがない人は人として認識すらされないから、まず人になるには他人と関わることが前提条件となる。

 大人とは他人に認めてもらうことではないが、他人との関わりの中に答えはある。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 作戦当日、その日は朝から雨が降っていた。これが遠足なら雨天中止となるだろうが、戦争にそんな道理が通用することはない。

 雨の音が寝不足の頭を叩き、雨の冷たさが目をあけさせる。


 作戦の目的は侵攻前の調査。あの平原での会戦は僕の活躍もあり、王国軍の勝利という形で幕を閉じた。亜人軍は会戦に応じる事が出来なくなったと判断した司令部は打って出る事にしたようだ。

 

「フライヤ班」


 トレメイン大佐が僕たちの事を呼び寄せ、指定のポイントへの地図と合図についての説明をする。部下に傘を差させて偉そうにしている姿に嫌気が差す。睨みそうになるのを抑えるのがやっとで、話も入ってこない。かろうじて地図を受けとることが出来たが、返事もせず無礼な態度になってしまう。

 そんな僕に意も介さずトレメイン大佐は、ピアンテさんとビアードさんを呼び寄せ何事かを告げる。視線は地図に落としているのに、意識はずっとトレメイン大佐に向いていた。


 僕らが調査する場所は山間の奥深くだった。足場の悪い道を風の魔法で切り開いて進むのだが、雨のせいで状況は思うよういかなかった。 

 

「ひどい雨ですね」

「ああ、自慢の髭も形無しだぜ」


 二人の何気ない会話も、裏があるのかと疑ってしまい反応することが出来ない。雨は激しさを増し、僕の輪郭すら曖昧にする。

 1時間か3時間、時間の感覚も掴めないまま足を進めていると、急に足場が無くなってしまう。転がるように落下していく体『ウムラウフェンダー(巡る)ヴィント(かぜ)』と魔法を唱える。

 上の方から僕の名前を呼ぶ声が聞こえていた。

 

++++++++++++++++++++✈️


つづく


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