一変する世界
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家の手伝いをし、相変わらずプロペラ飛行機について模索しながら楽しく過ごす毎日。そんな僕の生活に変化が訪れたのは7歳になった年の秋の終わり。
半年ほど前からお腹の膨らみが目立ち始めていたママが病院から帰ってきたら、お腹の膨らみは消えて代わりに腕には赤ん坊を抱えていた。
僕の妹、ニコ・K・フライヤが誕生したのだ。
翌日には、リンとトルクのファルマン家の4名、ダイヤのムーロメツ家の3名、初老夫妻のデュモン家の2名、フライヤ家と会わせて13名が集まって、盛大なお祝いが行われた。
「ライト兄ちゃんが、兄ちゃんになるんだね」
「ああ、トルクもトルク兄ちゃんに、ダイヤもダイヤ姉ちゃんになる」
「ん?らいとにいちゃんはらいとにいちゃん兄ちゃんということ~?」
「ふふ、それじゃあ、私はリン姉ちゃん姉ちゃんになるわね」
僕ら4つの家庭は運命共同体ようなもの、それぞれの家が協力しあって暮らしている。子ども達も肌でそれを感じ取っているのか、兄弟姉妹のような関係を築いている。前世で暮らした施設と似ているのかもしれないけど、温度が違う気がする。ここは温かい、木枯らしだって平気だ。
「ねぇ名前は?」
「ニコだよ、かわいい名前だろ?」
誇らしげに妹の名前を発表する僕。子どもの容姿に引っ張られて精神年齢が下がった訳ではない、ただ単純に嬉しい、嬉しさが誇らしいのだ。
ダイヤがニコと聞いて「にこ~」と笑顔を作って見せて、皆も釣られるように笑って、何だかとても楽しい気分。ニコは今日あった事を覚えることはまだ出来ないから、いつか僕からも話そう、君が生まれた時は皆が幸せそうに笑っていた事を。
「ライト」
テーブルの上のオードブルが尽きた頃、パパに呼ばれた僕は一人増えた家族の元へ、お祝いの席もおしまいの時間みたい。家族での記念撮影、フィルムカメラのシャッターが閉じて、演劇の場面転換のような、そんな役割。
ニコが生まれてから僕たちフライヤ家の生活は一変する。僕が生まれた時もそうだったようにママはニコに付きっきり、パパも仕事以外の時間は付きっきり、僕も手伝いの時間以外は付きっきり。
ニコが中心の生活。今まで僕が中心だったから疎外感を感じない訳ではない、けどそんな事どうで良い。ニコがいる、それだけでそんな感情は消し飛んでしまう「兄妹」なんて考えたことも無かった。
小さな手で僕の手を握り返してくる、この生き物を僕は守らなくてはいけない、そんな使命感が湧いてくる。
「ねぇ、パパ。ニコはいつかこう言うよ。将来はお兄ちゃんのお嫁さんになりたいってね」
「なっライト、そんな訳ないだろう。パパのお嫁さんと言うさ」
「二人とも馬鹿なことを言ってないで、さっさとする事をして。それにニコには素敵な王子様が現れると決まっているわ、私のようにね」
「イライザ...」
パパとママ雰囲気が良くなったので僕はひとりで畑に向かうことにする。ドアを開くと澄みきった朝の空気、僕は大きく息を吸って肺の中の空気と入れ替える。朝日に照らされた大地がキラキラと光ってとても綺麗。
この大地を空から見下ろすことが出来ればどんなに素敵か、ここだけではなく地平線の向こう側まで、プロペラ飛行機に乗って飛んでいく姿を想像する。
この世界にはどんな景色が広がっているのだろう。僕は足を一歩踏み出す。
僕は知らなかった。この時も遠く離れた所では黒い煙が上がっていた事を。そしてそれが僕が勇者として選ばれた理由だという事をずっと後になって思い知ることになる。
まだそれは先の話。
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つづく




