ピョンピョン
7. ピョンピョン
私の拒絶に逢っても男は諦めなかったのだ:10日程も経った頃、男は自分の社の社長の奥さん(=専務・経理の総元締め)と問題を起こした。45~6の奥さんは確かに目立つほどの魅惑的な人ではあったが、丁度社長が外出中に、男が事務所内でチョッカイを出しのである:すれ違いざま素敵なお尻を味わい深げに撫ぜた。
撫ぜ方は、女なら「感じるわあ、何て素敵!」と言う一流の腕前。普通ならば、すぐさま手を取り合ってホテルへ直行という結果になるか、それとも経理担当だから、悪くても昇給に恵まれる、というのが世間の筋書きかも知れない。
が、あにはからんや、融通の利かない女というのは、何処にでも棲息している。丁度会社の事務所がその棲息場所だった。しっかり者の奥さんは撫ぜられるや否や、「キャン!」と言うまでに、男をしたたかに蹴り上げた。しかも、シマウマみたいに逞しい後ろ足を使った。男なら誰でも判るが、急所で「キン蹴り」という超激痛のやつと来たから、痛さで男は二米もピョンピョン跳ね上がった。
即効性の効き目があって、外出先から戻った社長によって、当日付けで男は叩き出された。
解雇されて1ケ月程ぶらぶら遊んでから、おもむろに職安(=現ハローワーク)を経由してウチへやって来た。男の第一声は:
「お待たせしました!」
サスペンス小説風な男の行動力に、私は舌を巻いた:「お主、やるじゃないか!」
私は販売店の社長に電話を入れた:
「この間クビにしたと聞いていた当の本人がウチへいま泣きついて来ているんだがねーーー。生活に困っているらしく、半泣きで。 どうしたもんだろうな? 小さいガキが二人も居るらしくて、学校の給食代にも事欠いて、何か哀れな気もしてねえーー。」
「あの色キチのバカなら、好きなように煮て食えばいいよ。焼くのも良いが、辛い生姜をタップリ掛けて食え! きっちりお灸をすえてやりな! でも色キチだから、あんたの奥さんから目を離しなさんなよ」
かくして、販売店から二つ返事の了解を得て、男はウチで働くようになったのである。
そんな話に乗るお前も、問題じゃないのかだってーーー!? ウフフ、実は私は「そんな」人間が好き。女ならレデイよりたくましい中年の悪女の方がゾクッと来る方で、サスペンス小説が好きだしーーー、男と私は悪知恵という点で似たところがある。
さて、ウチへ入社した男はその後どうなったか? 異才に相応しいやり方をした。




