ソコッ!
6. ソコッ!
脱線したが、真面目なマッサージの本題に戻る:
先に書いた通り、私自身は決してマッサージの練習台にはならないが、女達は何時も志願して私の練習台になりたがる。それも順番待ちなのだ。この点では、確かに大もてである。なぜか私は手筋が良いらしく、コリを探り当てるのが上手い。毎晩自宅で配偶者の体を相手に予習・復習を欠かさず、練習時間が多いせいだろうか。「我が指先」は微妙な力加減で、何時もコリのポイントに、ぴったりはまるのである。
はまった時には、「ソコ!ソコ!ソコッ!」とうら若き練習台が、黄色い声を上げて「ソコ!」を連発する。如何にも切迫した風に「ソコッ!」を強調されると、こっちは暗闇の中で脱がせた女の「ソコ」の場所が判らず、ゴソゴソ探し回ってやっと探り当てたみたいな、何やら「ヘンな気分」にさせられる。無論、私は「ヘンな場所と気分」が大好きから内心ニヤリとして、これもまた楽しみの一つになっている。
三十代の練習台の一人が私に背中を揉まれながら、「素敵よ、その指と結婚したいわあ。そんな力があるなんてーー、だったら、未だアソコも充分使えるわね!」と、感嘆符を付けてからかった。年寄りに対してアソコだなんて、実に無遠慮な女だ。そうまで言われちゃ、なに、「干物」だって黙ってやしなかったさ:
「使えるかどうか、ねえ、どう今晩試してみる?」




