表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/1929

象あざらし

5. 象あざらし


 イジメも含めて、私は教室で女によくもてるーーと思っていた。が、これはどうやら勝手なうぬぼれであった。女達から笑みをたたえて話しかけられたり、手首をぐいっと太ももまで引っ張られる格別な好意も、もてるからでは無さそうだと気づいたのは、入学後ニケ月くらい経ってから。


 授業の中ほどにある十分間の休憩時間に、女達はおしゃべりする。大概私は隅で聴き役で、彼女らは何時も私がまるで「存在しない」かのような話し振りをする。七十は、男の数に勘定していないのだ。湿り気の無い「干物」で、「種無しブドウ」であり、メス猫でさえ無視する「人畜無害な生き物」と女達は勝手に解釈している。まあ無理も無いかーーー、私はどうやらそんな歳。 


 反面これは私に好都合でもある。何故なら女達が油断していて女の秘密が色々判るからだ。おしゃべりを聞いていると、実にアケスケに男の悪口を言い、女の内幕を語るのに隠す処が無い。スキだらけで、言うなれば私は透明人間になって、女風呂に潜入して見聞しているみたいなもの。話題はあちらこちらに飛び、ネイルアート(=マニキュアの一種)のデザインへも関心が高い。


「おオモチツキの最中に、キュッと感じたのよ。思わず声が出たわ。彼にしがみついて背中に爪を立てたら、折角のアートが剥げちゃった。大損害、ダメージが大きいよ!」と聞いた時には、流石にこっちは度肝を抜かれた。ナマナマシイ話が無造作に出て来て、周りの女達は「キャハハー、判る、判る!」と笑い飛ばす。判らないのは私だけ。


 マニキュアは剥げると経済的損失が大きいが、おモチツキは何度やっても磨り減らないから、らしい。因みに、彼の背中の皮膚は象アザラシみたいだから、何度爪を立てても傷まないし、反って爪を研ぐのに便利であるらしい。干物の私も隅の方で、そんな話に「ケケケーーー」と奇怪な忍び笑いを漏らして、話を聞くのが楽しみの一つになっている。


 人畜無害な女風呂の仙人をただで利用する積りか、時々恋愛問題の相談を持ち掛けられたり、不倫のやり方を具体的に教えてくれとせがまれる。五日間も便秘なのよと健康相談も寄せられる。どの分野でも造詣ぞうけいの深い私は、大学病院の精神科医と内科医を兼ねているようなものだ。


 不倫のやり方では、こっちもニヤニヤとヤニ下がって、いやいや、元技術エンジニアらしく硬めの言葉を選びながら、そそのかす:

「ノウハウは技術が高度なんだよ、ダンナや彼にバレないように不倫を実行するには、それなりに修練が必要さ。一度マスターすれば、何度でも使える。一緒に研究しようよ。先ず僕みたいな代用品を使って不倫の予行演習から始めなきゃーーー。特に予習が大事なんだ」


 が、干物の宿命とは思いたくないのだが、共同研究は未だ実現せず前向きに進展をしていない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ