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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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八十一話:土人形の導きその3

 

 さて、その次の日…

 今日も今日とて晴れ、絶賛探索日和だ。

 基本ここじゃあ晴れてない日の方が珍しいけど。

 そして昨日と同じく朝は人形に頬をペチペチと叩かれて目が覚めた。

 もう既にコレが彼らにとっての起こし方になっているんだろうか?

 そんな事を考えながら昨日と大体変わらない朝の準備に取り掛かる。



 結局昨日はあの後、特に何も無かった。

 まぁ、あっても困ったけどさ…

 無事におっさん共は帰ってくれたし、戻ってくることもなかった。

 今日中にまた来る可能性も少なからずあるが、二人は静観を保っていたから襲われる心配はないだろう。

 人の事を血眼になって探すんじゃないか?

 それに二人に聞いた限りだと、彼等以外に先行して権利を主張しようって奴らも居ないみたいだし、これで心置きなく調査に専念出来るんじゃないか?

 明後日あたりに一度帰るまでは、それこそやる事はいっぱいある。

 昨日の夕方から夜までの間、時間が潰れたのでさえ結構痛いしな。

 そもそも、いつまでも調査対象の屋敷に寝泊りっていう状況も良くないだろう。

 惰性で住み着いてるが、次に来た時に住める所を仮設でもいいから建てなきゃいけないだろうし。






 まぁそこら辺はジーニャ・ダダンさんはコンビにお任せだ。

 俺のやることは目下、探索だ。

 それしか出来そうに無いというのもあるが…

 そういう訳で色々と朝食なり準備なりが終わり、現在屋敷の前だ。

 合計7体、土人形が肩や頭、リュックに収まっている。

 更に追加で一匹は瓶の中、相変わらず出てこない。

 …気に入ったんだろうか?


 まぁそれは置いておいて…

 随分と数が減ったが、その全てが屋敷に残るためだ。

 出発前に彼らが人の荷物から飛び出して、どこか屋敷の中に散っていった。

 昨日の例からして1体でも居てくれれば屋敷には帰れるはずなんだが…何かするつもりなのか?

 それに万が一、昨日の奴らが来て見つかったら面倒だが…

 こういう時に、彼らが話してくれない事がもどかしいと思う。

 少なくともこれまでの状況からして、あの二人に危害を加えるとは思わないけどさ。


 結局、全員が個々に上手くやってくれるだろうと考えるしかない。

 そして今日も俺は土人形の案内で探索するしかない。

 …一番収穫が少ない仕事だしな。

 早速、屋敷を出てすぐに進むべき方向を指差してくれた。

 ただ、村から出る関係上、最寄りの村の出口に向かう事になるけど。


 ここで、簡単に村の位置関係を少し紹介しよう。

 まず、村の中心には小さいが広場がある。

 そこを中心に大きな道が十字に広がっている。

 村が道で四分化してると考えてもいいだろう。

 そしてその道の一つ、大体中間くらいに村長と思われる奴の屋敷がある。

 あの、寝泊りしている所だ。

 指で示している方向は、一度村の中央を経由して、曲がった所の出口から出るのが良いだろう。



 方向がややずれているみたいだがそこからが一番近いと判断した。

 …のだが、村の出口に差し掛かってもう一度土人形に確認を取ると…別の出口の方向を指差す。

 その方向は明らかにさっきと方向が違う。

 具体的に言うと、さっきの屋敷の方向だ。

 若干のズレはあるけどな。



「あれ?こっちじゃない?」



 自分の質問に、肯定の意思を示すようにコクンと首を縦に振る。

 それから、クイクイっと腕でこっちが行き先だと示すようにジェスチャーをする。



「となると…村の中?」



 その質問は肯定で返された。

 今日は村の外を出歩かなくていいのか…

 何だか、拍子抜けするな。

 昨日みたいにまた大量に土人形を何処かから連れてくると思っていたんだけど…

 これ以上集めなくて良いって事なんだろうか?


 しかし、村の中を案内されるのか…

 となると必然的に、彼らは村の中を知っているって事だよな。

 元々、彼らが西の山の方から来ているとは聞いていたが…もしかして彼らはここを根城にしていたのか?

 一体…いつから?

 不意に沸いたそんな疑問から、思考が急速に回り始め様々な考えが浮かんでくる。


 唐突だが、呪いの正体は水だ。

 それ以外にもあるかは断言出来ないが、少なくとも水もその一つだ。

 そしてそれは今尚、ここいら一帯の水を汚染している。

 水が要らないって生物は恐らく、この世界でも存在しないだろう。

 少なくとも村人と同時期に蟻の魔物も大量に死んでるって話だしな。


 そして彼等、土人形達は西の山方面から来てるって話だ。

 更に言うと色々と問い詰めた結果、彼らを操る大元がいるって事も確かだ。

 ここで、最初の土人形の霊力鑑定を思い出そう。

 彼の役割は、作った者の代わりに世界を見て、聞いて、行動する事だ。

 そんな役割を持って西の山から来ている人形達の大元が、西の山方面に居ないって事…あるか?


 恐らく彼らの大元は、西の山方面に住んでいるって事で間違いないと思う。

 ある程度場所を転々としているかもしれないけど…

 でも、ここは身を隠すにはうってつけだ。

 人も生き物も住むには適さない土地だからな。

 そんな土地から出ることなんて事、そうそう考えないだろう。


 で、だが…

 そうなるとここに居着く彼らの主は、少なくともここの水が危険だと気づいてるはず…

 それもかなり早い段階、最低でも体調不良が起こる前の段階からだ。

 じゃなきゃ結構前に土人形が最寄りの村で見られ始めた時間から逆算し、更に日記や調査書からの報告と照らし合わせて見て、こんなのを大量に操っている余裕は無い。

 だが、異変が無ければ恐らく調べる様な事はしないだろう。

 もしかしたら…彼らは…?




 そこまで考えた時、不意に横髪をクイクイと引かれる。

 犯人は勿論、肩に乗った土人形だ。

 片手で髪を引き、もう片手で行き先を指差して先に行かないのか?と言わんばかりの仕草をする。



「悪かった悪かった」



 軽く返事を返しながら一旦思考を打ち切り、リュックからこの村の地図を取り出す。

 この地図…探索は俺しかしないから、勝手に持ち歩いてるんだよな。

 まぁジーニャさんとかには一度見せたし、簡単に写しを作ったみたいだけど…

 で、さっきの位置から指で示した方向と今示している方向の延長線上を辿り、交差しそうな場所を考える。


 結局彼らの主が何者であれ、今は彼らの示す先に進むしかない。

 最悪今までだって、俺が疲れている時を狙えば彼等だって俺の命を危険に晒せる状況はあったし。

 本当に殺す気があるなら、夜に疲れて眠っている状況にでも鼻と口を塞げばいいだけだしな。

 ジーニャさんやダダンさんも同様に、だ。

 むしろ今、彼らを警戒して不信感を抱かせるのが一番良くないだろう。

 彼らの信頼を得て、あわよくば彼らの主と話す事が出来る様になるのが理想だろう。


 さて、それはそうと彼らの示す場所だが…

 その場所は…割と今いる地点からの距離は遠くない。

 村の外周部近くだし。

 更に言うと、位置的には屋敷の裏手をずっと行った所がそれに当たる。

 そこの名称は…


 

「墓地…?」



 そう、お墓だ。

 村長の家の裏手からちょっと行けばお墓があるのだ。

 その理由は…証拠隠滅以外に有り得ないだろう。

 あの屋敷の日記、手記から察するにかなりの数の死体が出ていておかしくない。

 見つかる可能性も考慮すれば…処理出来る場所が近いほうが良いだろうし…

 おまけにこれを見る限り、一応墓地は村長の管轄って事っぽい。

 きちんと墓地に行く口実までしっかり作っているとは…徹底してるよな。

 これを飽くなき拷問欲っていうのだろうか?

 嫌だな、そんな欲…




 しかしまぁ…それはそうとだ。

 なんたってこんな場所に連れて行きたがるんだ?

 確かに村に着いてから簡単に巡った時には見ただけで、探索はしてないけど…

 ただ、確実に何かあるんだろうな…

 そんな事を考えながら、人形に導かれつつ進んでいった。





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