六十七話:殺意と恐怖とビビリ
話数間違ってたので修正
「はぁ…」
時刻は夜、体感的には…11時過ぎたくらいかな。
まぁおおよその時刻は分かる道具はあるけど、寝室には無い。
それにデジタル時計みたいに何時何分かなんて正確に分かるものでは無いからな。
ってそんな事はどうでもいいな。
自分はベッドに横たわりながら一人ため息を付いた。
ぼんやりと時間が流れるのを感じながら、寝付けずにひたすらゴロゴロとしていた。
あの後正式に依頼書で依頼されて、結局受けることにした。
驚異だって言うなら協力しない訳にはいかないからな。
で、その後日課の様に訓練やったり飯食ったり寝る準備したり…
いつも通りの生活をしてみたものの親方のあの殺意と威圧感、あれが頭から離れない。
ふとした拍子にどうしても思い出してしまう。
いまこうして寝ようとしていても、だ。
瞼の裏で、あの光景がフィードバックする。
あの感じからすると、確実に例の二人組に会ったら親方は仕返しに走るんじゃないだろうか?
それこそタイミングや手段、それこそ勝目なんか考えずに。
って復讐するって言ってるんだからちゃんと策くらいあるか。
だけど、復讐する事は親方のされた事を考えれば別に不思議じゃないしなぁ…
その二人もそれくらい考えているはずだ。
それに、勘違いで人が死ぬ事を何とも思わない奴らなんだろ?
やる事が終わったら気まぐれでこの町を潰すことだって、あるかもしれない。
どのみち…このままいったら戦う可能性はとても高いんだよな。
もしそうなったら爺さんやダダンさん、一番弟子さんもきっと…戦うだろう。
その時、自分は…どうするんだ?
「はぁ~…」
何度目になるか分からないけど、またため息がこぼれる。
復讐がどうとか今まで考えた事なかったけど、実際こうして考えると泥沼だな。
ズルズルと、嫌な事ばかり考えてしまう。
そのせいで眠れない。
明日の朝一から調査に行こうとしていたのにな。
気晴らしをする気にもなれないので、それでも眠ろうと目を閉じて寝転んでいると…
「やっほ~!元気ぃ?」
そこに居ないはずの人物の、声が聞こえる。
毎回こんな挨拶の仕方だよな。
それで目を開けると周囲の雰囲気が変わっていた。
この周囲が真っ白の場所に案内されるのも三回目か。
ってか別に寝てたり意識がない状態じゃなくても呼べるんだな。
「こっちこっち!」
場所に呼んだ奴は前回と変わらずテーブルとチェアが用意されていて既に寛いでいる。
相変わらずお気楽な女神さまだ。
「で、何の用?」
用件を聞きつつ、用意されていた椅子に腰掛ける。
…のだが当然と言った感じで間髪入れずに紅茶っぽいものが入ったティーカップが差し出される。
「まぁまぁ一服一服!落ち着くわよ!」
「うん、知ってる」
そう言って女神が既に用意していたカップに口を付け始めたので、自分も渡されたそれに口をつける。
以前にも感じた、心が癒されるような感覚が体に染み渡る。
「ふぅ…」
「どう、落ち着いた?」
思わず一息吐いている様子を見て、微笑みながらそう聞かれた。
「まぁ程々には?」
今更思ったけどこれ、何かヤバイ物じゃないよな?
…依存性が無い事を祈ろう。
それで女神はカップを持ったままやれやれと言った感じで手を広げる。
「でも鉄ちゃんって少し、臆病な所もあるのねぇ
少しばかり殺気に当てられただけでここまで弱気になるとはねぇ…」
言うけど親方の顔といい殺気といい、あれは下手なホラーよりも恐怖があるぞ?
ってかあれで少しかよ…
神様は言う事が違うな。
「しょうがないだろ?
肌で殺気を感じられる事なんて無いぜ?」
物理的な感覚で他人の心情を感じ取るなんてそうそうある事じゃないだろ?
そこまで強い負の感情を持つ人がまず居ないしな。
夜襲をかけて来た時のマルクでさえ怒ってるなって思えるくらいだ。
そう考えたらあいつはそこまで怒ってないのか?なんて思うけど、あれが普通のレベルなんだ。
俺にとって、肌を刺して、冷え込み、逃げたくなる程の親方の怒りの方が異常なんだ。
この世界ではこれが正常なのかもしれないけどさ…
「慣れなさい、今の内だけよ?」
で、案の定そんな事を言われる。
「えぇ~…」
「そんな露骨に嫌そうな顔するんじゃないわよ…」
だって…怖いもんは怖いだろ?
それをこれから先、平然と受けていられる人間になれと?
どんだけ修羅場を潜ればいいんだか…
「ってか今の内ってなんだよ?」
「多分ラルちゃんと一緒に居るならきっと普通になるからよ」
「マジかよ…」
「だからそんなに嫌そうな顔しないの!」
そうは言うけど、あからさまにトラブルメーカーって言ってるようなもんだろ、それ…
俺の中で一気にラルを迎えに行く気が無くなるんだけど…
ってかラル、元気にしてるかな?
まぁあの様子じゃ元気には過ごせそうにないよな。
俺が居なくなって、更に肩身狭い思いをして過ごしてるんだろうか?
それとももう既に城を追い出されてるかも…
女神は迎えに行けって言ってるけど…
よく考えたら俺、かなり恨まれてるんじゃないか?
逃げざるを得ない状況だったけど実際、何も言わずに逃げた訳だしな。
う~ん…迎えに行くのが怖くなってきたな…
なんて事を考えていたら、女神がちょっと不機嫌そうな顔をしていた。
「ちなみに言っておくけど!ラルちゃんは貴方の事をちゃんと待ってるんだからね!
ちょっと臆病風に吹かれて弱気になったからって他に飛び火させないの!」
「はい、はい」
俺の考えていることはお見通しって事か。
で、しっかりとラルは待っているからさっさと迎えに行けと。
そうは言われても、心の準備ってもんがなぁ…
「全く!いつまでもウジウジと!」
「ムグッ!」
いい返事が聞けない事に痺れを切らしたのか、口に焼き菓子を突っ込まれる。
つかそれ、どこから出したんだ…
いつの間にかテーブルにバスケットまで出てるし…
この前食った奴に似てるけどちょっと違うな。
丸いクッキーやビスケットの様なシンプルな見た目だ。
それでいて味はこう…明るく前向きになれる美味しさ?
とにかくネガティブな考えが吹き飛びポジティブになれそうだ。
…字面だけ見たら完全にヤバイ物だな!
後は依存性が有ったら完璧だ。
「これでいい気分転換になったんじゃない?」
「あぁうん、ありがとう」
そんな事を考えてしまったからか、素直に感謝出来そうにない。
気分が良くなったのは良くなったんだけどさ。
どことなく申し訳ない気持ちになる。
「別に臆病風に吹かれて逃げ腰になるのも良いけどねぇ!
逃げるなら何もかも投げ出す勢いで逃げちゃいなさい!」
「いや駄目だろそれ!」
人としてどうかと言う事を平然と言ってのけるな。
おおよそ神が言っていいセリフじゃない。
もう神様って感じがしないどころか、神って事に疑問が沸いてくるレベルだ。
本当は悪魔か何かじゃないのか?
「あはは!すっかり元気になったみたいね!
そんな事が言えれば十分よ!」
結局、からかわれてただけかよ…
それで俺の反応が面白かったのか、女神は腹を抱えてケラケラと笑い始める。
「困ったらこのお菓子の味を思い出してね、ってね!アハハ!」
「あぁはいはい!わかったよ!」
ヤケになるのは思うツボだと思うけど…ってもう手遅れか。
どのみちからかわれる事に変わらないしな。
こうなったら悪乗りだ!
「折角だから忘れない様にもう幾つか貰うぜ」
そう言ってバスケットに手を伸ばして焼き菓子を掴み、口に放り込む。
改めて食べるとヤバイ美味いなこれ、次々と食べたくなる。
心がほっこりするというか何というか…
既に中毒症状が出ているというか…
これは手遅れかもしれないな。
「良いわよ、いっぱい食べなさい!」
そしてそれを見ている女神はなんでそんなに嬉しそうというか自慢げというか…
これ実は…女神のお手製とか?
このお菓子を?…無いな!
間違ってもお菓子作りとか好きなタイプじゃないだろ。
「あぁそういえば、これ送ってあげられるけど?」
「…へ!?送るって何処に?」
そんな事を考えなから口に焼き菓子を放り込んでいたら急の爆弾発言である。
何処かなんて察せるけど…反射的に思わずそう聞き返してしまっていた。
「分かるでしょう?」
で、それが顔に出てたのか女神の返答はそれだけだった。
まぁ、俺の所しかないよな。
それ以外の所に配達されるって言われても、反応に困る。
つーか食う前に言ってくれよ
「ってか送れるんだな」
「時間はかかるけどね」
「どのくらい?」
「貴方が頼んだ事を忘れるくらいには」
「…それ、送る気が無いと言わないか?」
「それだけ遅いってわけ!」
「そうか」
頼んでも時間が曖昧じゃあなぁ…
でも忘れた頃にでも美味しいものを食べられるっていうのは魅力か…?
「まぁ送っても貴方が食べるとは限らないけど」
とか悩んでいたらこれだよ。
「そりゃどういう意味だ?」
「そのうち分かるわよ」
聞いてもまともに答えてくれないし…
そのうちって…忘れた頃か?
「とりあえず送っておくから、好きに使いなさい」
「分かったよ」
結局俺の返答関係なく送ってくれるんだな。
最初から送るってだけ言えば良かったのに…
「それにしても…なんだか眠くなってきたな」
気持ちが落ち着いたからか菓子で腹が膨れたからかは知らないけど、ともかく一段落ついて眠くなってきた。
「そうね、そろそろ時間かしらね。」
「時間?」
「夜ふかしは美容の天敵よ?ちゃんと寝なきゃ!」
「あ、はい…」
なんというか…神様も寝るんだな…
こう不眠不休でも頑張れるのかと思ってた。
なんて考えていたら、元々白っぽい風景が更に白ずんで行く。
「それじゃ、復讐の補助も程々に頑張りなさい。
ラルちゃんも早めに向かいに行くのよ~!」
「分かってるよ!ちゃんと行くよ!」
この空間から出る時は落ちていくような引かれるような感じがあるな。
そんな事を考えながらその感覚に身を委ねていると、次第に意識も薄れていった。
もう第一話を投稿してから一年以上経ちました。
丁度一年ぴったりで投稿できなかったのが残念です。
あまり文章力が上がっている実感はないですが、これからも投稿は続けて行きますので、ご愛読いただければ幸いです。
俺たちの戦いはここからだ!
って訳でまだまだ続きます、終わりませんよ?




