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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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六十五話:頼みたいこと

 

 時間は昨日よりちょっと遅いくらいだろうか?

 工房に行くと、昨日より元気そうな親方の姿があった。

 元気というよりも活き活きとしているって言ったほうがいいかな?

 やりがいがあるって顔だ。



「こんにちは~」

 

「お!ちょうど良く来おったな!」



 何か作業をしていたけど、こっちに気づく直前に手を止めたので挨拶をする。

 しかし親方…元気そうだ。

 周りで作業している弟子達の、いかにも疲労してますって顔といい対比になっている。

 みんな、ごっそりと目の下に隈なんか作っちゃって…



「昨日から発見ばかりで楽しくてな!

 つい時間を忘れて打ち込んじまうんだ!ガハハ!」


「程々にしないと倒れちゃいますよ?」


「その時はその時よ!」



 なんか俺の知ってる職人と違う。

 いや、打ち込むって事じゃそうだろうけど…体調管理も大事だろうに。

 つーか休ませないとそれに巻き込まれてる弟子達がもたないだろ。



「看病するこっちは大変なんですぞ…?」


「まぁ倒れる前に成果もあったしいいじゃねぇか!」



 爺さんの小言も柳に風って感じだ。

 更に徹夜の成果として、近くに積んであるインゴット状の金属塊をカンカンと叩く。

 なんだろう、昨日見た金属と微妙に色が濃くなった様な気がする…



「今までたまにしか作れなかった『いい金属』が作れるみたいでな!」


「へぇ~…」



 相槌を打ちつつ真理理解を発動させる。

 結果は…こうだ。



 [プニル鋼]

 ロスクで使われる金属の一種。

 軟プニル鋼よりやや硬く弾力も強い。

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「確かに、硬そうですね。」


「おうよ!で、更にこれを改良したので作ったのがこいつよ!」



 そう言ってさっきまで加工していた物を近くの木材に突き立てる。

 何かと思って見てみたら、また短剣だ。

 まぁ俺が依頼してたし、使う金属も少なくて済むし当然かな?

 で、刺さった短剣を引き抜いて感触を確かめてみる。


 見た感じ金属の量自体は少なく、昨日渡された短剣より刀身が細いみたいだ。

 それに前と若干違ってグリップには布を巻かず、ヤスリの様な格子状の溝が掘られてたり等細部にもこだわった物のようだ。

 強度といい加工技術といい確実に進歩があるな。

 というか一日で良くこんなの作れたな…

 昨日の限界はどこにいったんだか…



「どうせ昨日渡した奴は駄目になっちまってんだろ?

 改良の参考にするから出してくれ。」


「あ、はい」



 言われるまま腰のベルトから短剣を外し、作業台に置く。

 戦闘後も確認していたけど、改めて見るとボロボロもいい所だな。

 刃は所々欠けている上に刀身自体曲がってるし、血や脂で汚くなっている。

 誰だよ、適当に拭っただけでしまった奴は。

 …俺だよ。



「こりゃ…ハハハ!

 ひでぇな!おい!」


「その分戦闘では活躍しましたからね」


「こんなになるまで使ったんだからそうだろうな!」



 親方はそう言って汚れた短剣を手に取り、色々と角度を変えながら状態を確認している。



「まぁこれから試作を続けていって改良を加えてっから、今度はそっちを試してみてくれ!」


「分かりました」



 そう言ってさっき受け取った短剣を、革袋を適当に縛って鞘代わりにしてベルトに留める。

 また明日も鳥狩りか?

 次は全滅させられるといいなぁ…

 トレントやウィルダネスボアはあまり試すのには向いてないしな。

 目下、鳥には犠牲になってもらおうか。



「あと、まだ時間はあるか?あるよな?」


「はい?ありますけど…?」



 思考が逸れた所を、親方から確認めいた質問で呼び戻される。

 なんだろう、まだ何かあるのか?

 そう思っていると周囲に聞こえないように、声を小さくして喋りだした。



「お前さんに頼みたい事があってな…」


「頼みたいこと?」



 なんだろう?ヒソヒソと話すこと…?

 人に言えないこと、言いづらいこと…ハゲか?

 爺さんは荒れ果てた不毛地帯だけど、爺さんはたてがみみたいな髪型だしそれはないか。

 いや…でも…まさかねぇ…?



「別にハゲ治すとかじゃねぇぞ?」


「あ…はい!」



 どうやら無意識に視線が髪に向いていたらしい。

 ちょっと距離が近いから、親方の威圧感とかで脅されてる様に感じる。

 というかこの世界でも、ハゲは男性の悩みの一つのようだ。

 覚えておこう、必要ないかもしれないけど…



「毛が生える様なもんはエドにくれてやれ」


「は~い」


「何だか聞き捨てならない言葉が聞こえましたぞ?」



 遠くから爺さんが何か行ってきたがスルーだ。

 つーか聞こえてたのか、地獄耳だな。



「それよりも、だ。

 最近ここら辺で何か得体の知れないもんが出てるって聞いてるか?」


「さっきジーニャさんから聞きました」



 それを聞いて、親方の目がより鋭いものになる。

 というかホットトピックなんだな、それ。

 最近って言うか昨日辺りの情報なんじゃないのか?なんて思ってしまう。

 シリアスな雰囲気が漂ってるけど、つい思考が逸れてしまうな。



「なら話が早い、どう思う?」


「どう、とは?」


「思い当たる物はないか?」



 思い当たるもの、ねぇ…?

 ぶっちゃけ一つしかない。



「小人の土人形、ですか?」


「やっぱそう思うよなぁ?」



 やはり考えることは同じだったみたいだ。

 で、その調査を頼みたいって所か?



「周りの村でも目撃されていてな…」


「この町だけじゃないんですか?」


「あぁ、詳しく言うと西の山の方でよく確認されてるらしい。」



 なんだ、出処まで分かってるのか。

 だったら一気に叩けばいいだろうに。

 って西の山…?



「確か呪いの影響があるって地域ですよね?」


「それも知っているのか?」


「えぇ、爺さんが前に話してくれたんで」


「そうか…」



 それで、しばし考え込むような間を置いてから…



「そいつを知ってるお前さんに頼むのも気が引けるが、ちょいっと山近くの調査を頼みたい」



 ひどく真剣な雰囲気、眼差しで親方はそう言った。










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