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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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五十九話:ハント トレント!

 

 番外編より先にこっちが出来たんで投稿します。



 

 さて、木々にある程度近づいていくと案の定トレントだったらしく、奴らは擬態をとき始める。

 完璧に見た目が木の状態だったが、少しずつ樹木にあるまじき柔軟性を持ってゆらゆらと揺れ始める。

 やはり単体で見ればあまり違和感を感じなく自然に見えるが、集団で居る事で台無しになっている気がしする。

 きっと気のせいじゃないだろう。

 木だけにな!


 …

 ……


 まぁそれは置いておいてこいつらをどうやって倒すかだが、まずは一匹だけこっちに釣れないかを試してみる。

 時折立ち止まって擬態が解けるのを待ってみるが、あまり距離があると完全には解けないみたいだ。

 で、前に近づいたくらいには距離を詰めたがまだ完全には解けていないみたいだ。

 それからもう少し距離を詰め…10メートルを切るくらいまで距離を詰めてみたがまでまだ擬態は解ける気配はない。

 …もしかしたら完全にあいつらが攻撃出来る射程に入るまではずっとこうなのか?


 それを確かめる為に投げやすそうな大きさの石を拾い、投げてみる。

 綺麗に放物線を描いて…お!ヒットした!

 でも放るように、軽く投げただけだから少し皮が削れただけだけど…

 そして様子を見てみるが当たった奴以外に反応は無い。

 当たった奴はちょっと痛がってるのかくねくねと動きが他より活発になる。

 もしかしたらこれは気のせいじゃなく当たりかもしれないな。

 コントロールには少し自身が無いが…当てていけばこれはもしかしたら一匹だけ釣ることも可能かも知れない。


 で…それからも落ちている小石を拾っては投げ、拾っては投げを繰り返す。

 当然さっきと違い振りかぶっての全力投球だ。

 一応他の奴に当たったりしないように気をつけつつ投げてはいたが、それもあってかコントロールは悪く時折当たらなかった。

 しかしぶつける度にグネグネとうねり、木から擬態が解けているのが分かる。

 そうやってぶつけ続ける事十数発…


 ガサガサガサガサ…


 けたたましく木の葉を揺らす音と共に石をぶつけられていたトレントが地面から根を抜き。こっちに向かってくる。

 その様子は…気のせいじゃなければどこか怒っている様に見えなくもない。

 木だけにな。


 まぁいくら擬態だからといって石をぶつけられ続けたら怒るか?

 だがそれも、あの魔物がそれなりの知能を持っている証拠でもあるな。

 やはり不用意に近づかなくて正解だった。

 幸い移動速度はかなり遅く、走っていれば余裕で逃げられそうだ。


 だけどトレントを狩るつもりだったし、しかも今回はあいつ一匹しか向かってきていない。

 わざわざ逃げる意味もないし、今回は絶好のチャンスだ。

 という訳でこっちも迎え撃つために、まずは群れから引き離す為に距離を取る。

 交戦中に横槍を入れられたらたまったものじゃないからな。

 で、ある程度距離を話したら邪魔にならない位置に荷物をおいて斧を構える。

 勿論必要なものはすぐに使える様に手元にある。



「さて、戦闘開始だ。」



 とは言ったものの今回は後手に回る。

 本当は先制攻撃と行きたかったけど…今回は単体で相手に出来るチャンスだ。

 余裕は無いがどういう攻撃手段を持っているのか知っておきたい。

 という訳で待っていると…近づいてきた大層お怒りなトレントはさっきまでクネクネと動かしていた枝をを振り下ろしてくる。

 枝と言っても人の腕くらいはあるから威力は相当なものだと思うんだけど…葉っぱが邪魔なのか思ったより振りに速度がない。

 具体的に言うと今の自分なら十分に見てから避けられるくらいの速度だ。

 なのでしっかりと確認しつつ二、三歩分横に動くことでかわす。

 …割と目の前を枝葉が横切ったのでヒヤッとしたが、大げさに避けすぎるのも問題だからな。

 本当にヤバイ攻撃なら全力で避けるけど、これくらいの攻撃なら逆に反撃のチャンスを逃す事になる。



「ちっ!」



 で、このまま反撃といきたかったが、ガサガサと音を立てて追撃に別の枝でのなぎ払いが飛んでくる。

 ご丁寧に振り落とした枝で退路を塞ぐような形で、だ。

 これを避けても良いのだが…下手に避けると更に追撃が来ると厄介だ。

 斧の刃が通るかどうかも確認してないけど…やるしかないか。

 斧を上段に構え、打席に立つバッターの様な構えを取る。



「だ…らぁ!」



 気合と共に向かってくる踏み込み、斧を上段から後方へ円を描くように回し前方で若干振り上げる様に振り回す。

 イメージとしてはゴルフのスイングみたいな感じだ。

 それで、円運動で威力の増した一撃は向かってきた枝を弾くどころか、半分以上深々と切れ込みを入れた。

 そして振り上げた斧の軌道にはまだ続きがある。

 まぁまだ俺の攻撃は終わってないって事だ。

 手に伝わる痺れを我慢しつつもう一歩踏み込みつつ斧を返し、斧の重さに加え振り上げた勢いで浮いた体重も預けて切れ込みの反対側に叩きつける。

 叩きつけた所からメキリという音と共に腕くらいの太さの枝が両断され、枝の断面から樹液が辺りに飛び散る。

 ぶっつけ本番だったので少し気がかりだったが…上手くいって良かった。


 この一連の動きは昨日の訓練場でようやくモノにした動きを斧で再現したものだ。

 確か…獣牙・噛切って名前だったな。

 随分と中二っぽいネーミングなので声に出すのは躊躇われる名前である。

 これ自体は特に剣技という訳ではなく、一応様々な武器でも扱えるように考案されてるとかなんとかザンギさんが説明してたけど、そこら辺はどうでもいいな。

 ちなみに本来の動きとしては下から掬い上げる様な動作で打ち上げて、そこを上段から叩きつける技だ。

 まぁ単に上下方向への二連撃だな。

 ちなみに今回は勢いが足りなさそうなのであえて振りかぶり下段に勢いをつけて打ち上げる事にしたって訳だ。


 それで、枝を一本飛ばされて怯んだのかトレントは両断された枝の部分を抑えて悶えている。

 石を投げている時から薄々思っていたのだがどうやら痛覚があるみたいだ。

 考えながらふと下を見ると…切り落とした枝からもダラダラと樹液が滴っている。

 これはあいつらにとっての血液か何かなのか…?

 …今は考えないでおこう、まずはこいつを倒すのが先だ。

 そう考え、斧を水平に寝かせて後方に持っていく。



「フッ…!」



 そして構えたまま姿勢を低くし距離を詰め、怯んでいるトレントの幹の根元辺りに勢いを乗せて、一撃。

 別に技でも何でもない、普通に振るわれた斧が隙だらけのトレントの幹を抉る様にくい込む。

 ガサササ!とトレントはまるで悲鳴を上げる様に枝葉を振るう。

 だけど幹の半分くらい、さっきの枝であれば一撃で叩き割ってるくらいに深くで刃が止まってしまった。

 あれ、これ不味くね!?


 だってこれ引き抜けなきゃ、丸腰も同然だろ…?

 しかもトレントは、幹に斧が刺さったままの状態にも関わらず鞭の様に枝をしならせて横から振るう。

 トレントの振るう枝が当たる前になんとか下がろうと幹を足蹴にして、くい込んだ斧を引き抜こうと力を込めたのだが…



「わっ!…痛っ!」



 まぁあっさりと抜けた。

 あっさりと抜けすぎて思わず後ろに尻餅を着いた。

 ついでにそのせいでトレントの一撃もスレスレで当たらなかった。

 我ながら、なんとまぁ運のいい事で。


 しかしこいつ、妙に手応えが柔らかいな。

 これだけ深かったら引き抜くのに相当苦労すると思うんだけど…

 ぶっちゃけると、木ってこんなに柔らかいのか?と疑いたくなるレベルだ。

 というか引き抜いた斧の刃がなんだか濡れている…?

 そう思ったら更に、抉られた後から…大量の樹液が吹き出してきた!?



「うわ!」



 咄嗟にマントで防ぎつつ、跳ねる様にして距離を取ったので皮膚や衣服には付かなかったが、樹液がトレントの周りに水たまりを作っている。

 思ったけどこれ…ヤバイ液体じゃないよな?

 そう思って距離を取りつつ警戒していたのだが、特にマントが溶けるような様子も無ければ地面に滴っている樹液にも変わった様子は見られない。

 その代わりと言ってはあれだけど、トレントの様子がおかしい。


 なんか…傷ついた場所を枝で押さえる様にしつつ、悶え転げまわっている。

 ついでに辺り構わずに残った枝を振り回しているが…下がって距離はとっているので俺の所に届いていない。

 しかも樹液が染み出していくのは止まらず、段々と動きが緩慢になっていく。

 ついでに少しずつ枝葉が植物的な元気が無くなって萎れ始め、幹の方なんかは細くなっていく。

 そのまま暫く待っていると最終的に枝も幹も一回り小さくなった辺りでピクリとも動かなくなり、見た目が完全な倒木になった。

 警戒しつつステータスを開くと…経験値が30近く入っていた。

 どうやら完全に倒したみたいだ。



「ふぅ…終わったぁ…」



 ちょっと…木を倒して気が緩んだのかそのままステータスを閉じる。

 今まで戦ってきた魔物とは違う、植物っぽい魔物と戦って見たわけだが…普通に戦えて良かった。

 ステータス的にはそれなりに高いレベルの人と同じだろうし、爺さん達を信用してない訳じゃないけど実際に戦ってみないと分からない事もあるしな。

 まぁ分かった事と言えば、こいつらは一体ずつ狩るべきって事だな。

 万が一にでも斧が抜けなくなったら大惨事だ。




 そんなこんな、軽く戦闘の反省しつつ呼吸を整えた所でトレントに近づく。

 勿論解体する為だ。

 依頼書や爺さんの話だと、トレントの素材は根っこ以外何処を持ってきてもいいとの事だ。

 戦闘中に根元を狙ったのもこれが理由だったりする。

 別に上の方に攻撃が届かないと判断したからではない。

 まぁそれは置いておいて… 

 持ち運びやすくする為に、枝と幹、根元をそれぞれ切り分けようと斧を振るったのだが…



「あれ…?硬い?」



 戦闘中とは違い、斧の刃が僅かに通るだけで全然刃が入っていかない。

 あれくらい柔らかかったらすぐに落とせると思ってたんだけどな。

 それから暫く打ち込んで…手が痛くなって来るまで頑張ってようやく一番太い枝を一本、切り落とす事が出来た。



「これ、刃が欠けてる訳でも無いし…ってあれか?」



 思わずそう口にしながら、小枝の一本に手を伸ばし力を込める。

 すると思った通りパキンッ!と乾いた音を立てて枝が折れた。

 ついでに折れた枝を見ると、既にカラカラに乾いている。

 さらに自分の足元の地面はトレントが流した大量の液体が流れ、地面に染み込んでしまっている。


 …成る程、これは資材として重宝される訳だ。

 だって倒した傍から乾いた木に変わるんだもんな。

 切り落としてから長い事乾くのを待つ必要が無いわけか…

 その代わりすぐに加工しないと硬い、と。



「はぁ…」



 思わずため息を一つこぼす。

 枝一本で既に手が痛いんだけどさ…

 他の枝もまだまだ残ってるし、さらに幹と根元を切り落とさなきゃいけない。

 なんだが考えただけですごく気落ちするな…






 ……木だけに…ね?





 

 ご視聴ありがとうございます。

 ご指摘や感想などお待ちしています。

 ブクマ、評価なども(ry



 番外編を楽しみにしていただいた方、申し訳ない。

 多分来週には…来週には…


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